じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 今回の台風10号は進路の予想が難しく、日々修正が行われている。8月26日06時と27日06時を比較すると、
  1. 26日予想では中心は岡山県北西部を通る可能性が高いとされていたが、27日予想では四国から大阪に向かう可能性が高いと修正された。
  2. 30日03時の中心は、26日には鳥取市近くと予想されていたが、27日には熊本市付近に修正された。
  3. 31日03時の中心は、26日には佐渡島付近と予想されていたが、27日には大阪市付近に修正された。
上記の予想はあくまで予報円の中心の移動をたどっただけであり、台風の中心がそっくりそのまま通るという予想ではないが、中心がどこを通るのかで風向きが異なるので大きな関心事にならざるを得ない。いっぽう大雨については中心がどこを通っても警戒が必要。


2024年8月27日(火)





【連載】サイエンスzero「左?右?生命の不思議な“しかけ”」(2)三葉虫と鱗食魚

 昨日に続いて、8月18日に初回放送された、NHK『サイエンスzero』、

左?右?生命の不思議な“しかけ”

のメモと感想。

 放送では続いてスタジオゲストの竹内勇一さん(北海道大学)による解説があった。前回の日記では、利き手の起源が、
●言語の獲得説→道具説→両手協調操作説
というように、遡って議論されるようになったと記したが、竹内さんによれば、もっと前、今から6億年前に栄えた三葉虫の時代に遡って起源を求めることができるという。三葉虫の化石には右下が囓られたものが化石の約7割に右下部分の欠損があり、捕食者が右後ろから攻撃、もしくは三葉虫自身が襲われた時に左方向に逃げる癖を持っていたか、またはその両方であるか、そのいずれかの可能性が示唆された。
 竹内さんによれば、生物の大前提は左右対称にある【要約・改変あり】。
  1. 右利き、もしくは左利きの人は片側の脳だけで情報処理ができるので両利きの人より速く対処できる。
  2. 左脳は「論理的思考、言語能力」、右脳は「想像力、空間把握能力」。対戦型のスポーツで近接した状態で素早い反応が求められるボクシングやフェンシングでは左利きが有利とされている。にもかかわらず、なぜ右利きが多いのかについてはよく分かっていない。
  3. 生き物の外見(ボディープラン)の大前提は左右対称。最も効率の良い逃げ方、追いかけ方は直進。左右を同じ量使うことで直進できる。
これに対して左右非対称の生き物として知られているのがアフリカに生息するペリソーダス・ミクロレピスという、他の魚の鱗を剥がし取って食べる魚であった。この魚の口の向きは個体によって異なり、右利き、左利きがある(右から襲う個体は右利き、左から襲う個体は左利きと定義)。
 この魚の口の向きは生まれた時から決まっており遺伝とされている。但し、最初のうちは、口の向きとは無関係に左右どちらからも攻撃を仕掛けようとする。そのうち、自分の口の向きに適した攻撃方向が定まるようになる。ということで遺伝するのは口の向きだけで、攻撃パターンは環境的要因【オペラント行動における強化】が働いていると考えられる。
 ペリソーダス・ミクロレピスには世代を超えた生存戦略があることも知られている。左利きのミクロレピスが多数派の時、攻撃を受ける魚は次第に左側を警戒するようになる。そうすると少数派の右利きのミクロレピスのほうがエサをたくさん食べられるようになる。こうして左利き、右利きの比率は変動していく。

 ここからは私の感想・考察になるが、三葉虫と鱗食魚の話題は、1月8日初回放送の『ヒューマニエンス』でも取り上げられており、ある程度知っていた。過去日記に考察があるので、ここでは繰り返さない。
【2024年1月8日放送】「“左と右” 生命を左右するミステリー」
 それはそれとして、人間の利き手の問題を、他の生物の左右の形態的特徴の違いや機能差とどこまで結びつけて議論できるのかは何とも言えないように思われる。左右の機能差という共通の話題として一括りにできたとしても、すべてが同じ起源を持っているとは限らない。利き手は手の問題、左右の視野は目の問題、左右の聞こえ方は耳の問題、利き足は足の問題として別々に起源を考えたほうがうまく説明できる可能性もありそう。

 次回に続く。