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少し前、ウォーキングシューズを廃棄した。ぬいぐるみの廃棄のような断捨離ではなく、あくまで靴底がすり減って歩きにくくなったためである。 靴が古くなると靴底がまるごと剥がれ落ちたり【2019年6月29日の日記参照】、側面の合成皮や靴底のスポンジがボロボロと剥がれ落ちことがあるが【2022年11月4日の日記参照】、今回の靴はそのようなトラブルにはならず、少しずつすり減っていった。 |
血液型と出身県で病気リスクや体質が分かるか?(9)お酒に対する強弱、中性脂肪、縄文人由来変異保有率 10月25日に続いて、「カズレーザーと学ぶ。」で9月10日に初回放送された、 ●血液型と出身県でわかる!最新タイプ別の病気リスク&太りやすい体質の県 についてのメモと考察。 今回からは出身県の話題に入る。解説は太田博樹さん(東京大学)。前半の解説者の深瀬浩一さん(大阪大学)が「理事・副学長・大学院理学研究科」、今回からの解説者は「東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻」ということで、いずれも立派な方々であった。もっとも、大阪大の副学長や東大の教授が解説したからといってその内容がすべて正しいということにはならない。あくまで講義の中でちゃんとした証拠が示されているのか、論理的飛躍や誇大な主張がなされていないのか、といった観点から聴講する必要がある。ちなみに前半の深瀬さんの「X型は○○という病気リスクがある」という解説ではそのつど根拠となる研究結果が引用されていたので信頼性が高いという印象を受けたが、
前置きが長くなったが、後半の講義ではまず、何かの強さが都道府県によって異なる例が紹介された。県別に色わけされており、「強い(64%以上)」に塗られていたのは、東日本から順に、 ●北海道。秋田、岩手、山形、埼玉、高知、福岡、熊本、鹿児島、沖縄 の10都道府県であり、正解は「お酒に対する強弱」を示すものであった【出典は、原田勝二『飲酒様態に関する遺伝子情報』、日本醸造協会誌をもとに番組作成】。但し正確に言うと、お酒に弱いという変異を持っていない人の比率を比較したものであり、変異を持っている人が多いのは関西に多いことを示すものであった。 もう1つ示されたのは、中性脂肪がたまりやすい遺伝子を持った人の比率で、59%以上の高比率となっていたのは、東日本から順に、 ●秋田、山形、宮城、福島、島根、佐賀、鹿児島、沖縄 の8都道府県であった【出典はユーグレナ】。 放送ではこうした体質の地域差からどうやって日本人が形成されたかという壮大な話が見えてくる、と解説された。 解説によれば、日本人の祖先としてよく知られているのは、縄文人と弥生人であり、それぞれ次のような特徴を持つ。
約10〜20年前から、遺跡の骨からDNAを調べる技術が発達し、いろいろなことが分かってきた。ホモ・サピエンスは約30万年前にアフリカで誕生し世界各地に移住していった。このうち縄文人の祖先がたどったルートについては、遺跡から出土した石器などの形態は北回り、骨のDNAは南回りに似ており、どちらをたどったのかは謎であった。太田さんの研究グループが東南アジア各地の遺跡からみつかった骨を分析したところ、ラオス古代人のDNAが縄文人に近いことが判明。またタイのマニ族と縄文人が共通の祖先を持つことが分かった。その後大陸から海を渡ってきた弥生人と交雑し、現在の日本人が誕生した。このように今の日本人は縄文人の遺伝子を色濃く引き継いでいる。 ヒトの遺伝子は約2万5000個であるが、現在の日本人が縄文人から受け継いでいる遺伝子は平均すると10%から20%。縄文人由来の遺伝的変異の数は人によって異なっており、その数を調べれば「縄文人度合い」が分かる。また縄文人度合いの地域差を調べたところ、明確な地域差があることが分かった。出典は、 ●Watanabe & Ohashi (2023).Modern Japanese ancestry-derived variants reveal the formation process of the current Japanese regional gradations. iScience,26, 【無料閲覧可能】 それによれば、縄文人由来変異保有率が高い(0.0195〜)府県は【北海道は未計測】、東日本から順に、 ●青森、秋田、岩手、宮城、福島、茨城、群馬、島根、沖縄 の9県となっていた。いっぽう縄文人由来変異保有率が低かったのは関西と四国であった。関西は縄文終期から弥生初期に人口が増えた地域であり、大陸からの入植者が多かったためと考えられる。なお島根が高い理由についてはよく分かっていないという。 ここでいったん私の感想・考察を述べさせていただくが、最初に示された「お酒に弱いという変異」や「中性脂肪がたまりやすい」という変異が都道府県によって異なるというのは驚きであった。縄文人由来変異保有率の違いも同様である。 私の素朴な疑問は、かつて縄文人や弥生人が特定地域に多く住んでいたとしても、明治以降の移住で各地に散らばり、今の時代に調査しても地域差には反映しにくいのではないかという点であった。じっさい私自身も東京で生まれて、その後、京都や長崎に移り住み現在は岡山に住み続けている。私の妻は北九州生まれだが、そうすると子どもたちはどうなるのか? 出身県ではなく、祖父母の代から同じ府県に住み続けている人たちだけを対象にすれば顕著な地域差は出るかもしれないが、紹介されたデータはそこまではチェックしていないように見受けられる。 いずれにせよ、縄文人由来変異保有率が体質を決めるというのであればそれで話はおしまい。県民性の違いは、ほんの僅かに縄文人由来変異保有率の差を反映しているかもしれないがそれが根本原因ではない。むしろ県民性があるとすれば、それぞれの都道府県における気候、伝統・習慣、や食文化などが反映しているのではないかと思われる。といっても過剰なステレオタイプ化は、血液型性格判断と同様で差別や偏見のもとになる恐れがあり要注意。 次回に続く。 |