じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 生協食堂2階から西側のガラス越しに景色を眺めたところ、図書館の壁に見慣れない建物が写り込んでおり、その手前で誰かが食事をしているように見えた。建物東側には窓が無く、光が反射するはずはない。妙だなあと思ったが、けっきょくこの建物は食堂北東側にある情報統括センターであり、写っている人はその手前で食事をしている人が左右反対に写っていることが判明した。食堂のガラスがが扇形に配置されているため、思いもよらない角度からの光が反射していたのである。

2018年1月18日(木)


【思ったこと】
180118(木)「対応づけフレーム理論」(2)

 昨日の日記で、

Barnes-Holmes, Y., McHugh,L., & Barnes-Holmes, D. (2004). Perspective-taking and theory of mind: a relational frame account. The Behavior Analyst Today, 5, 15-25.

の中の、
Mutually entailed relations may or may not be symmetrical. 相互的内包は対称的の場合もあれば、非対称の場合もある。For instance, if A is the same as B, then the derived mutually entailed relation between B and A is also one of sameness (i.e., B=A). 例えば、もしAがBと「同一」であれば、BとAの間で派生された相互的内包の関係もまた「同一」となる。However, if A is more than B, then a less than relation is entailed between B and A.しかし、AがB「よりも大きい」という場合、BとAの間で内包される関係は「より小さい」となる。
という部分についてもう少し検討を加えてみることにしたい。引用文では「同一(類似を含む)」は「対称的(symmetrical)」、「より大きい」と「より小さい」は「not symmetrical」とされている。確かに数学で言う「対称律」は「AならばB」に対して「BならばA」が成り立つことであるゆえ、この表現は妥当ではあるが、数学を離れて「より大きい」と「より小さい」の特徴を捉えてみると、例えば「AはBより3つ大きい」というのと「BはAより3つ小さい」というのは符号が入れ替わっただけであってきわめて対称的である。要するに、量的な比較に関して言えば、数直線上で、「同じ」というのは、AとBが同じ座標上にあること、「より大きい」とか「より小さい」というのは、数直線上の異なる位置にAとBが存在しているという「関係」であり、そのことを、Aの視点から捉えるか、Bの視点から捉えるかというのが「大小」という関係表現に相当すると言えるのではないかと思う。

 それはそれとして、上記の引用文では、「より大きい(larger than)」とか「より小さい(smaller than)」という言葉が教示に使われているが、これでは、「より」とか「大きい」という日本語が分からない人は、直ちには学習することができない。また、日本語が分かっている人の場合は、恣意的に設定された大小関係を非恣意的な大小関係との類推(例えば、「ネズミよりネコは大きい。ネズミはネコより小さい。」とか「ネズミよりネコは大きく、ネコよりゾウは大きい。そうすると、ネズミよりゾウは大きい。」)から判断するであろう。

 というように考えると、派生的関係反応の事例は、言語教示を含まない課題で紹介したほうがベターであるように思う。

 言語教示を含まない課題としては、見本刺激としてAを呈示し、比較刺激としてBとXを呈示して選んでもらうというやり方がある。Aを見せた時にBを選べば正解という訓練をすれば、その後、見本刺激としてBを見せてAとYの中から選んでもらう課題においてAを選ぶ確率が高くなる。これが最も典型的な対称性であり、相互的内包の例となる。

 もっとも上記の見本合わせ課題は、大小比較には使えない。Aを見せた上で、BとXのうちAより大きいほうを選んでもらうという課題は論理的には可能だが、「BとXのうちAより大きいほうを選ぶ」というのは、Aを見せずに「BとXのうち大きい方を選ぶ」という課題であっても同じように正解できるからである。ということで、大小比較の課題では、例えば、
  • まずAを見せる。
  • 次にXを見せる。(Xにはいろいろな刺激が入る)
  • AよりもXのほうが大きい時には「○」、小さい時には「□」のボタンを押せば正解。
というような手続で訓練する必要がある。

 次回に続く。