じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



11月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
クリックで全体表示。



 ウォーキングコース沿いの県道で、片側1車線を閉鎖してプラタナスの剪定が行われていた。清掃の手間を省くため、毎年、まだ落葉が始まらないうちに刈り取ってしまうため、黄葉の風景を楽しむことができないのが残念。もっとも、落葉が積もれば歩道上での転倒やスリップ事故が起こりやすくなるのでやむを得ないところか。


2023年11月3日(金)




【連載】笑わない数学(5)非ユークリッド幾何学(2)第4公準の必要性?/錯角が等しいことの証明

 昨日に続いて、10月4日にNHK総合で初回放送された、『笑わない数学 シーズン2』:

非ユークリッド幾何学

についてのメモと感想。

 まず、昨日の日記で、

●4番目の「直角は全て等しい」は、そもそもなぜこれが公理として必要なのかが分からなかった。

 という点についてBingに「ユークリッド幾何学の4番目の公準に「直角はすべて等しい」というのがありますが、この公準が無いとどんな不都合が生じるのでしょうか?」と尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。
ユークリッド幾何学の4番目の公準には、「直角はすべて等しい」というものがあります1。この公準が無いと、例えば、三角形の内角の和が180度にならない場合があります。また、直角が等しくない場合、同じ長さの辺を持つ二つの三角形が合同であるとは限らなくなります1。このように、直角が等しいことを前提としているため、この公準が無いと幾何学的命題を証明することが困難になる場合があります1。

(1) 平行線公準 - Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E8%A1%8C%E7%B7%9A%E5%85%AC%E6%BA%96.
(2) 非ユーックリッド幾何学について - 九州大学(KYUSHU .... https://imi.kyushu-u.ac.jp/~saeki/coffee/coffee8.html.
(3) 公準(こうじゅん)とは? 意味・読み方・使い方をわかり .... https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E5%85%AC%E6%BA%96/.
(4) アラビア語とサンスクリット版 ユークリッド『原論』にみる .... https://www.i-repository.net/il/user_contents/02/G0000031Repository/repository/keidaironshu_061_002_099-112.pdf.
(5) ユークリッド幾何学(ユークリッドきかがく)とは? 意味や使い .... https://kotobank.jp/word/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%89%E5%B9%BE%E4%BD%95%E5%AD%A6-145038.
 回答の中で「三角形の内角の和が180度にならない場合があります。」とあったが、これは5番目の公準があれば十分。4番目の公準を外しても「内角の和が180°になる」ことは成り立つのではないか、と思ってさらに質問を重ねたが、
おっしゃる通りです。5番目の公準である「平行線公準」があれば、4番目の公準を外しても「内角の和が180°になる」ことは成り立ちます。この場合、三角形の内角の和は180度になります。しかし、平行線公準が無い場合、三角形の内角の和が180度にならない場合があります。このように、直角が等しいことを前提としているため、この公準が無いと幾何学的命題を証明することが困難になる場合があります。.
という回答をいただいた。しかし、私にはイマイチよく分からないところがある。おそらく図形の相似を定義する際に、「同じ角度」が問題になるためかと思う。最も相似自体は(角度を使わなくても)辺の長さの比だけで定義できる。また、例えば「直角はすべて等しい」という公理を、

●直角は、αという直角と、−αという直角があり、2つの角を合わせるとゼロになる

というように置き換えた場合に別の「非ユークリッド幾何学」が構築できるのかどうかもよく分からない。




 元の放送内容の話題に戻るが、放送では続いて、ユークリッド幾何学の5つの公理だけから「平行線の錯角は等しい」ことを証明する方法が紹介された。なお、現在の中学校の学習指導要領には、公理からの証明は含まれていないという注記があった。なお以下の記述は図示せず言葉だけで説明するため、適宜、補足してある。
  1. 平行線をA、B、それらに交わる斜めの直線をFとする。
  2. 2つの錯角が等しくないと仮定する。
  3. BとFによって生じる錯角の部分の図形を、AとFによって生じる錯角の部分の図形に重ね合わせてみる。そうすると、1.で角度が等しくないと仮定していることから、AとFの交点からは、BとFの間の角度に等しくなるような角を構成する別の直線Cを引くことができる【もし、AとCが重なってしまったら、2.の仮定に反する】。
  4. 公理5「直線と点があるとき、点を通って直線に平行な直線は1本しか引けない。」から、新たに出現した直線CはBとは平行にはならない【平行であったとすると、1本しか引けないという公理に反するため】。
  5. よって、CとBはどちらかの方向の延長上で必ず交わる。この交点をχとする。
  6. 続いて、上記5.で生成した図形を180°回転させる。そうすると、回転後の図形はピッタリ重ならなければならない。なぜなら、直線Cは、AやBと交わる時にできる錯角が等しくなるように設定された直線であるから、角度がピッタリ重なるのが当然。また、回転しても線分の長さは変わらない。
  7. 上記6.、交点χが回転された位置には交点yが出現する。
  8. そうすると、2つの点χとyの間にはAとCという異なる2本の直線が出現することになるがこれは公理1.の「2つの点を通る直線は1本しか引けない。」に反する。
  9. よって、上記2.の仮定は間違っていたことになり、背理法により錯角は等しいということが証明された。
 以上と同じような方法により、たった5つの公理を出発点にすれば、「平行線の同位角は等しい」、「平行四辺形の対角は等しい」、といったさまざまな図形の性質が次々と証明されると解説された。

 放送では続いて、尾形さんが「三角形の内角の和は180°である」ことを証明した。方法は、
  1. 三角形の頂角を通り、底辺と平行になるような直線を引く。
  2. 「錯角は等しい」という定理から、その直線と三角形の2辺によって構成される2つの角は、底辺と2辺によって構成される2つの角とそれぞれ等しい。
というあっさりしたものであった。

 ここからは私の感想・考察になるが、私が中学生の頃には確か5.の公理は「平行線の錯角は等しい」となっていて、「直線と点があるとき、点を通って直線に平行な直線は1本しか引けない。」というのは後から証明されるべき定理であるように教わったような記憶があった。というか、「錯角は等しい」自体を証明せよという問題は出されなかった。放送の注記にもあったように、中学校の学習指導要領では、「錯角が等しい」は自明のものとして扱ってよいとされていたためかもしれない。

 あと、上掲の「2つの錯角が等しくない」というのは「常に等しくない」ではなく「等しくない場合がある」という仮定であり、その場合には「2つの点の間に2本の直線が引ける」となることを導くものであったが、考え方としては、

●2つの錯角が等しい場合もあれば等しくない場合もある

と場合分けした上で、2つの点の間に引ける直線は、錯角が等しい場合には1本、それ以外の場合は無限の本数引ける、というように拡張できそうな気もしたがそういう「非ユークリッド幾何学」が創れるのかどうかはよく分からない。もちろんその場合、どういう条件の時に限って錯角が等しくなるのか、場合分けする必要があるだろうが。

 次回に続く。