じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 1月22日(火)の岡山は、日中は曇りがちであったが夕刻になってよく晴れ、月齢10.6の月がよく見えていた(写真上)。この日は、12時03分に月と木星が0°30′まで接近(写真下)。また19時52分には月が最遠(29′29″)となっていた。このほか、翌日23日の14時12分に月の赤緯が最北となるため、月の方位が北側にかなり片寄って見えていた。


2013年01月22日(火)

【思ったこと】
130122(火)「純と愛」流の赤ちゃんを泣きやます心理テクニック

 昨日の日記で、

NHK朝ドラ「純と愛

で、マリヤ(純の義姉)が正(純の実兄)との離婚届を出して受理されたが、その後いろいろあって、結局2日後に再び婚姻届を出したという話を取り上げた。番組あらすじに紹介されているように、この週(第16週)は
...【略】...マリヤは離婚届を提出すると、勇気を抱いたままトラックに飛び込もうとして間一髪で善行(武田鉄矢)に救われる。しばらくして正がやり直そうと謝りにくるが、マリヤは聞く耳を持とうとしない。食い下がる正にマリヤは、勇気を抱いて泣き止んだら父親だと認めると条件を出す。以前から正が勇気を抱くと泣きやまないのだ。純と家族も協力して泣きやむ方法を伝授するが勇気は泣きやんではくれない。マリヤはあきらめて勇気と帰国しようとする。正は勇気を渡すまいと必死にあがいていると自然と涙がこぼれてくる。家族愛に目覚めた正が優しく勇気の頭をなでると、勇気は幸せそうに腕の中で初めて笑うのであった。
という展開となったのであるが、その中の「泣きやむ方法」として試された心理テクニックがなかなか面白かった。
  1. 「里や」の関係者が順番に赤ちゃんを抱っこする。狩野正以外が抱っこした時でも泣くことがあることを示そうとするが、怖い顔の板前・藍田忍が抱っこしても泣かないのに、狩野正が抱っこした時だけは泣くことが判明
    →これは、赤ちゃんがどういう条件のもとで泣くのかを系統的に分析する手法として有効。但し、抱っこする順番も影響するかもしれないので、何度か実行し、どういう順番であっても狩野正が抱っこした時だけ泣くということが確認されれば、原因が狩野正にあることが実証される。
  2. 狩野正が赤ちゃんを抱っこした時、「里や」の関係者がみなコンビニ袋を持ってシャカシャカ音を立てる。
    →ネットで検索したところこちら他に、実際に泣き止んでいるところを撮影した動画があった。但し、すべての赤ちゃんに効果があるわけではなさそう。シャカシャカ音が体内の音に似ているからという俗説もあるようだが、珍しい音に気をとられて泣き止むという程度、もしくは、赤ちゃんが機嫌の良い時に同じ音を何度も聞かせているとその音自体が条件刺激となって、情動的な安定をもたらすという可能性もあるかと思う。
  3. 狩野正がウサギ着ぐるみを着て抱っこする。
    この赤ちゃんがウサギの縫いぐるみが大好きなので、その着ぐるみを着れば泣き止むのではないかという作戦。行動分析学的に言えば、ウサギという共通性を利用した刺激般化の効果を狙ったものと思われる。もっとも、あまりにも奇異な格好をすると逆に気持ち悪い、怖いといった反応を引き起こす恐れがある。
  4. 「里や」の関係者が全員、狩野正の顔のお面をかぶって順番に赤ちゃんを抱っこする。最後に狩野正本人が抱っこする。
    →上記1.の作戦(というか行動分析学でいう「ベースラインの測定」)で、里やの関係者が抱っこしても赤ちゃんは泣かないということが確認されている。そこで、狩野正固有の恐怖刺激をお面という形でほんのちょっぴり付け加え、系統的脱感作の手法により、少しずつ弱めていくことを狙ったものと思われる。赤ちゃんが、狩野正の顔にどの程度の恐怖を感じていたのか、またどの程度お面を見ていたのかによって有効性は変わってくるだろう。
  5. 狩野正がマリアの服を着て、マリアと同じ髪型のカツラをかぶりメイクして赤ちゃんを抱っこする。
    →これも基本的には、系統的脱感作の方法と言える。マリアの服や顔、髪などに赤ちゃんを泣き止ませる効果があるならば、刺激般化により、一定の効果があると期待される。とはいえ、父親が女装して母親のマネをしてもすぐにばれるので、赤ちゃんがそれに気づくまでのごく短期間しか効果がなさそう。
ということで、「里や」関係者の努力はすべて失敗に終わってしまったが、自然に涙がこぼれた時に初めて泣き止むということでいかにもドラマらしい展開となった。

 このほか、上掲の作成で興味深かったのは、マリアが「赤ちゃんをを抱いて泣き止んだら父親だと認める」という条件を出したことである。単に「これまでのことを反省し、父親として自覚する」ことを条件にしたのでは、本当に反省や自覚をしたというエビデンスは得られない。「抱いて泣き止んだら」というのは、初期の行動主義心理学(←スキナーの徹底的行動主義とは異なる)の悪弊のようにも見えるが、とにかく、観察可能な基準を求めたという点で、ドラマの構成上観客に分かりやすい条件となっているとも言える。

 この朝ドラ、最近は、引きこもり、離婚、DVといった問題をかかえた登場人物が難題をふっかけ、純が愛の助けをかりていろいろな作戦を立てて解決するという展開が続いている。登場人物はシリアスに演じているのに観客はその作戦があまりにもバカバカしくて笑ってしまうという点で、真の喜劇になっていると言えないこともない。