じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 近隣のラ・ム−で大黒天Payというスマホ決済を利用していたが【9月13日9月20日の日記参照】、けっきょく利用のメリットが見当たらず、逆に手間がかかることから、数日前に、残高をゼロにした上で実質的に使用を停止した。リセットの方法は簡単であり、残高よりも支払い額のほうが多い場合に「大黒天Pay」支払いを選ぶと、いったんエラーが出た後「大黒天Payと現金併用による支払い」モードとなり、大黒天Payの残高(ポイントを含む)をゼロにすることができた。
 大黒天Payは馴れるとスマホを支払機にタッチしただけで(もしくはQRコードを読み込んだだけで)瞬間的に完了できるという利便性もあるが、
  1. チャージ機でいちいちお札を1枚ずつ入れてチャージする手間がかかる。
  2. レジによっては大黒天Payによる支払いがエラーになる場合がある。
  3. たまに購入する『キャベツがあればすぐにできる中華名菜八宝菜』(249円、50ポイント還元)が対象から外されるなど、ポイント還元対象商品が殆ど無くなった。
といったデメリットもあった。
 私がザッと見渡した限りでは、この大黒天Payで決済している人は1%未満であるように思われる。維持費もそれなりにかかっているはずだが、会社としてはこの先どうするつもりなのだろうか?


2023年11月11日(土)




【連載】笑わない数学(6)『1+1=2』(2)「あ◆あ=い」の証明

 昨日に続いて、10月18日にNHK総合で初回放送された、『笑わない数学 シーズン2』:

1+1=2

についてのメモと感想。

 昨日も述べたが、放送で紹介された『ペアノの公理』は簡略版であり、専門用語を使わないことで逆に分かりにくくなっているように思われた。いっぽう、ウィキペディアでは、集合 N と定数 0 と関数 Sと命題Eに関するペアノの公理とは次のようになっていた。
  1.  0 ∈ N
  2.  任意の n ∈ N について S(n) ∈ N
  3.  任意の n ∈ N について S(n) ≠ 0
  4.  任意の n, m ∈ N について n ≠ m ならば S(n) ≠ S(m)
  5.  任意の E ⊆ N について 0 ∈ E かつ任意の n ∈ N について n ∈ E → S(n) ∈ E ならば E = N このとき N の元を自然数といい、自然数 n に対して自然数 S(n) をその後者 (successor)という。


 YouTubeの解説動画:

1+1=2の証明が難しいって本当?(ペアノの公理)

では、さらに詳しく説明されており、放送では何のことか分からない部分もようやく納得することができた。
 動画によれば、「1+1=2」の証明のポイントは、
  1. 自然数を厳密に定義する。
  2. その上で足し算を定義する。
という点にある。
 このことをふまえた上で,ペアノの公理が紹介された。これらを満たすものが自然数となる。
  1. 【0の存在】自然数0(ゼロ)が存在する。
    →高校までの数学では自然数は1から始まると教わることがあるが、0を含めたほうが扱いやすい。
  2. 【次の元の存在】任意の自然数aにはそこ後者、suc(a)が存在する。【「サック」と発音される。S(a)と表されることもある】
  3. 【最小元の存在】0はいかなる自然数の後者でもない。
  4. 【単射性】異なる自然数は異なる後者をもつ。
    →a≠bならばsuc(a)≠suc(b)
  5. 【数学的帰納法の原理】0がある性質を見たし、aがある性質を満たせば、その後者suc(a)もその性質を満たすとき、すべての自然数はその性質を満たす。

 ここでいったん私の感想・考察を述べる。
  1. 自然数の始まりを1とするか、0とするかについては本質的な問題ではなさそうだ。ウィキペディアの自然数の公理では、0の存在から始めれば自然数0、1、2、3...の世界、0を1に置き換えて1から始めれば自然数1、2、3...の世界が作れるとのことであった。またリンク先ではペアノの公理(1891年)は「1から始まる」自然数の定義となっている。
  2. 「0から始まる自然数」と「1から始まる自然数」は本質的には違いがなさそうだと述べたが、0には、「a+0=a」という重要な性質がある。もっともその性質は足し算が定義されたあとでないと意味を持たない。
  3. 動画では上掲のペアノの公理を満たす構造が実際に作れるかどうかは別問題、しかし実際にはフォン・ノイマンの構成法などによって、作れることが証明されているようである。
  4. 昨日の日記でも指摘したが、上掲のペアノの公理では、自然数は順序だけで定義されている。つまり間隔は定義されていない。なので、ひらがなも五十音順であれ「いろは」であれ、順序が決まっていれば自然数ということになる。但し『次の元の存在』と『単射性』を満たすためには、複数のひらがなを「ああ」、「もんた」というように並べて無限に続くような順番を作る必要がある。となればこれは結局、自然数をn種類の数字で表すというn進法の問題に置き換えただけの話になってしまう。
  5. 動画では、上掲の「単射性」が一直線の構造を保証すると説明されていた。例えばsuc( )の結果がループ構造になっていた場合、χ≠yにもかかわらず、suc(χ)=suc(y)となるケースが存在してしまう。同様に、川の流れが合流するように、複数の直線構造が1本に合流する場合も「単射性」の公理から除外される。
  6. なお、上記5.で疑問に思った点が1つある。例えば、1月から12月までの月は、suc(1月)=2月、suc(2月)=3月、suc(12月)=1月、というようにループ構造(循環構造)は持つが、単射性は満たしているように思える。但しこの循環構造では、最小元「0月」が存在しない。


 動画では続いて足し算(加法)の定義が行われた。
  1. すべての自然数aに対して、
    a+0=a
  2. すべての自然数a、bに対して
    a+suc(b)=suc(a+b)

上記の2.は『笑わない数学』のほうでは、

a+bの次=(a+b)の次

と表現されていた部分であり、一番分かりにくいところになっている。これがなぜ分かりにくいのかはおそらく、いまだ定義されていない「+」が定義の中に含まれているためであることと、我々がすでに習っている「+」の意味が暗黙のうちに含まれていることによるためではないかと思われる。なので、上記の加法の定義では、「+」ではなく、かえって、暗黙の了解が全く含まれない「◆」を使った方がわかりやすくなるように思われた。すなわち、
  1. すべての自然数aに対して、
    a◆0=a
  2. すべての自然数a、bに対して
    a◆suc(b)=suc(a◆b)

 さて、次にいよいよ「1+1=2」の証明に入るわけだが、これまた、1とか2について暗黙の了解が含まれていることで分かりにくくなっている。 そこで、「1」と「2」の代わりに、「あ」と「い」を使い「あ◆あ=い」の証明を試みることにしよう。
  • まず「あ」と「い」は次のように定義する。
    suc(0)=あ、suc(suc(0))=い
  • 加法の定義において、a=suc(0)、b=0とすると、
    suc(0)◆suc(0)=suc(suc(0)◆0)
  • これらを「あ」と「い」に置き換えると、
    あ◆あ=suc(suc(0)◆0)=suc(suc(0))=い
  • よって、「あ◆あ=い」が証明された。
となる。さらに「あ」を「1」、「い」を「2」、「◆」を「+」に置き換えれば「1+1=2」も証明されたことになる。

 なお、上掲の証明では「a◆0=a」が証明に使われている。ということは、上掲の加法の定義では、0という存在が不可欠であるように思える。であるとすると、(0を含まない)1から始まる自然数の世界では加法は定義できないのかという疑問が生じてくる。

 次回に続く。