じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 徒歩通勤中に見つけた、ブライスキャニオンに似た風景。中国の氷溝丹霞にも似ているかもしれない。サムネイルをクリックすると正体が分かります。

2016年10月25日(火)




【思ったこと】
161025(火)2016年版「人はなぜ○○するか?」(13)日常行動各種

 10月24日の続き。今回は、寄せられた疑問のうち、以下のような日常行動に関する疑問について考えてみることにしたい。なお上記の各疑問の左側の「・」は疑問として挙げた人の数を表す。
  1. ・人はなぜ相談するのか
  2. ・・人はなぜ旅行するのか
  3. ・人はなぜ運動するのか
  4. ・・人はなぜ真似をするのか
  5. ・・人はなぜ踊るのか
  6. ・・人はなぜ遊ぶのか
  7. ・人はなぜギャンブルをするのか
  8. ・・人はなぜ絵を描くのか
  9. ・人はなぜ歌うのか

 これらの行動はいずれもオペラント行動であり、その生起頻度はそれぞれの人がそれぞれの生活環境の中で強化されるかどうかによって変わってくる。生活上絶対に必要というわけでもないので、強化される機会が無ければ全く行動しないという人もいる。よって、人間一般の普遍的な傾向として捉えても意味がない。むしろ、それぞれの行動が、どのような条件のもとでどのような形で強化されているのか、という形で説明していくべきである。また、そのような説明をすることで、どうすれば当該行動を増やしたり減らしたりできるのかといった「予測と影響」が可能となる。

 1.の「人はなぜ相談するのか」を例とすると、まず「相談」という行動は何らかのニーズ(=確立操作、あるいは動機づけ)に基づいて発せられる。特に困ったことがない、選択で迷うことがないという人はわざわざ他者に相談することはない。(←話題に乏しい時に、ネタの1つとして相談することはあるかもしれないが。) とにかく、自分自身で判断がつかない状況に陥った時には他者に相談することになるが、どういう相手に相談を持ちかけるかは過去の強化履歴に依存している。過去に有益な助言をしてくれた人、親身に相談に乗ってくれる人には再び相談を持ちかけるいっぽう、いい加減なアドバイスしか受けられなかったり、「人に頼るな、そのくらいのことは自分で調べなさい」などと怒られたりした場合、少なくともその相手に対して再び相談を持ちかけることはないだろう。これらは単純な、強化、無強化の原理によって説明可能である。

 2.の「人はなぜ旅行するのか」も同様であり、たまたま出かけた旅行先で絶景や興味深い出来事に出遭った人は、再び旅行に出かける確率が増える。そのいっぽう、旅行先でトラブルに巻き込まれたり、体調不良でしんどい思いをした人は、再び出かけようとしなくなる。これらも、強化や弱化の原理で説明可能である。

 もっとも、単に「強化されているから増えている」とか「強化されていないから行われていない」というだけでは、建設的な「予測と影響」にはつながらない。1.の相談行動においても、2.の旅行行動においても、具体的にどういう結果を随伴させることが強化につながるのか、すなわち、どういうアドバイスをすれば相談行動を強化できるのか、観光地で何を提供すれば旅行客に満足してもらえるのか、といった緻密な工夫がなければ、真の「予測と影響」には結びつかない。

 7.のギャンブルについては、結果の質よりも、結果の随伴のしかた、つまり強化スケジュールが大きな影響を与えている。スロットマシンを例にとれば、10回ごとに確実に当たるマシンよりは、平均10回ごとだが不確実、かつ稀に大当たりの出るようなマシンのほうが熱中しやすい。これは、一般的に、人間や動物が、変率強化スケジュールや変時隔スケジュールで強化されやすいという行動原理に基づいている。

次回に続く。