【連載】太陽系の基本知識を更新する(24)冥王星ほか(1)
昨日に続いて、NHK「コズミックフロント」:
●「冒険者たちが語る 太陽系のヒミツ」
についての備忘録と感想。今回からは2021年9月2日に初回放送された「冥王星ほか」を取り上げる。この回は太陽系シリーズの最終回であり、タイトルは冥王星となっているが、天王星、海王星、トリトン、カイパーベルト天体についても簡単な紹介があった。
まず例によって、私の小学生の頃の愛読書『宇宙のすがた』(鈴木敬信、1967)において、それらの天体がどのように語られていたのかを抜粋させていただく。
- 天王星
- ハーシェルが1781年に発見。ハーシェルは尾の無い特別な彗星であろうと報告したが約1年後に惑星であるとわかった。
- 表面温度はマイナス180℃くらい。
- 水素とヘリウムとネオンでできた大気に覆われ、その上に固体アンモニアの雲が浮かんでいる。大気にはメタンがかなりたくさん含まれている。これらの特性から青緑色に見えている。
- 他の惑星と異なり、ほとんど横倒しになって太陽の周りをまわっている。このため、天王星の1年のうち半年は夜、半年は昼となる(地球の年数で言えば約42年ずつ)。
- 衛星は5個。
- 海王星
- 天王星が万有引力の法則通りに動かないことから、その外側にまだ発見されていない惑星があって天王星の運動を乱しているのではないかと考えられるようになった。ルベリエとアダムスが計算により未知の天体の位置を予測した。このうちアダムスのほうが早く計算が完了しグリニッジ天文台のチャリスに観測を依頼した。チャリスは2度も新惑星を観測しておきながら観測資料を整理しておかなかったため、新惑星発見者の名誉を取り逃がした。いっぽうルベリエはベルリン天文台のガレに手紙を送り、手紙が着いた晩に30分も経たないうちに新惑星を発見した。1846年9月23日のことであった。
- 衛星が2個ある。
- 天王星とよく似た大気があり、青緑色に見える。
- カイパーベルト天体
特に記載なし。
- 冥王星
- 海王星の発見によって天王星の動きの乱れは殆ど説明できるようになったがまだ完全ではない。そこで、ピッカリングやローエルが計算に取りかかった。この計算に基づいて探し出されたのが冥王星。発見者はローエル天文台のトンボ-。
- 天王星や海王星と異なって淡黄色をしていることから大気が殆ど無く、日光がそのまま反射されていると考えられる。大気まで凍っているためかもしれない。
- 衛星はまだ発見されていない。
以上が1960年代の頃の天王星、海王星、冥王星の知識であったが、2022年の段階ではそれぞれ大幅な「知識の更新」が行われている。
なお、海王星の発見者についてはウィキペディアには
海王星の発見をきっかけに、フランスとイギリスの間で海王星の発見に値するのは誰なのかについて多くの民族主義的な対立が発生したが、結局、海王星はルヴェリエとアダムズの両方が発見したという国際的コンセンサスが定着した。1966年以来、アメリカの天文学者Dennis Rawlinsはアダムズの共同発見の主張の信頼性について疑問を投げかけ、1998年にグリニッジ王立天文台に歴史文書の「Neptune papers」が返却されたことで歴史家による再評価が行われた。文章を検討した後、彼らは「アダムズは、海王星の発見に関してルヴェリエと同等の信用に値するものではない。その信用は、惑星の位置を予測することとそれを捜索することを天文学者に納得させることの両方に成功した者にのみ属する。」としている。
と記載されている。
なお、つい最近、皆既日食の最中の天王星食を双眼鏡で眺めることができた。天王星を直接観察できたのはたぶん人生で3回目。天王星は太陽の近くで無い限りは1年中、双眼鏡で眺めることができるが、周囲に手がかりとなる恒星、惑星などが無いとどれが天王星なのか確信できないところがある。また月の近くにある場合は、月の明るい光で見えにくくなってしまうが、皆既月食の最中は空が暗く、しっかりと確認することができた。
次回に続く。
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