【思ったこと】 131114(木)第6回日本園芸療法学会広島大会(15)浅野理事長の教育講演(9)園芸療法の効果の評価(2)園芸療法とNarrative-based Medicine/多面性の重視
昨日の続き。
浅野理事長は、斎藤清二先生の著作からの引用として、NBM(Narrative-based Medicine)の視点を以下のように要約されていた【スライド資料からの転載】
- クライアントの状態とその中での、クライアントの行動を、大きなフレーム(人生や生活という物語)の中で位置付ける
- クライアントが主体
- 単一の因果関係を想定しない
- 多面性を認める
- 対話を重視する
これらを私【長谷川】なりに園芸療法にあてはめてみると、まずはその人がこれまでの人生の中で、樹木や草花とどう関わってきたのかをきっちりと事前評価する必要が出てくる。この日記の本日の写真として掲載したカイノキなどもそうだが、たまたま岡大にやってきてこのカイノキの紅葉に接した人であれば単に美しい、見事だという感想を持たれるだけに終わってしまう。しかし、何年にもわたりここで勉学・研究をしている人にとっては、この紅葉は、季節の移ろいの1頁として位置付けられる。私的出来事になるが、文学部西側にある皇帝ダリアの場合も、今年始めて花を見る方と、昨年までの経緯をご存じの方とでは、開花の喜びが違ってくるはずである。ちなみに、皇帝ダリアは、農学部の農産物販売所の近くにも咲いているが、2011年の記事にあるように、この株は2008年からこの場所に植えられていて、今年で少なくとも5年目となる。これも、毎年この花を眺めていたり、お世話している方にとってみれば、何かしら人生との関わりを持っているかもしれない。
高齢者施設で園芸活動を行う場合も同様であって、スタッフの好みで選ぶのではなく、利用者さんの思い出と結びつくような花や野菜の種類を探し当てることが望ましい。いまの高齢者には農家出身の方も多く、上手に野菜を育てるコツを身につけておられる方も少なくない。
「単一の因果関係を想定しない」とか「多面性を認める」というのは、週に数回程度の園芸活動と、何らかの健康指標との相関ばかりに目を奪われるのではなく、
- 園芸活動がクライアントの日常生活に組み込まれることで
- その人の生活全体がどう変化し
- 健康状態や精神状態にどのようなポジティブな効果をもたらしたのか
を全人的に評価する必要を述べているものと思われる。この学会の個人発表などでも、成果を強調しようとするあまりに「園芸療法を実施したところ、健康指標にこれだけの改善が見られました」というような結論が目に付くことがあるが、週に数回程度の園芸プログラムの単独の効果だけでそこまで変化が起こるとは信じがたい。実際のところは、
- 週に数回の園芸プログラムを導入したところ、
- 利用者さんの日々の生活が規則的、前向き、積極的になり
- 育てている植物についての発言が増え
- 他の利用者さんとの会話の機会も増え
- 屋外に出る回数も増え
- それら全体の包括的な効果として、種々の健康指標に改善が見られた
というように結論するのが妥当であり、その場合は、1.と6.だけで効果測定を行うのではなく、2.から5.についてもしっかりと記録をとっておく必要がある。
次回に続く。
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