じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 9月21日の朝は曇りで気象庁統計での日照時間はゼロと記録されていたが、6時10分頃に少しだけ日が射し、なぜか岡山理科大学の建物だけを照らしていた。イルミネーションのように輝いて見えるが、じっさいはガラスに朝日があたって反射しているだけ。



2023年9月22日(金)




【連載】笑わない数学(2)虚数(10)リーマン球面、虚数以外の新しい数(1)

 昨日に続いて、NHK『笑わない数学』で2022年8月17日に初回放送された、

虚数

のメモと感想。

 まず、昨日の日記で複素平面の話題を取り上げたところであるが、ウィキペディアによれば、複素平面をさらに拡張したものにリーマン球面というものがあるという。リーマン球面では
複素数の加法は任意の複素数 z に対して

z + ∞ = ∞

と定義することで拡張され、乗法は任意の 0 でない複素数 z に対して

z ・ ∞ = ∞ z とし、∞ ・ ∞ = ∞ と定義することで拡張される。∞ + ∞, ∞ − ∞, 0 + ∞ は未定義のままであることに注意すべきである。複素数とは違って、拡張複素数は体をなさない。∞ は乗法逆元をもたないからだ。
というように演算が定義されているというが、残念ながら私にはここでいう無限大の概念がよく分からない。
 このことでふと思ったが、世の中で(といっても日本国内だが)、リーマン球面のことを理解している人は何%ぐらいおられるのだろうか。私から見ればリーマン球面を理解できる人は相当賢い人でありその方面で大活躍しているように思われるのだが、理解している人と理解できない人(あるいは理解できる能力はあるが無関心な人)の間で、個人収入や幸福度や世界観にどのような違いがあるのか調べてみたいという気もする。

 リーマン球面のことはよく分からないが、一般に、複素平面を立体化(3次元化)、さらには4次元化することができるのかどうかも興味がもたれるところである。前回、複素平面はxy平面に比べてさまざまなメリットがあるということを引用したが、これはあくまで2次元の平面の話である。3次元、あるいはそれ以上の次元であっても、XYZとかxyzwというように座標軸を作ったり、3成分以上のベクトル【じっさい、『4元ベクトル』というのはあるようだ】を考えることはできると思うのだが、複素平面の次元を拡張するためには、虚数とは別の数の概念を追加する必要があるように思われる。




 ということで、ここからは、虚数とは別の新しい数が存在するのかどうか考えてみることにしよう。なお、ここでいう「新しい数」というのは、「自然数⊂有理数⊂実数⊂複素数」という集合の外側に存在する数があるのかどうかという意味であるが、それが複素数の集合を包むようなさらに広い概念であるのか、それとも複素数の集合とは包含関係のない独立した集合であるのか、については事前にはなんとも言えない。

 さて、まずは、虚数が登場した時に戻ってみよう。ウィキペディアによれば、虚数単位とは

●2乗して −1 になる数のことである。そのような数は2つだけあり、その内の一つを記号iを用いて表す(どちらかに特定することはできない)
と定義されている。そこですぐに思いつくのは、

●2乗して−2になる数のうちの1つをjとする

と定義すれば、新しい数を作ったことになるのでは?ということである。しかし容易に気づくように、そのような「j」は「i√2」に「還元」されてしまう。つまり、先にiを定義した時点で、jという概念は冗長な概念ということになる。もちろん、先にjだけを定義しておいて後からijで表すということもできないわけではないが、そうすると回転などの計算がややこしくなるだけで何のメリットも生まれない。




 次に思いつくのは、nを3以上の自然数であるとして、

●n乗して−1になる数のうちの1つをkとする

という定義である。しかし、複素数のことをちょっと勉強すると、−1のn乗根というのはすべて複素数になることが分かる。例えば−1の4乗根は、

(√2±√2i)/2、(√2±−√2i)/2

の4個となる。要するにいくら大きなnであってもn乗根の中に「複素数ではない新しい数」を見つけることはできない。




 では、どうすれば新しい数を探すことができるのか? 私が理解している範囲では次の方法がある。
  • 2乗して初めてゼロになる数を考える→二重数(または双対数)
  • 虚数単位を、ijkに拡張し、
    i2j2k2ijk=−1
    という関係を満たすものとする→四元数
なおウィキペディアによれば、

同型を除いて、実数体上二次元の単位的多元環は通常の複素数、分解型複素数、二重数のちょうど三種類しかない。

ことが証明されているという。また二元数の項目によれば、

複素数の全体は体を成す(同型を除いて)唯一の二元数代数である。

ということなので、で認められている結合法則や交換法則、分配法則などを前提として演算や証明を行う場合は、複素数を超えた数の世界では一定の制約がかかるようである。

 次回に続く。