じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 岡大・石庭とサツキツツジ。石庭の周囲にはサツキツツジとヒラドツツジが2株ずつ植えられているが、この時期はサツキツツジが見頃。2年前の写真が、2012年5月24日の日記にあり。


2014年5月26日(月)

【思ったこと】
140526(月)長谷川版「行動分析学入門」第7回(13)好子出現の随伴性による強化(20)部分強化と強化スケジュール(7)変比率スケジュールとギャンブル(2)

 前回、多くのギャンブル行動は変比率スケジュールで強化されているものの、それはあくまでギャンブルの必要条件であって、それだけでギャンブルが成立するわけではない(十分条件にはなっていない)と述べました。その理由として、ギャンブルは、通常、能動的な行動機会と、スキル上達による強化確率アップという条件を備えていることを挙げました。

 しかし、どうやらこのほかにも、ハマってしまうような仕掛けが、それぞれのギャンブルに固有に備わっているようです。

 まず、公営ギャンブルの代表格である競馬の場合、お金という好子随伴だけで馬券を買うわけではなさそうです。まずは走る馬が好きであること、その馬を取り巻くいろいろなエピソードがあればこそ、熱中していくのだと思います。馬券を買わない競馬ファンというのもいるとか。もっとも私は競馬場には一度も足を運んだことがないので、面白味がどこにあるのかを語ることはできません。

 次に、この講義録でも何度か登場するパチンコですが、私自身は学生時代(1970年代前半)には、毎日のように遊んでいたことがあります。特に、卒論の動物実験をしていたころは、実験が終わるとパチンコ屋で疲れを癒やしていたものです。当時はまだ、親指でバネをはじいて玉を打つ台ばかりでしたので、昨日も述べた「スキル上達による強化確率アップ」、つまり、打ち方しだいである程度、チューリップに玉を入れる確率を高めることができました。もっとも、その後30年以上、一度もパチンコ屋さんには足を踏み入れたことがないので【バネ式のパチンコ台からダイヤル式の自動発射装置のパチンコ台になって能動的な行動機会が奪われてしまったのが、行かなくなった最大の理由です】、今のパチンコがどうなっているのかは全く知りません。ですのであくまで、大昔のパチンコの思い出話の範囲になりますが、少なくとも私が通っていた当時は、パチンコ屋さんの店内は大変賑やかで、入るだけで元気を奮い立たせてくれるような雰囲気がありました。店内の至るところで「チン、ジャラジャラ」と賞球(ご褒美)が出てくる音がします。これは、要するに、お客さんにちゃんと玉を出していますよ、台さえ選べばあなたも打ち止めのチャンスがありますという証拠になります。また、店内には、軍艦マーチなどの威勢のいいBGMが流れていました【リンク先のウィキペディアによると、「最近はあまり使われない店舗も多いが、戦後は長らくパチンコ店の定番BGMであった。1980年代まではパチンコ屋のCMのBGMとして使用された所も多かった。」とのことです。】 パチンコをするという行動は、変比率スケジュールだけでなく、こうした「チン、ジャラジャラ」やBGMによっても強化されていたと推測されます。

 第三に、スロットマシンですが、これまた、私は全く興味が無いので【といっても、ラスベガスの空港内で、小銭の残りを使ってちょっとだけ遊んだことはありましたが】、面白味がどこにあるのかを語ることはできません。もっとも、杉山ほか(1998)の125〜126頁のところには、スロットマシンが変比率スケジュールだけで強化されているわけではないとする興味深い考察があります。そこでは、
  • コインだけでなく。マシンの絵柄も好子になっている。3つの絵柄のうち2つが揃うと「残念、もう少し」というように反応してしまう。【←確率的には、3つのうちの2つの絵柄が揃うことと3つとも揃うことは全く別物です。】
  • 当たりの時の好子の量が異なり、時には莫大な量になる。
  • 少数回のトライアルの中で当たりがでるような仕掛けになっている。【VRの値はそれほど大きくない。】
といった可能性が指摘されています。【いずれも、長谷川による要約紹介】。

 もう1つ、宝くじを買うことについて考察しておきます。宝くじは数学的には変比率スケジュールですが、滅多に当たりませんので、「買った→賞金を貰った」という形では強化されにくいと思われます。購入行動を強化している一因は、1等賞金が(前後賞合わせて)数億円という莫大な額になっているためと思われます。この場合、論理的に言って、
  • 宝くじを買う:数億円が手に入るチャンスがある
  • 宝くじを買わない:数億円が手に入るチャンスは全く無い
という2通りがあり、二者択一の選択機会になっていて、1枚の宝くじ購入のコストが比較的安いことが、購入を促進しているように思われます。このほか、すでに何枚も購入して外れている人の場合は、「ここで購入を止めてしまうと、いままでの損失を取り戻せない。購入を続けていればいつかは損失を上回る莫大な利益が得られるはずだ」と考えているのかもしれません。これは、
  • 宝くじを買うのを中止する:それまでの外れによる損失が確定する
  • 宝くじを買い続ける:損失を取り戻せる可能性が残る
という二者択一の選択になります。これは、宝くじばかりでなく、株式や投資信託の売買の場合でも当てはまります。

 もっとも、私自身は生まれてこのかた1枚たりとも宝くじを買ったことがありませんので、上記のような二者択一型の錯覚が購買行動の原因になっているのかどうか、断言することができません。

次回に続く。