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8月6日の岡山は、連日同様の雷雨の可能性が予報されていたが、けっきょく雷雲は通過せず、日没前はほぼ晴れとなった。写真は月齢8.6の月。右下の光点は九州方面に向かう飛行機。 なお、この日の19時36分には天王星が西矩(せいく)となった。もっとも、こちらのサイトで計算すると8月11日が西矩となっていて5日ズレている。原因は不明。 |
【連載】太陽系の基本知識を更新する(4)金星(1) またまた間が空いてしまったが、7月29日に続いて、NHK「コズミックフロントで一斉再放送された、 ●「冒険者たちが語る 太陽系のヒミツ」 についての備忘録と感想。今回は金星を取り上げる。 まず金星の基礎知識であるが、地球と太陽の距離を1とした時、水星と太陽の距離は0.39、金星と太陽の距離は0.72、火星と太陽の距離は1.52となるので、この観測値からの引き算で地球と各惑星の最短距離は、金星が0.28、0.52、水星が0.61であり、金星が最も近いことが分かる。 ウィキペディアによると、金星の表面温度は平均で737K(464℃)となっていて、少なくとも地球上の生命が育つ環境ではない。このことは私が子どもの頃にもある程度分かっており、1962年刊行の『宇宙のすがた』では、金星の大気には炭酸ガスが非常に多く、その温室効果により地面の温度はおよそ300℃であると記されていた。またこのことから、「古い本に『金星は、一億年くらいまえの地球とよくにていて、大きな恐竜などが、のそのそと歩いているのではないか』などとかいたのがありましたが、そんなことは、根も葉もないうそだということがわかった」と記されていた。 もっとも、小学生の頃に読んだSF冒険小説の中には、金星の熱帯雨林を探検したというようなストーリーも含まれていた。金星がまだ謎に包まれていたいたぶん、現実味のある内容であった。 さて今回の放送によれば、金星に大気があることは、ロシアのミハイル・ロモノーソフ(1711-1765)によって金星の太陽面通過の観測から発見された。その後、長きにわたり、その大気は水分から構成され、熱帯雨林が存在すると信じられてきた。スウェーデンのノーベル化学賞受賞者スヴァンテ・アレニウス(1859-1927)は、金星の気候について研究し、金星には植物が生えている証拠があると発表した。 その後、米ソの冷戦に連動して、1960年代には金星への探査機が次々と送り込まれた。
1975年12月に金星に近づいたベネラ9号の着陸機は、世界で初めて金星の表面の撮影に成功した。しかし金星の表面には特筆すべき特徴はなく、地上が楽園であるという可能性は否定された。 ということで、科学の発展により金星の謎は次々と解明されていったものの、子どもの頃にいだいていた「金星=熱帯雨林の楽園」説は打ち砕かれてしまった。 その後、ウィキペディアによれば、2020年9月、カーディフ大学の研究者を中心とするイギリス・アメリカ・日本の研究者から成る研究チームがチリのアルマ望遠鏡とハワイのジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡を用いて行った観測から、金星での環境下における地質学的条件や化学的条件のもとでは発生しないと考えられていたホスフィン(リン化水素)が金星の大気上層から検出されたという研究結果発表されている。このデータは一部の嫌気性微生物から生成される事が知られているため、金星大気に生命が存在している痕跡である可能性も示されたが、同じ観測データを異なるグループが独立して再解析したところホスフィンの特徴は統計的に有意な水準では検出されず、先の報告は誤検出の可能性が高いとの指摘がなされているという。 次回に続く。 |