【連載】アルツハイマー病 克服に挑む(2)
昨日に続いて、NHK-BSで5月14日に再放送【初回放送は3月7日。NHK-BSでは3月13日】された、『フロンティア』で
●アルツハイマー病 克服に挑む
についてのメモと感想。
放送ではアルツハイマー病が起こる仕組みが概観されたあと、DIANの治療や予防を目ざす取り組みが紹介された。
- アミロイドβを標的にした予防試験は2012年に始まった。ここでもまた、144人の家族性アルツハイマー病の遺伝子を持つ人たちが協力した。発症を有意に防げる薬があれば、有効性が確認できたことになる。
- 研究に協力した男性の一人、ブライアン・ホイットニーさんは、一族14人のうち10人がアルツハイマー病になり、発症から5年以内に亡くなっている。家族の発症年齢の平均は50歳。ブライアンさんも発症遺伝子を持っているが、取材時には51歳5カ月となっており今のところ発症していない。薬の臨床試験を受けているのでその効果が現れているのかもしれない【←対照群に回されている可能性は?】。本人は自分は実験台(『Guinea pig』)でありそれでいい、「もし薬が私を助けたり得られた知見が助けになれば、それは素晴らしいことです。」と語ってられた。
- しかし、2種類の候補の薬に対する臨床試験では未だ効果は確認されていない。但し、アミロイドβを除去する薬の投与期間が一番長かった人は発症を遅くできた、もしくは発症を防いだ可能性がある。
- ブライアンさんには娘さんがあり、発症遺伝子を受け継いでいる確率は50%となっている。娘さんが成人する頃には新しい治療法がたくさん見つかり、もはやブライアンさんと同じ不安を抱えなくても済むという願いが、ブライアンさんの原動力になっているという。
放送では続いて、Chapter2として、『遺伝子研究で誕生 アルツハイマーの薬』として『レカネバブ』の話題が取り上げられた。レカネマブは1年半の臨床試験の結果、(投与なし群に比べて)1年半後の認知機能の低下を27%抑制することが確認されている。脳の画像からも、レカネマブ投与により脳からレカネマブが取り除かれている様子が確認できる。
レカネマブは日本のエーザイが中心となって開発された。開発を担当した木村禎治さんは以下のように語っておられた【要約・改変あり】。
- このプロジェクトの開発番号は『E2012 ガンマ・セクレターゼ・モジュレータ』であったが、その中の「2012」という番号は「2012年までに出す」という意味であり当初は自信満々であり、すぐに成功するであろうと思っていた。しかし、そこからが非常に長い道のりであった。
- 当初はアミロイドβが繊維状に固まった『老人斑』がターゲットになっていたが、そのような石のような固まりがあらゆるところで脳の細胞を殺していくという考えには何か違和感があった。
- アミロイドβは初期は1つ1つ粒状になっているが徐々にくっついて繊維状になり、最後は老人斑として現れる。
- その時にラーシュ・ランフェルト(ウプサラ大学)という研究者が、犯人は老人斑ではなく、アミロイドβが溶けるような状態の時にいろいろな神経繊維にはまって神経伝達を阻害したり、神経に張りついて神経を傷めるという発見が目にとまった。
次回に続く。
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