じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
農学部農場で収穫を迎えたタマネギとエンドウ。 |
【思ったこと】 140507(水)長谷川版「行動分析学入門」第5回(5)好子出現の随伴性による強化(5)習得性好子(2) 習得性好子は、生得性好子と異なり、何らかの経験を経て好子となったモノや出来事です。『行動分析学入門』(杉山ほか、1998年、産業図書)では 「何らかの経験」を「対提示」に限定し、習得性好子を 他の好子と対提示されることで好子としての機能を持った刺激、出来事、条件と定義しています。 もっとも、15年ほど前に指摘したように、「習得性好子」の定義に、習得性好子が形成されるプロセスを含めるというのは得策ではないように思います。というのは、特定個体の行動を維持・強化している好子が習得性であるかどうかを判別しようとしても、過去にその個体がどういう経験をしていたのかは調べようが無いからです。また、他の好子と対提示されただけで習得性好子が形成されるのかどうかも、研究の出発段階では分かりません。定義の中に形成プロセスを含めてしまうと、別のプロセスで習得性好子が誕生することが分かった場合にいちいち定義内容を変える必要、もしくは別の概念を作る必要が出てきてしまいます。これは得策とは言えません。 そこで私は、その「対提示」という操作は習得性好子の定義に含めず、代わりに ●別の好子の存在を前提条件として機能するような好子は「習得性好子」。他の好子が存在しなくても独立して機能する好子は「生得性好子」 という判別方法を提案しています。 ここで、「習得性好子を好子として機能させている別の好子」は「裏付好子」と呼ばれています(『行動分析学入門』、杉山ほか、1998年、産業図書、160頁)。裏付け好子を必要とせずに好子として機能しているのが好子、いっぽう、他のすべてを失ってもなお好子として機能するものが生得性好子という意味です。 ここで具体例をあげてみましょう。【1999年7月21日の日記の再掲ですが、時代背景を考慮して一部の言葉を別の言葉に置き換えています。】。
これに対して、食物、水、空気などは他の何が変わっても好子であり続けます。遮断化や飽和化といった確立操作によって、好子としての力は変化しますが、好子でなくなることはあり得ないので、生得性好子であると確定できます。 なお、上述の「裏付け好子」は、生得性好子ばかりでなく、習得性好子も含みます。新たに形成された習得性好子が新たな裏付け好子となって、さらに新しい習得性好子を作り出していきます。それを創り出す原動力になっている活動がビジネスであり、文化であると言えます。 次回に続く。 |