【連載】チコちゃんに叱られる! 「付せん」の仕組みと歴史
昨日に続いて、12月20日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
- 「ジングルベル」のベルってなんのベル?
- 時間はどうやって決めている?
- 「付せん」を何度も貼ったりはがしたりできるのはなぜ?
という4つの話題のうち最後の3.について考察する。
放送では、「付せん」を何度も貼ったりはがしたりできるのは「無数の小さい球でくっついているから」が正解であると説明された。付せんを開発した化学メーカーの道念雅子さん&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。なお放送では化学メーカーの名前は伏されていたが、放送で使われている画像の提供元からスリーエムジャパンであると推察できた。
- 顕微鏡で付せんの粘着部分を拡大すると球のようなものがたくさん並んでいる。この球の形こそが何度も貼ったりはがしたりできる理由。
- 一般的なシールなどの粘着部分は滑らかな表面をしており、粘着剤に弾力があるので紙のデコボコに入り込んで紙としっかりかみ合うことで剥がれにくくなる。いっぽう付せんの粘着剤は小さな球なので、何度貼ってもきれいに剥がせる。
- 付せんの小さな球は変形して貼り付き、はがすときに元に戻ろうとする。
- 小さな風船を並べてデコボコした面に上から押し当てると風船はデコボコの形に合うように変形する。これと同じようなイメージで、付せんを貼る場合、上から押すと球状の粘着剤が変形して紙状のデコボコに入り込むため、接着する面積が増える。
- 一般的なシールも付せんも紙にくっつく原理は同じだが、剥がす時が違う。付せんを剥がそうとして引っ張ると粘着部分は元の球の形に戻ろうとするため、くっつく部分が小さくなることではがれやすくなる。
- 付せんの粘着剤はたくさんの球からできているのでしっかり貼れるが、それぞれの球の粘着力は弱いため貼った紙にダメージを与えずきれいに剥がすことができる。
以上が付せんが何度も貼ったり剥がしたりできる仕組みであった。放送では続いて開発の歴史が紹介された。
- 小さな球の粘着剤は1968年、アメリカの化学メーカーの研究員、スペンサー・シルバーが偶然に発見した。
- スペンサー・シルバーは、強く剥がれにくい粘着剤を作ろうとした過程で、「粘着力は弱いけど、よくくっつき、簡単に剥がせる」という、それまでに無かった不思議な粘着剤を作り出した。
- スペンサー・シルバーは、この粘着剤の使い道はないか?と社内からアイデアを求めたが、使い道はなかなか見つからなかった。
- 5年が経過したある日、同じ研究員だったアート・フライから相談を持ちかけられた。毎週教会で賛美歌を歌うフライは、小さな紙切れをしおりにして賛美歌集のページに挟んでいたがすぐに落ちてしまう。そこで糊のついたしおりの開発を思いついた。
- 1980年、スペンサー・シルバーとアート・フライは、糊付きのしおり「付せん」を誕生させた。翌年にも日本で発売された。
- 貼ったり剥がしたりできることで、付せんの用途はメモやしおり以外にも広まった。
- 2010年代、付せんを窓にはる「付せんバトル」が流行した。
- 2011年、フランスで大手ゲーム会社のスタッフが、色違いの付せんを組み合わせて窓に貼ることでピカチューなどの日本のゲームキャラクターを描いた。1980年代以降のゲームキャラはもともと小さな四角の点で描かれたドット絵で表現されていたため、付せんの組合せによるイラストが作りやすかった。
- するとその会社の向かいにある銀行のオフィスが反応し、付せんを組み合わせた別のキャラクターを窓に貼った。
- その後、パリ市内のビジネス街のビルの窓にさまざまなキャラが描かれるようになり、世界各地のメディアが報道し社会現象になった。
- アメリカ・ニューヨークのビルの窓には、キャラばかりでなく、「HI」や「SUP?(元気?)」といった挨拶ことば、大がかりなイラストが登場するようになった。
- 付せんメーカーの(アメリカ)本社では、この流行に対応して大量の付せんを無料で提供した。
- こうして付せんを通したコミュニケーションが流行したが、ビルに観客が集まりすぎるという理由で管理会社からの申し入れにより一週間ほどで終息した。最後は「マイクドロップ」のイラストであった。
- バトルで使われた付せんは綺麗に改修され、退役軍人に感謝を伝えるメモ用紙として再利用された。
ここからは私の感想・考察になるが、粘着剤つきの付せんは私の小中高、学生・院生時代にはまだ登場しておらず、勉学などで活用することはできなかった、栞の代わりにページの隅を折り曲げる習慣もあったが、いちど折り曲げてしまうと元に戻らず、図書館の本などでは大迷惑であった。【なお、ウィキペディアによれば、
図書館では蔵書に付箋を使用しないよう利用者に求めているところもある。これは、長期間の保存を前提としている資料を傷めてしまうのを防ぐためである。資料を傷める理由としては、付箋を剥がす際に表面を剥ぎ落としてしまう場合があるほか、はがしたときに残った糊が本の劣化の原因になることが挙げられている
とのことであり、ページを折り曲げることの代用にはならないようだ。
ということで粘着剤つきの付せんを本格的に使うようになったのは、専任職に就いてから後のことになるが、主な用途としては、
- 卒論・修論・博論などで、コメントする必要のあるページに貼り付け。
- 整理箱や引き出しなどで、仮収容する際の見出しとして貼り付け。
ということになる。上記2.は退職後でも室内の引き出し等の仮分類に活用している。仮分類とは書いたが、そのまま正式なラベル代わりに貼ったままにしておくことも少なくない。
この先、加齢により物忘れがひどくなりそうなので、どこに何をしまったのかを示すために付せんを活用する頻度が増えそうだ。さらに認知症にでもなれば、トイレの場所にも「トイレはここ」といった大きな付せんを貼る必要が出てくるかもしれない。
今回の放送を通じて貼ったり剥がしたりできる付せんの仕組みについては理解できたが、類似の疑問として、
- 粘着テープはなぜ自分自身に粘着しないのか?
- マスキングテープななぜ簡単に剥がせるのか?
といった疑問が出てくる。ま、放送で取り上げられなくても、ウィキペディアを参照すれば大体のことは分かるが。
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