【思ったこと】 130923(月)高齢者における選択のパラドックス〜「選択の技術」は高齢者にも通用するか?(24)選択と後悔(18)後悔にメリットはあるか?
日本心理学会年次大会の関係で少し間が空いてしまったが、9月18日の続き。
シュワルツの本の第七章最後の部分では、後悔のメリットの話題が取り上げられていた。後悔するというのは良くない、過去を振り返らずもっと前向きに生きるべきだと言われることが多いが、全くメリットが無いというわけでもない。シュワルツは後悔のメリットについて、以下の4点を挙げている【矢印(→)以下は長谷川のコメント】。
- 後で後悔するのがイヤだと思えば、現前の選択(決定)により真剣に取り組むようになる。またそのさい、選択(決定)の後の様々な展開を描いてみるようになる。→よって、結果として、最善の選択ができるようになる。
- 後悔すれば、失敗内容を重視するであろう。よって、将来似たような状況に遭遇した時は同じ間違いを繰り返さなくて済むようになる。→要するに、しっかりと総括し、失敗の教訓を生かせるようになる。
- 後悔することで、その決定(選択)を取り消そうとしたり、決定が招いた不幸な事態を改善しようという行動が駆り立てられる→後悔しない人は不幸な事態をそっくり受け入れようとする。後悔すれば、より能動的、積極的に事態の改善に取り組むことができる。
- 後悔は他者に対して自分が反省していることのアピールにもなる。誤った決定をすることは、他者にも悪い影響を及ぼすことが多いが、後悔することで他者からも共感され、信頼関係をつなぎ止めることができる。→失敗しても全く後悔の様子を見せないような人は周囲から「ちっとも反省していない」と批判され、孤立していく恐れがある。
ということで、いずれもごもっともな指摘であるとは思う。但しこのうち1.から3.でメリットとして挙げられた内容は、
- Plan(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する
- Do(実施・実行):計画に沿って業務を行う
- Check(点検・評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを確認する
- Act(処置・改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて処置をする
を繰り返すPDCAサイクル(もしくはPDSAサイクル)、あるいは、「Assessment(事前評価・査定)→Planning(計画策定・作成)→Implementation(実践・実施)→Evaluation(評価・反省)」の循環を基本とするエーパイ・プロセスによっても十分に対処可能であり、その際、必ずしも「後悔」は必要ではないように思われる。
残りの4.については、他者に影響を与える事象では重要だが、全くの私的出来事であれば必ずしも必要とは思えない。また、何かをしでかした政治家や芸能人はしばしば後悔のポーズをとるが、大げさすぎてわざとらしい演技に見えないこともない。
次回に続く。
|