Copyright(C)長谷川芳典 |
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10月12日夜明け前の金星と月。金星は10月24日に西方最大離角を迎えるため、仰角はほぼ45°でかなり高いところに見える。月齢は26.8。 金星と月は翌13日の朝にも見えていたがピントが合わず撮影に失敗。また14日朝は曇り空となり見ることができなかった。なお15日の2時55分にはアメリカ方面で金環日食が見られる。 |
【連載】笑わない数学(3)コラッツ予想(2)「元の数より小さくなる」ことと「循環」 昨日に続いて、10月11日にNHK総合で初回放送された、『笑わない数学 シーズン2』: ●コラッツ予想 についてのメモと感想。 ところでこの話題だが、NHKの公式サイトのほうに、コラッツ予想についての数学ノートが追加されていた。昨日朝には見つからなかったので日付を調べたところ「10月13日の午後5時04分公開となっていた。このノートは、他の話題が追加されていくと削除されてしまうので、早めに閲覧することをオススメする。 ノートによれば、コラッツは最初は「3倍して1をたす」という特定のルールだけではでなく、「a倍してbをたす」みたいな、もっと一般的なルールの場合で「構造」を調べていた、という記述があった。これは私が、2月頃に取り上げた、
さて、放送では著名な数学者たちが「敗北宣言」を出すなか、この問題に果敢に挑戦したいくつかの研究が紹介された。 まず紹介されたのはリホ・テラスとコーネリアス・エベレットによる確率論的アプローチであった。なお放送では、2人の研究は1970年代にそれぞれ独立して行われたとされている。これらの研究では、 ●すべての数は「偶数なら2で割る。奇数なら3倍して1をたす」をくりかえすと必ず1になるはずだ という元のコラッツ予想に。 ●ほとんどすべての数は「偶数なら2で割る。奇数なら3倍して1をたす」をくりかえすと必ず1になるはずだ という妥協が加えられた。2人が用いた確率論のテクニックではすべての数から確率を使って一部の数を取り除き、その残りの数についてコラッツ予想を証明しようというものであった【但し、「テラスたちの手法は確率論を用いたもので実際には特定の数が除外されるわけではない」というテロップが表示されていた】。さらに、妥協は拡大され、 ●ほとんどすべての数は「偶数なら2で割る。奇数なら3倍して1をたす」をくりかえすと自分自身より小さくなる となった。ジェフリー・ラガリアス博士(ミシガン大学)は、この2人の妥協について、以下のようにその意義を認めている。 彼らの妥協は賢明な決断でした。大きな進歩につながったのです。彼らは出発点の数よりも小さくなるものがどれくらいあるかという問題に焼き直しました。確率論的な手法でコラッツ予想の証明へと前進したのです。 ここまでのところでいったん感想・考察を述べさせていただくが、上掲の「ほとんどすべての数」の意味についてはノートのほうで補足説明があった。要約引用させていただくと以下のようになる。 「ほとんどすべての数について、◯◯だ」とは、「限りなく100%に近い“割合”の数について、◯◯は正しい」という意味な。言い換えれば「限りなくゼロに近い“割合”の数については、◯◯が正しいかどうかは分からない」ということでもある。 「確率論的手法」がどういうものかは分からないが、「操作を繰り返すと自分より小さな数になる」という点は直感的に分かりそうな気がする。これは、 2月25日の日記で取り上げた「二進法アプローチ」からの推測であり、要するに二進法的に考えると、
さて、もし、「ほとんどすべて」ではなく「すべて」において、 ●すべての数は「偶数なら2で割る。奇数なら3倍して1をたす」をくりかえすと自分自身より小さくなる が証明されればコラッツ予想が証明されたことになるのだろうか? 素朴に考えると、2以上から少なくとも8垓5777京3599兆4274億9415万144までの範囲では予想が成り立つことが分かっているので、すべての数がその範囲まで減少すれば確かに証明できたと言えるはずだ。 しかしもう1つ別の可能性として例えば、100垓を超えるある数に操作を繰り返したところ80垓までは減少したが、その後は80垓から90垓までの数の間で循環してしまうという可能性は排除できない。なので、単純に「操作を繰り返すと元の数より小さくできる」というだけでは「最終的に1になる」という証明には至らないように思われる。 次回に続く。 |