じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 8月3日(土)は、比較的よく晴れていたが、太平洋高気圧から送り込まれる暑い湿った空気と、北からの寒気がぶつかりあって、各地で入道雲が発生した。記録上の雨量はゼロミリであるが、地面が濡れる程度の俄雨も降った。但し、この日の夜に行われた花火大会には特段の影響は無く、ベランダから見物することができた。


2013年08月3日(土)

【思ったこと】
130803(土)日本行動分析学会第31回大会(8)行動分析学による認知症リハビリテーションの発展」(2)

 昨日に続いて、7月27日(土)午後に行われた、

自主企画シンポジウムI:行動分析学による認知症リハビリテーションの発展」

についてメモと感想。

 2番目の指定討論者は、田中桜子氏であった。長らく米国に在住されていたということで、日本ではごく一部の人にしか知られていないが、プロフィールを拝見すると、認定行動分析士(米国行動分析士認定協会 BCBA-D)の資格をとられ、現在、「行動分析家多文化同盟」の代表をつとめておられるという。

 話題提供ではまず、「行動機能評価(Functional Behavior Assessment, FBA)」とは何かが語られた。00行動機能評価は、
  • 「問題行動」がなぜ起こるのかについて実証に基づいた仮説を立てることができる。
  • 行為者にとってその行動が果たす目的(機能)に関する情報を得るために設計
  • 不適切な行動を減らすための非嫌悪的で前向きな介入の基盤となる。
  • 問題行動を強化している好子や嫌子のタイプと原因を見つけるために用いられる。
  • 似たような言葉に、機能分析(Functional Analysis)というのがある。しかし機能分析のほうは、環境と個体の行動の間の関数関係を実験的に分析するものであり、随伴性の操作そのものである。
といった特徴を持っているという。

 続いて、FBAの成立・発展の経緯が語られた。それによると、
  • 1960年代までの応用行動分析では、行動修正・変容を実現するためには、タイムアウトやトークンシステムといった強力な随伴性が無差別に用いられてきた。
  • その後、Carr(1977)の自傷行動についての指摘や、Iwata et al(1982/1994)によって機能分析の方法が発展、構造化させられ、1997年には、米国の個別障害者教育法IDEAの再承認【改正?】により、機能評価の必要性が定められるに至った。
  • 2002年には再承認【改正?】、制定された初等中等教育法(ESEA、落ちこぼれを作らないための初等中等教育法NCLB)では、具体的な説明責任が義務化された。
 ということであった。

 指定討論の中で参考になったのは、FBAにおいて、三項随伴性ならぬ、四項随伴性の考え方が重視され、反面、強化子は本当にあるのか?といった議論がなされているというような点であった。この場合の四項というのは、

先行刺激→行動→後続刺激

の前に、動因操作 (Motivational Operation、MO)など、影響を与える事象を考慮することである。また、これらの一連の行動の機能が評価されるので、例えば、不得意な課題が与えられた際の問題行動(モノを投げるなど)の場合は、

MO→先行刺激(不得意な課題)→問題行動(モノを投げる)→後続刺激(課題をしなくて済むが、叱られるといった結果)

という図式ができあがる。またこれらの一連の行動は、課題の回避や注目といった機能を有する。これを改善するには、テキパキと課題をこなすといった適切な行動をとり、それによって、賞賛や次の課題への移行といった後続刺激が随伴する場合もあるし、手伝いを頼むといった代替行動も起こりうる。

 ここでいうMOは、行動分析学の教科書に出てくるEO(確立操作)と同じ意味のようにも見えるが、どう使い分けているのかについては未確認。また、MOを重視する理由としては、そもそも、MOが無ければ、後続刺激は強化子として機能しないということ、また、効果的な強化子は常に変わっていくということにある点などが挙げられていた。

 ここからは私の考えになるが、発達障がい者や認知症高齢者の問題行動の多くは、スキナーの言語行動論で言うところのマンド(mand、要求言語行動)に由来したものが多いのではないかと思われる。例えば、

●おい、メシだメシだ、早くメシを出せ!

というような乱暴な言葉遣いばかりでなく、言葉を使わない暴力的な行動として出現することもある。いっぽう、タクト(Tact、報告言語行動)あるいはそれに類する非言語的行動は、協調・協力関係が乏しい状態においてはあまり起こらない(→そういう行動は強化されにくい)。であれば、やはり、問題行動出現の発端にMOが関与している可能性はきわめて高い。上掲の例で言えば、「早くメシを出せ!」というような暴言は、満腹時ではなく空腹時や食事時間の少し前に高頻度で起こりやすいということになるだろう。

 このほか、行動支援計画や、認知症・認知症機能障害を対象とした応用行動分析に関して貴重なお話があった。個別的なアセスメントに関しては、ダイバージョナルセラピーのやり方と共通しているようにも見えたが、応用行動分析だけあって、当該の行動をとりまく、MO、先行刺激、後続刺激の分析や機能の評価がより精細であるように見受けられた。

次回に続く。