じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【思ったこと】 140912(金)日本心理学会第78回大会(4)高齢者への記憶支援(1) 9月5日の日記に記したように、大会ではさまざまなシンポ、講演、チュートリアル、ポスター発表などが行われて、3日間の参加選択組み合わせ総数は392兆7929億8222万799通りにも及んだ。今回は主として、ACT(アクト)&マインドフルネス関連と高齢者関連のセッションに参加させていただいた。ACT(アクト)&マインドフルネス関連は話が長くなりそうなので、先に、高齢者の記憶支援に関するセッションについて、私自身の記憶が減衰しないうちにメモと感想を記しておくことにした。 このシンポでは、学習支援を児童や生徒だけでなく高齢者にも広げようという趣旨であり、今回は特に記憶支援に焦点が当てられた。シンポでは4件の話題提供と、高齢者心理学の第一人者の方からの指定討論があった。 まず、企画趣旨説明において、
話題提供の中では「し忘れ」の問題が取り上げられた。これは展望記憶のエラーであり、自立生活に影響を与える薬の飲み忘れや火の元の消し忘れ、社会生活に影響を与える予定や約束のし忘れが挙げられるという。もっとも、簡単な実験調査で若年者と比較すると、高齢者のほうが「し忘れ」が多いという証拠はあまり得られていないようであった。しかしこれは若年者のほうが忙しかったり、実験課題があまり重要でなかったためとも考えられ、日常生活の「し忘れ」を反映していない可能性がある。そこで、健常高齢者に1日3回電話をするといった4通りの課題(うち2課題はエピソード記憶に依存する課題)を遂行してもらったが、60歳代でも70歳代でもそれほど顕著な困難は認められなかったという。 ということであくまで私が理解した範囲でメモすると、
ちなみに私自身も岡山県・落とし物未然防止検討会で微力ながら会長を仰せつかっているところであるが、忘れ物や落とし物の発生と記憶はあまり関係が無いように考えている。むしろ重要となるのは、特定の場所、特定の文脈における弁別刺激を明確にすることである。薬の飲み忘れをみてもわかるが、患者さんの記憶機能をアップさせても飲み忘れを防止することはまず不可能。そうではなく、「お薬習慣カレンダー」のポケットにその日に飲むべき薬を入れておき、かつ、飲む時間になると弁別刺激が発せられるようにすることが有効。このほか、火の元の消し忘れとか約束のし忘れなども、習慣化と弁別刺激制御で解決していくほかはないように思われた。 次回に続く。 |