じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 ゴルフ練習場ワイワイ倶楽部跡地に建設中のラ・ムータウン岡山中央店。敷地内には、ダイソー(左手前)とザグザグ(右奥)の店舗も見えている。他に、ジーユー、ユニクロ、西松屋の名前が挙がっているが、すべて出店するのか、どれか一店になるのかは分からない。いずれにせよ、徒歩圏内に激安スーパーや100均の店が造られるのはまことにありがたいことだ。これで定年退職後の生活もひとまず安心。

2018年3月14日(水)


【思ったこと】
180314(水)第23回人間行動分析研究会(3)行動的QOL

 昨日の続き。

3番目は、行動的QOLからみたドッグトレーニングの話題提供であった。ペットの犬自身のQOL、あるいは飼い主とペット双方にとってのQOLに関する話題ではあったが、望月昭先生が提唱された行動的QOLの精神、あるいは応用行動分析の基本指針において、大変参考になる示唆が含まれていた。

 行動的QOLは

●望月昭 (2001). 行動的QOL:「行動的健康」へのプロアクティブな援助. 行動医学研究, 7, 8-17.

などで定式化されたものであり、私自身も、
  • 長谷川芳典(2012).高齢者のQOLの評価・向上のための行動分析学的アプローチ. 岡山大学文学部紀要, 57,11-26.
  • 長谷川芳典(2013).スキナー以後の心理学(21)行動分析学から見た「選択」.岡山大学文学部紀要, 59, 1-16.
  • 長谷川芳典・藤田益伸(2013).高齢者における「選択のパラドックス」の実情. 岡山大学文学部紀要, 60,13-28.
などで引用させていただいたことがある。「行動的QOL」というと選択肢の提供や選択機会に関与する権利の議論を連想してしまうが、その根本理念は、「行動して正の強化を受ける」ことにあるという。望月先生は、長年にわたり障がい者施設で応用行動分析の立場から支援に携わっておられ、障がい者のQOLについて実証研究を積み重ねてこられた。それまでの障がい者施設では、どうしても問題行動の停止、つまり罰的統制に主眼が置かれていたが、これを「正の強化」に転じること、そして、「正の強化」を手段ではなく目的化するというのが行動的QOLの基本指針ということになる。

 今回は、「ご主人の帰宅時に玄関で飛びつく犬」と、「散歩の途中で子どもに出会うと怖がって散歩の続行を拒否して家に戻ろうとする犬」という事例が紹介された。

 「玄関で飛びつく犬」は、ご主人もそれなりに喜んでいるのだが、飛びついた時に衣服が破れるなど問題事象も発生していた。こういう時には、帰宅時は檻に閉じ込めておくという発想が浮かぶがこれは行動的QOLの精神に反する拘束である。そこで、ご主人が帰宅時にロープの束のようなものを投げてやると、犬は飛びつく代わりにロープに戯れるようになったという。また、ご主人とロープを引っ張り合うような行動も起こるようになったという。こうした代替行動の出現によって、衣服を破るような飛びつき行動は起こらなくなったというような話題であり、まことにめでたい結末となった。

 もう1つの「子ども恐怖」の事例では、いろいろな子どもに少しずつ慣れさせるという方法がすぐに浮かぶが、「慣れさせる」というやり方では、慣れるまでの期間は楽しみを先送りすることになってしまう。そこで、犬が楽しめるような場所に連れて行くことを優先したところ、たまたま子どもに出会うことがあっても怖がらないようになった、というような話題であった。これも、ポジティブな体験を優先することで、結果的に回避行動が起こりにくくなるという典型事例と言える。

 行動的QOLで論じられている選択肢の拡大というのは、あくまで強化される行動の種類を増やすという点で意義があり、単に選択肢が多ければいいというものではないという点がよく理解できた。

 次回に続く。