じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 1月10日の朝はよく晴れ、日の出を眺めることができた。東の空が明るくなり始めた頃から双眼鏡で新アトラス彗星C/2024 G3 (ATLAS)の観測を試みたが、残念ながらそれらしき光の筋を見つけることはできなかった。

2025年01月10日(金)




【連載】NHK『ダークサイドミステリー 神秘の古代ミステリー 徹底検証!日本・ユダヤ同祖論(2)日本語とヘブライ語の類似性?

 昨日に続いて、2024年11月29日に再放送された表記の放送についてのメモと感想【初回放送は2023年7月13日】。

 放送では「いさら井はイスラエル」、「鳥居の赤色は羊の血由来」、「狛犬は玉座の脇のライオン」に続いて、日本語にはヘブライ語と発音や意味がそっくりの言葉があるという例として以下のような語が紹介された。「/」の左の平仮名表記が日本語、「/」の右の片仮名表記がヘブライ語。
  1. 訛る なまる/ナマル
  2. 帝 みかど/ミガドル
  3. 皿 さら/セイル
  4. 凍る こおる/コオル
  5. 土 つち/ツィトゥ
  6. 言葉 ことば/キタバ【「書き物」という意味
  7. 憎む にくむ/ニクム 【「復讐する」という意味】
  8. 声 こえ/コル
  9. 困る こまる/コマル
  10. 泣く なく/アナカー
  11. 眠る ねむる/ネム
  12. 軽い かるい/カル
  13. こう/コヴこう 【「このように」という意味】 
  14. 辱め はずかしえ/ハデカシェム
  15. 構う かまう/カマル 【「同情を寄せる」という意味
  16. 肩 かた/カタフ
  17. 鎖 くさり/ケセリ 【「つながり」という意味】
  18. 測る はかる/ハカル
  19. 積もる つもる/ツボル
  20. ありがとう/アリガド 【「私は幸運」という意味】
  21. 登る のぼる/ノボー
 放送の別の画面では「死ぬ/シナー」、「匂い/ニホヒ」、「いつ/イツ」、「密/ミツ」、「商う/アキナフ」、「黙る/ダマム」、「終わり/アハリ」、「火傷/ヤケド」、「金/カネ」、「晴れ/ハレ」、「取る/トル」、「曲がる/マガル」、「皮/カファ」、「辺り/アタリ」、「草/クシュ」などが挙げられていた。さらに「宿る」が「ヤドゥール」、「滅ぶ」が「ハラヴ」、「あなた」が「アタ」、「話す」が「ダベル」、「明らかにする」が「バレル」が取り上げられていた。

ここまでの放送内容を鵜呑みにすると『日本・ユダヤ同祖論』はいかにも本当らしく思えてしまうのだが、放送ではここから先、以上の全てについての否定的な理由をきめ細かく紹介していた。

 まず、冒頭でも紹介された『ヤーレン ソーラン』の「ソーラン」はイタリア語の「ソロ」からきた(ヘブライ語にとっての)外来語。古代イスラエルから伝わったとするには時代が離れすぎると指摘された。
 また『かごめかごめ』の歌詞は1つ1つの単語を抜き出せばヘブライ語に似た音声になる部分があるが、文法的には品詞の順番がデタラメになって意味をなさない。ヘブライ語の通訳や翻訳を専門としている谷内意咲さんは「【『かごめかごめ』のヘブライ語の歌詞として広まっているのは】似ている言葉をピックアップして意味をなんとなくつなげているだけ」だと指摘した。
 ヘブライ語に日本語によく似た単語が見つかる1つの理由は、ヘブライ語の動詞が一人称、二人称(男女)、三人称(男女)、現在形か(男女)、未来形か(男女)によって細かく変化することにあるという。上掲の『宿る/ヤドゥール』について言えば、「ヤドゥール」は主語が三人称(彼・彼女)の未来形であり、過去形の三人称であれば主語が彼なら「ダル」、彼女なら「ダラー」となる。他にも「アドゥール(私は宿るだろう)」、「タドゥール(あなたは宿るだろう)」、「ダルティ(私は宿った)」、「ダルタ(あなたは宿った」など68種類に活用する。1つの単語がこれほど多様に変化すれば、その中には偶然日本語と同じ発音をする語が見つかっても不思議ではない。
 谷内さんは、日本語とヘブライ語の類似性について、次のように述べておられた【要約・改変あり】。
一番の問題点はネット上【での議論】が主なので、しっかりと検証できる、反論できる人がいない。ヘブライ語の専門家が何人いるのかは存じ上げていないが、そんなに多くはない。そういう方たちがこれをなぜ取り上げないかというと、学術的には相手にされていない説だから。





 ここからは私の感想・考察を述べさせていただくが、日本語と他の言語でよく似た音声になるケースとしては、以下の3つが考えられる。
  1. 「ママ」、「パパ」などの赤ちゃん言葉。こちら参照。
  2. 漢語由来
  3. ポルトガル語、オランダ語などの外来語
  4. 全くの偶然的一致
 このうち1.は赤ちゃんが発声できる解剖学的構造が人類共通であるためと考えられる。こちら参照。このほかブーバ/キキ効果により類似した言葉が生まれる可能性もある。
 2.については中国語との共通性。但し同じ漢字表記でも発音はかなり異なっている。日本語と韓国語の間でも漢語由来でよく似た発音をする語がある。あやふやだが『冬ソナ』のドラマの中では、韓国でも記憶は「キオク」、約束は「ヤクソ」と言っていたような記憶がある。またベトナム語にも日本語と似た発音をする単語がたくさんあるという【こちら参照。
 3.については『天ぷら』はポルトガル語の「テンポーラ(temporas)」が語源であるという説などが有名。
 4.については今回の放送でも、日本語と英語の偶然の一致として、
  1. 「名前」と「name」
  2. 「坊や」と「boy」
  3. 「そう」と「so」
  4. 「買う」と「buy」
  5. 「道路」と「road」
  6. 「設定」と「setting」
といった例が挙げられていた。なお上記4.で「買う/buy」のどこが似ているのかと思ったが、音読みの「買」が似ているという意味らしい。もっともこれは大和言葉ではないし、「売」も「buy」と同じ発音になるので例として妥当かどうかは何とも言えない。「道路/road」や「設定/setting」も大和言葉ではない。

 余談だが、高校生の頃、英単語がなかなか覚えられずに困っていたところたまたま古本屋で『学習心理学応用英語記憶法 : 初級・中級・上級別8000語』という本を見つけ、あまり見かけない単語の記憶に役立てたことがあった。その中にはダジャレに近いような音声の類似性を利用した記憶法も含まれていた。もっとも、そうやってABC順に単語を覚えていってもアルファベットの終わりのほうから始まる単語まで覚えきれるわけはなく、私の場合は結局『試験に出る英単語』だけで十分と判断し、それだけを徹底的に記憶することになった。それでも入試時の英語試験は80%取れていたので「シケ単で十分」という判断は結果的に正しかったことになる。

 もう1つ余談だが、私がお世話になっていた某先生が定年退職後にトルコ語(チュルク語)と日本語の類似性に興味を持ち、かなりの資料を収集していた。私の職場にトルコ語の専門家がいたのでその話を紹介させていただこうとしたことがあったが相手にしてもらえなかった。言語学の専門家から言えば、単に音声が似ているというだけの資料は全く意味をなさないようだ。

 次回に続く。