じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 岡山では12月21日の未明から午前中にかけて10.0ミリの雨が降った。写真は文学部中庭のメタセコイア。興味深いのはコンクリート敷材の上に落ちた落葉が一様に分布せずいくつかの「島」としてまとまっている点である。おそらく、
  • 落ちてきた葉っぱは、まずは一様に分布する。
  • 風が吹くたびに移動する。
  • たまたま密度の濃い部分があると、風で移動した落葉がそこで停留。
  • 落葉が停留すると、その後、風に飛ばされてきた落葉はますます停留しやすくなる。
  • 雨で濡れるとその場所で固まって、風に吹き飛ばされにくくなる。
というプロセスで「島」が誕生したものと思われる。

 この生成のプロセスは、太陽の周りのチリが固まって惑星を形成したのと同じかもしれない。

 なお、この時期、この場所に誕生する「島」の過去記録が、2014年12月24日の日記にあり。右に再掲。

2015年12月21日(月)


【思ったこと】
151221(月)「サリーとアン課題」からの連想(2)正直族と嘘つき族のクイズ

 昨日の続き。今回は以下のようなクイズについて考えてみることにしたい。
ある島には正直族と嘘つき族が住んでいます。どちらの部族なのかは全く見分けがつきません。 正直族は、すべての質問に正直に答えます。また、肯定する時は「ダー」、否定する時は「ニエット」と答えます。
いっぽう、嘘つき族は、すべての質問に対して嘘をつきます。正直族とは逆に、肯定する時は「ニエット」、否定する時は「ダー」と答えます。
例えば、「1+1は2ですか?」と尋ねると、正直族は当然「ダー」と答えます。いっぽう嘘つき族は、「1+1=2」が正解であることに嘘をつくので、否定の意味で「ダー」と答えます。
逆に、「1+1は3ですか?」と尋ねると、正直族は当然「ニエット」と答えます。いぽう、嘘つき族は、「1+1=3」が不正解であることに対して嘘をつくので、肯定の意味で「ニエット」と答えます。

このように、同じ質問に対しては、正直族も嘘つき族も常に同じ答え方をするように見えます。では、同じ質問に対して、正直族が「ダー」、嘘つき族が「ニエット」と答えるような質問はあるでしょうか?
 ちなみにこのクイズはこちらのサイトで紹介されていた論理クイズを長谷川が作り替えたものであるが、本質的には同型のはずである。

 このクイズの正解は、
「あなたは正直族ですか?」と質問すれば、正直族は当然「ダー」と答える。いっぽう嘘つき族は、自分は正直族ではないが、嘘をつくため、肯定の意味で「ニエット」と答えるはず。
 このクイズのポイントは、「同じ質問に対しては、正直族も嘘つき族も常に同じ答え方をする」という前提の「同じ質問」という部分にある。すなわち「あなたは正直族ですか?」質問する時の「あなた」の部分は、文字列や発音は全く同一であるが、2人称として使われる時は、相手によって正反対の意味になってしまうというところにある。




 正直族と嘘つき族で違う答え方になるのは、上記の質問だけとは限らない。例えば、
「“ダー”は肯定の意味、“ニエット”は否定の意味でしょうか?」と質問すれば、正直族にとってはこれは真なので当然「ダー」と答える。いっぽう嘘つき族にとっては、質問の意味は偽となるが、嘘をつくため、肯定の意味で「ニエット」と答えるはず。
でもよい。これはいっけん人称表現を含まない質問のように見えるが、じつは、

あなたが使う言語では、“ダー”は肯定の意味、“ニエット”は否定の意味でしょうか?」

というように「あなた」が暗黙のうちに仮定されている。

 要するに、文字列・発音は同じでも相手によって正反対の意味になるような言葉が質問に含まれていれば(もしくは暗黙のうちに仮定されていれば)、正直族と嘘つき族は異なる回答をするはず。
  • (あなたの)ご両親は、正直族ですか?
  • (あなたの)隣の家には正直族が住んでいますか?

なども同様。

 以上のクイズと、「サリーとアン課題」は必ずしも関連があるわけではない。但し、子どもが会話を通していろいろな表現を学ぶなかで、
  • 客観的な描写
  • 「あなたは?」と訊かれたことに対する自分自身の描写、態度表明
が異なるということが訓練され、こうした言語行動を通じて、ある種の「自己と他者」を形成していくことは間違いあるまい。

不定期ながら次回に続く。