じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡大構内に咲く辛夷の花
  • 写真左:座主川遊歩道沿い。この遊歩道には他に少なくとも2本の辛夷がある。
  • 写真右:一般教育棟西の桜広場。この辛夷は、かつてヴィーナス像の上で、白い蝶が舞うように花を咲かせていたが(右端の参考写真参照)、2年前のヴィーナス像取り壊しと同時期に現在の場所に移植された。



2015年04月4日(土)



【思ったこと】

大企業の健保組合、生活習慣病予防に特典

 4月5日朝6時台のNHKニュースによれば、大企業の従業員らが加入する健康保険組合では、加入者が適度な運動を続けるなどして、生活習慣病の予防に心がけた場合の特典を設ける動きが出ており、厚生労働省は、医療費の抑制に一定の効果があるとして、普及に向けたガイドラインをまとめることにしているという。

 この特典制度は、私自身が参加している健幸ポイント【公式サイトはこちら】とほぼ同じ内容であるようだ。

 行動分析学的に言えば、ほんらい、健康増進のための努力は自然随伴性(自然の法則の作用によって、当該行動に対して自然に結果が伴う)によって強化されるはずのものであるが、これはうまく機能しない。その理由は、
  • 健康増進行動(ウォーキングや運動教室参加など)は、嫌子出現阻止の随伴性(生活習慣病という嫌子の出現を阻止するという自然随伴性)によって強化されるはずだが、その効果は「塵も積もれば山となる」という蓄積を必要とする。つまり、1回の健康増進行動の直後に随伴する結果はきわめて小さく、行動を強化するほどの力を持たない。
  • 生活習慣病をもたらすような行動(喫煙、過度の飲酒、食べ過ぎ、間食、甘い物、脂肪分とりすぎ、...)などは、その直後に強化されやすい。例えば、喫煙はわずか5〜7秒で脳内報酬回路に作用するというし、食べ物全般もそれらを口にした直後に美味によって強化される。
  • 生活習慣病をもたらすような行動は、長期的には、病気という大きな嫌子をもたらすものである。しかし1回ごとの行動の直後には、速効的な好子が伴うばかりであって、嫌子は随伴していない。例えば、ケーキを1個食べたからといって、その直後に目に見えるような嫌子(体重増加、糖分過剰がもたらす疾病)を伴うわけではない。
などによる。

 であるからして、健康増進行動を適切に遂行していくためには、人為的に付加された好子によって、当該行動の強化を補完していく必要がある。ニュースでも取り上げたポイント制度は、まさにそのような付加的強化随伴性と言えよう。

 もっとも、この種の随伴性は、
  • 健康増進行動に参加すれば好子出現
  • 健康増進行動に参加しなくても何も変化なし
という任意参加型であり、サボったからといって直ちに嫌子出現や好子消失が随伴するわけではない(←長期的には生活習慣病という大きな嫌子が出現する)。

 それゆえ、単にインセンティブを与えるというだけでなく、日頃から、生活習慣病の恐ろしさを訴えるという確立操作を徹底することが必要。それでもなお、健康増進の努力が困難であるような場合は、
  1. 好子消失阻止の随伴性、つまり行動しなければ何かが失われるという随伴性を導入。
  2. 生活習慣病をもたらすような行動を、好子消失の随伴性、もしくは嫌子出現の随伴性により弱化する。
という手段に頼らざるを得なくなる。とりわけ、依存性がきわめて強い喫煙や過度の飲酒の場合などは、この方法なしには改善は難しいと思われる。タバコの値上げ、罰則を伴うような禁煙措置などがこれに相当する。要するに、ニコチン依存者に対して「丸1日タバコを吸わなかったら100円」という程度の好子出現【←厳密には、貰えるはずの100円が喫煙すると貰えなくなるという、好子出現阻止の随伴性による喫煙行動の弱化】では禁煙を長続きさせることはできない。タバコを大幅に値上げすれば、タバコを吸うたびにタバコ代という好子消失によって弱化されていくし、街角での歩行喫煙に対して反則金を徴収すれば、当然その行動は直後の好子消失によって弱化されていく。