【連載】チコちゃんに叱られる! 「ゆで卵の剥きやすさ」「『止まれ』の標識が逆三角形である経緯」
11月15日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この日は
- ゆで卵の殻がむきやすかったりむきにくかったりするのはなぜ?
- 「止まれ」が「逆三角形」なのはなぜ?
- 【こんなんのコーナー】体の横を壁につけると足が上がらない現象
- ハニワってなに?
- 【ひだまりの縁側で?】絵が上手になるには?
という5つの話題が取り上げられた。本日はそのうちの1.と2.について考察する。
まず1.のゆで卵については、放送では「鮮度のせい」であると説明された。卵の栄養やおいしさを研究している峯木眞知子さん(東京家政大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
- ゆで卵の剥きやすさに違いがあるのは卵の鮮度のせい。
- 簡単に言えば、古い卵は剥きやすい。新しい卵は剥きづらい。
- 卵は外側から卵殻、卵殻膜、白身、黄身という構造になっているが古い卵と新しい卵では白身が違っている。
- 新しい卵の白身には炭酸ガス(二酸化炭素)が大量にあり、これが剥きにくくなる原因となっている。新しい白身と古い白身を70℃のお湯で温めると、新しい白身のほうからは炭酸ガスが出てくることが分かる。
- 炭酸ガスは卵が鶏の体内にあるときに欠かせないもので、細菌から卵の内部を守っている。
- 卵の殻を電子顕微鏡で見ると約1万個の気孔が開いていることが分かる。産み落とされた卵は気孔から空気を取り込み、炭酸ガスを少しずつ排出するようになる。
- 炭酸ガスは水に溶けやすい性質があるので普段は白身に溶け込んでいる。ところが熱を加えると炭酸ガスが膨張し、白身が膨れ、卵殻膜の外に出ようとする。すると、白身は卵殻膜の網目を抜けて殻にくっつき、そのまま固まってしまう。
- 殻とくっついた白身により殻が剥けにくくなる。
- 新しい卵のゆで卵は、炭酸ガスを多く含んでいるため弾力がなく、おいしくない。放送では新しい卵と古い卵のゆで卵を30cmの高さから落とす実験が行われ、古い卵のゆで卵のほうが弾力性があることが確認された。
- 剥きやすいゆで卵にするには、卵を買ったあと約1週間冷蔵庫で寝かすだけでよい。
- じっさい、市販のゆで卵の多くも、炭酸ガスを抜くために冷蔵庫で約1週間保存したあとに調理している。
放送ではさらに、買ったばかりの新鮮な卵を剥きやすいゆで卵にする方法が2つ紹介された。
- 卵の丸いほうをスプーンで叩いてヒビを入れ、沸騰したお湯で10分茹でて冷水に入れる。丸いほうには気室があるの、上手に叩けばで中身が出ることはない。炭酸ガスの多くはヒビから抜ける。また冷水には白身を縮める効果がある。
- ヒビを入れずに卵を茹で、卵の4分の1が隠れるように水を入れた容器(タッパーなど)に卵を入れて約10秒間振る。殻と白身の間に亀裂から水が入り込み白身を剥がす役割をする。
放送は以上であるが、そもそも私が殻付きのゆで卵を食べたことが殆どない。海外旅行先で昼のランチBOXにゆで卵が入っていたことは何度かあるが、剥きにくかったという記憶は無いのでそれなりに上記のような処置がされていたものと思われる。いずれにせよ、殻の剥きやすさが白身の炭酸ガスの量によって決まるということは、人生70+α年にして初めて知ることができた。
続く2.の「止まれ」の道路標識の形が逆三角形になっている理由であるが、放送では「ほかのみんなが丸くなったから」が正解であると説明された。道路や橋の歴史に詳しい高橋良和さん(京都大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。なお高橋さんは「カーブミラーが丸いのはなぜ?(2024年3月3日)にも登場。さらに又吉直樹のヘウレーカの2019年12月18日放送『オススメ!京都の新名所は鴨川の“橋”!?』にも出演されており、2019年12月25日の日記にその時のメモ・感想が残っていた。
- 現行の道路標識は全部で96種類あり、丸や四角、菱形が殆ど。
- 中でも歩行者の安全を守るために特に重要な標識として『止まれ』と『徐行』の2つだけは逆三角形の形をしている(標識令で定められているもの)。
- 『止まれ』の標識は、1950年、道路標識令が全面改正された時に追加された。最初は八角形であり、その中に「一時」、「STOP」、「停止」という文字が3行にわたって記されていた。
- 1950年当時、禁止標識や指導標識は四角形、注意喚起を表す警戒標識は菱形であった。そのため八角形の「止まれ」はひときわ目立つ存在だった。
- 終戦以来、交通量の増加に伴い交通事故も戦後から10年で増加。そこで取り入れたのがアメリカの標識。当時の日本はアメリカを中心としたGHQの占領下にあり、そのため進駐軍が理解できるようにと、アメリカの標識が採用された。その中で唯一、アメリカの「止まれ」にあたる『STOP』の標識は特に重要な標識として位置づけられ、1935年のアメリカの交通マニュアルにおいても
●STOP signs are classified separately from other regulatory signs and are given a distinctive shape, for the reason that violation of them is extremely hazardous.
という記述がある。
- 10年後の1960年、『止まれ』はそれまでの黄色から赤色に変更された。1954年にアメリカで「黄色から赤色」改定された影響を受けたものと考えられる。『止まれ』は信号の赤色と同じ赤色を使うべきだという考えは以前よりあったが、赤色の塗料は色褪せやすいため黄色が使われていた。その後塗料の品質が良くなったことで赤色へと変更された。日本の標識のなかでも『止まれ』の背景だけが赤色だったため、さらに目立つ存在になった。
- 1963年、道路標識の形や区分が大幅に改定された。
- 1964年開催の東京オリンピックで大勢の外国人が行き交うことを予想し、道路標識の国際化に向けて調査が行われた。その中で、四角い標識は道沿いの建物や広告看板と同化しやすいことと、同じ面積では円形に比べて四角形のほうが小さく見えることから、規制標識が円形に変更されることになった。
- ところが他の標識が円形になったことで、八角形の『止まれ』も円形に見えて目立たなくなってしまった。そこで、当時、西ドイツが「最も視認性が高い」と採用していた逆三角形になった。その経緯は1963年発行の『警察学論集』に、
●「一時停止」の標識については、(中略)特に他の標識と区別するため、ドイツで採用している最も視認度の高いと認められる不安定な形状の頂点を下に向けた逆正三角形とすることに決定したのである。
と記載されている。これにより『止まれ』は、丸型の他の標識と区別され目立つ存在になった。
- 逆三角形は『徐行』の標識にも採用されている。
- なお、西ドイツでは1953年から逆三角形の『HALT』(止まれ)が使われていたが、1971年からは国連標識にならい八角形・背景赤色に白字で「STOP」と書かれた標識に再改正された。日本では逆三角形のトマレが定着していたため変更されなかった。
ここからは私の感想・考察になるが、まずこの番組の次回予告を見た時に私は、
●『止まれ』が逆三角形になっている理由は、普通の三角形は「こちらに進め」という矢印を連想させるため一時停止と矛盾する形になっているからではないか?
と考えたが、上掲の説明を見たところでは、逆三角形が「不安定な形状の頂点を下に向けていて視認性が高い」というのがその理由になっており、「こちらに進め」というような誘導を避けたためではないことが分かった。
道路標識の話題としては2023年12月15日初回放送のチコちゃんの放送で、
●なぜ道路標識の人は帽子をかぶっている?
という話題が取り上げられたことがあった【2023年12月17日の日記参照】。この時は標識の図柄のみに注目されたが、横断歩道の標識の形が上部が三角形、下部が長方形で全体としての五角形になっている理由については何も解説されなかった。ネットで検索したところこちらに詳しい説明があったが、形については特に説明はなかった。
こちらに一覧されているように、日本、アメリカ、ドイツ、国連の道路標識の形は今でもずいぶんと違いがあるようだ。逆三角形は今では日本だけかと思ったが、リンク先を見るとアメリカでは「YIELD(優先道路あり)」に逆三角形が使われているようだ。こちらの情報によれば、
●ポイントは、日本の一時停止とは違って、車が来ていなければ止まらずに進んでよいという点。見通しがいい場所などで、合流する道路に車がいないのが明らかなのにいちいち停止すると、後続車に追突されるかもしれません。
ということなので注意が必要。
中国の道路標識はこちらに掲載されていたが、日本の一時停止に相当するのは八角形に「停」の文字となっていた。また逆三角形の形をしたものには「譲れ」というのがある。こちらによれば、アメリカの「YIELD」と同じ意味らしい。中の文字は「譲」の簡体字。
あと、今回の放送では全く言及されなかったが、一時停止標識には「止まれ」だけの文字が書かれたものと、「止まれ」の下に「STOP」と書かれたものがある。これについては、こちらに説明があり、
●2020年東京オリンピック・パラリンピックの際に東京都が2017年7月から導入をはじめ、全国各地に順次導入されています。
ということであった。
次回に続く。
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