じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 3月17日朝の日の出。私の住んでいる所では春分の日〜秋分の日のあいだは建物の影響で日の出を眺めることができない。明日以降は曇りや雨の予報となっているため、これが見納めとなる可能性が高い。

2016年03月16日(水)


【思ったこと】
160316(水)行動分析学における自己概念と視点取得(4)セルフコントロール(3)

 昨日の補足。Skinner(1953、230〜231頁)ははセルフコントロールを以下のように定義している。
The positive and negative consequences generate two responses which are related to each other in a special way: one response, the controlling response, affects variables in such a way as to change the probability of the other, the controlled response. The controlling response may manipulate any of the variables of which the controlled response is a function; hence there are a good many different forms of self-control.
 正の結果、負の結果は、特別なプロセスを通じて相互に関連する2種類の反応を生み出す。その1つはコントロールする反応であり、もう一方の反応の出現確率を変える変数に影響を及ぼす。コントロールする反応は、コントロールされる反応の関数関係をつくるあらゆる変数を操作できるだろう。よって、セルフコントロールにはきわめて多様なタイプが存在する。【訳は長谷川による】
 ここでコントロールされる反応というのは、環境との関わりにおいて基本随伴性によって強化/弱化される行動であり、コントロールする反応とは、その随伴性に変更を加えるような行動、あるいは、行動が強化/弱化されるような行動機会の選択、弁別刺激の提示頻度を変えるような行動などが含まれる。

 Skinner(1953)は、その具体例として、身体的制限(身体的補助)、刺激操作、遮断化と飽和化、情緒的条件の操作、嫌悪刺激、薬物、オペラント条件づけ、罰、不両立行動が挙げられている。例えば、手持ちの現金の大半を貯金しクレジットカードをすべて解約するという行動は、衝動買いによる浪費を抑える効果がある。これは上記で言えば身体的制限に分類されるセルフコントロールと言える。衝動買いの行動自体を弱化するのではなく、その行動機会を制限してしまうからである。ガツガツ食べる様子を他人に見られたく無い人は、ディナーに行く前に軽い食事を取る(Skinner, 1953, 234頁)というのもセルフコントロールの一種である。この場合も、ガツガツ食べる行動自体は弱化されていない。確立操作の1つである飽和化を利用して、結果としてガツガツ食べる行動の出現頻度を抑えてしまうのである。

 上記のように、Skinner(1953)ではコントロールする反応(the controlling response)とコントロールされる反応(the controlled response)という二分法の考えが示されているが、これは、オペラント行動に2種類あるということとは意味が違う。オペラント行動自体には、「コントロールする」、「コントロールされる」という2種類があるわけではない。ある反応が、ある文脈のもとで、そのいずれにもなると考えるべきであろう。

 これは、一般に言われる手段−目的関係にも対応している。例えば「新幹線に乗って京都観光に行く」という場合を考えてみる。新幹線を利用することが時間の節約になる(より長い時間、観光できる)という人にとっては、新幹線乗車は観光行動の手段的行動であり、コントロールする行動に対応する。いっぽう、京都観光にはあまり興味ないが新幹線に乗ること自体が楽しみになっている子どもにとっては、「京都に行こう」とせがむ行動は手段的行動であり、新幹線乗車のほうが目的でありコントロールされる行動に対応する。

 このことに関連するが、プレマックの原理なども、強化の相対性を示す証拠ではなく、「回転カゴを回す行動」と「水を飲む」行動のどちらが「コントロールする反応」で、どちらが「コントロールされる反応」になるか、という形で議論したほうが分かりやすいのではないかと思う。

 以上に基づいて、「コントロールする反応」と「コントロールされる反応」というのは、手段−目的関係の文脈の中で、入れ子構造として捉えるべきだというのが私の考えでもある【こちらご参照】。

 ちなみに、手段−目的の入れ子構造の随伴性は、人間以外の動物でもある程度確認することができる。例えば、肉食動物が、2つの狩り場、サバンナAとサバンナBのいずれで狩りをするかを選択する、という場面では、まず大きな入れ子として、サバンナAに移動するか、サバンナBに移動するかという選択がある。この選択自体は直接的には強化されない。強化されるのはそこで実際に行われる捕食行動であり、実際にそれが強化されるか消去されるのかは、狩りがどれだけ成果を上げるのかにかかっている言える。こうした場面は、オペラント条件づけの実験場面でも、2段階の並立スケジュールとして再現することができる。

 もっとも、人間以外の動物では、遠く離れた場所や、長時間遅延の後に成果が得られるような機会を選択肢に含めることはできない。それを可能とするのは、言語行動を基盤とするルール支配行動であり、さらには、遠方の場所や将来の出来事を関係づける能力ということになる。それを巧妙に説明する理論の1つが関係フレーム理論であることは間違いない。

次回に続く。