じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 1990年頃の変額保険の試算書。保険料を60万払い込んだ場合、48年後には
  • 運用実績が9%の場合:死亡保険金2391.1万円、解約払戻金1702.6万円
  • 運用実績が4.5%の場合:死亡保険金317.3万円、解約払戻金225.1万円
  • 運用実績が0%の場合:死亡保険金314.89万円、解約払戻金20.4万円【30年後】
になると試算されていた。なお、画像はあくまで試算であって、私がじっさいに契約した内容ではない。
 この表の凄いところは、運用実績を9%、4.5%、0%という3通りで試算していたこと。低金利時代のいま、同じ試算表を示したら誇大広告として指導を受けることになりそうだが、当時は4.5%ぐらいの運用は当然だと思っていた。
 なおこの試算をした生命保険会社はその後経営破綻し、別会社に引き継がれた。それとともに死亡保険金や解約払戻金は一方的に引き下げられ、少なくとも解約払戻金として受け取ると不利になる状態が続いている。昨年来、日経平均がすでにバブル期の最高値を超えている中、まことに不本意な運用であり、私はこのことをもって「生命保険はぼったくり」という固い信念をいだくことになった。

2025年03月20日(木)




【連載】最近視聴したYouTube動画(26)年金トークの梅子さんに何を話すか(1)就職は「6浪」/個人年金/変額保険

 2月11日から始めた連載。今回から年金生活インタビューの話題を取り上げる。2月11日にリンクさせていただいた動画は、 の4本であったが、それ以外のチャンネルを含めて毎日1〜2本は視聴させていただいている。私の関心事は、年金がいくらかということよりも、同じ世代の人たちがそれまでにどんな苦労をされ、いまをどう生き抜いているのかということにある。

 それぞれの方の体験談は大変参考になるし元気づけられるが、そもそも私がインタビューを受けたとしても、そんなにスラスラとは喋れない。そこで、いつ訊かれても大丈夫なように、以下に回答内容をメモしておくことにする。と言っても、私が喋る内容で他人様の役に立ちそうな情報はそれほど多くはない。ポイントは、
  1. 個人年金のメリット、デメリット
  2. 大学教員の人生は楽じゃない
  3. 国家レベルでの年金政策は、金額や財源がどうだということではなく、「お金とは何か」という根本に立ち返って考えるべき
という3点にあるかと思う。

 ということで、以下、私がインタビューされた時の回答内容を以下に記す。なおインタビューの質問内容は、

梅子の年金トーク!

に準拠させていただいた。但し、「梅子さん」は「桃子さん」に置き換えさせていただいた。


年金の種類と受取額


  • 【桃子さん】いまの年齢を教えてください。
  • 72歳と5ヶ月になります。
  • 【桃子さん】何歳ぐらいまでどんなお仕事をされていましたか?
  • 65歳まで大学教員をしていました。
  • 【桃子さん】大学の教員っていうのは、教授ということですか?
  • そうですね。定年退職の時点では教授でした。
  • 【桃子さん】年金の受給額を教えてください。
  • 私がもらっているのは、老齢基礎年金と厚生年金合わせて月に20万ちょっと。介護保険の天引きで手取りは19万円台です。
  • 【桃子さん】大学教授の年金ってもっと多いと思ってましたが。
  • いや、教授といっても、何歳から常勤職に就いたのか、何歳まで勤め上げたのかによって変わってきますよ。天才数学者なんかで30歳そこそこで教授になった人なら遙かに多いかと思います。また、私は国立でしたが、私立大の教授は基本給がもっと多いし定年が70〜75歳くらいになるので2倍以上もらっているかもしれません。
  • 【桃子さん】ということは、お兄さんは就職したのが遅かったのですか?
  • あっ、『兄さん』と呼ばれると何か気持ち悪いので、よろしければ『隠居人さん』と呼んでください。でもって私が常勤職に就いたのは34歳からでした。28歳で大学院を出てから6年間待たされたので「6浪」と同じことですね。20歳から大学院を出るまでは国民年金の納付は免除されていましたが、そのぶん年金額は減らされますよね[]。厚生年金、当時は共済年金でしたが、これも常勤職に就いてから65歳までの32年分に限られています。退職金も勤続月数で決まるのでかなり少ない。大学院の時にもらっていた奨学金も大学院を出てから5年以内に教育・研究職に就いていれば返済免除という制度があったのですが、6浪で1年オーバーしたため、48歳までかかって全額返済しました。ま、奨学金は本来は返すべきものだと思いますが。
    学生に国民年金への加入が義務づけられたのは平成3年4月からで、平成3年3月までは、学生は国民年金に任意で加入できることとなっていました。 なお、任意加入しなかった期間については、老齢基礎年金の年金額には反映されませんが、受給資格の有無を判断する際には、合算対象期間として計算の基礎とされます。
  • 【桃子さん】就職で「6浪」となったのは何かご事情があったのですか?
  • いや、好んでそうなったわけではありません。大学教員というのは、前任者の定年退職や転出などでポストが空いた時に、それぞの大学で個別に公募されるのが普通です。公募があると全国から何十人もの人が応募し、審査を経てそのうちの1人だけが採用されます。残りの人には「不採用通知(いわゆるお祈りメール)」が送られますね。私は確か13通もらっています。もっとも就職が決まっていない「7浪」や「8浪」などの先輩も10人近くおられたので、自分だけが取り残されているという不安感はありませんでした。とはいえ就職が遅くなればなるほど年金額には響く。
  • 【桃子さん】大学院を出てから何年間も就職できないというのは当たり前のことなんでしょうか?
  • 研究分野にもよるかと思います。あと、私は1952年生まれで団塊世代の下の世代にあたるんですが、団塊世代の先輩たちが先に常勤ポストを占めてしまったために一時的に空きポストが無くなっていた可能性もあるかもしれません。
  • 【桃子さん】「6浪」されていた時はどうやって収入を得ていたのですが?
  • 大学や専門学校での非常勤講師をやっていました。非常勤なので厚生年金はありません。他に、塾講師とか、家庭教師をやっている人もいました。また6年目にはようやく有給の特別研究員に採用されましたが、これも厚生年金はありません。
  • 【桃子さん】先ほど、老齢基礎年金と厚生年金合わせて月に20万ちょっとだと言われましたが、それだけで生活していらっしゃるのですか?
  • ええと妻が老齢基礎年金を満額もらっています。他に、個人年金の収入が3つほど。NISAによる退職金などの資産運用もありますが、今回は非公開とさせていただきます。
  • 【桃子さん】奥さんの老齢基礎年金と隠居人さんの個人年金を合わせれば月38万円ぐらいになりますかね。とすると、2022年の生命保険文化センターが行った「ゆとりある老後生活に夫婦2人で必要な生活費」と言われる月額約38万円に達しますね。
  • 数字の上ではそうなんですが、今のところ妻が受け取っている老齢基礎年金は貯めておいてもらうようにしています。というのは、私が先に死んだ場合、個人年金のほうはその途端に打ち切られてしまいます。そうすると妻の生活費は自分の老齢基礎年金と遺族厚生年金だけになるのですが、合計しても20万円には達しません。ちなみに遺族厚生年金というのは私がもらっている厚生年金の3/4になるそうですが、厳密には厚生年金のなかの報酬比例部分の3/4なんで厚生年金全体の3/4よりはもっと少ない。なので、今住んでいるマンションの管理費・修繕積立費や車のメンテ、駐車場代などの出費、また妻が将来介護施設に入ればそれなりにお金がかかる見込みなので、せめて今から貯めておいてもらうことにした次第です。
  • 【桃子さん】個人年金はどういう種類のものに入られていたのですか?
  • 財形年金保険(終身、逓増型)、団体積立終身保険(個人年金保険料控除適用型)、10年確定年金の3種類です。最初の2つは終身年金、3つ目は75歳で打ち切りとなります。
  • 【桃子さん】YouTube動画では、個人年金は損だとか、受け取るなら一括のほうがいいと指摘している方もおられますが。
  • こればっかりは、契約した時の社会・経済情勢によっても変わってくると思われます。今のような低金利の時代では、保険会社に頼るよりは自分で資産運用をしたほうがいいというのはもっともなご意見ですし、また今では、雑収入(その他)である個人年金収入が増えると国民健康保険や介護保険料がその分増えるので、さっさと一括で受け取ったほうがいいというご意見もあるようですが、当時は介護保険なんて無かったので考慮もできませんでした。いま話題の新NISAはもちろん旧NISAさえ無かった。また株取引といっても証券会社に電話して売買するしか方法が無く現職時代にそんなことできるわけがない。結局、どこかの金融機関にお任せにして老後に備えるほかは無かったのです。

財形年金保険について

  • 【桃子さん】財形年金保険は契約してよかったと思いますか?
  • 半分よかった、半分は失敗、というところですかね。
  • 【桃子さん】よかった点はどういうところですか?
  • まず、銀行や証券会社ではなく生命保険会社と契約したのは大正解でしたね。財形年金の説明を見ると、利子等非課税の限度額は、
    • 預貯金など … 財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄合わせて元本(預入額+元加利息)550万円まで利子等非課税
    • 保険など … 払込額 385万円まで利子差益非課税
    というように非課税枠に大きな違いがあります。銀行や証券会社の扱いでは、利息分を含めて550万円を超えた分は課税されてしまうのですが、保険会社は払込額で非課税枠が決まっているので、例えば385万円払い込んだ後で300万円の利子差益がついたとすると合計685万円分が非課税になります。銀行や証券会社に訊いてもこんなことは教えてくれませんがね。
  • 【桃子さん】でも、払込385万円に対して300万円も利子がつくなんていうことはあり得るのですか?
  • いや、かつてはそういう時代もあったんですよ。かつては、利付国債や定額貯金の利率が8%を越えていた時もあったし、この財形年金について将来の受取額の試算の説明を受けた時にも「このまま8%が続くことは無いとしても4.5%を下回ることはないでしょう」などと言われても疑わなかったほどでした。
  • 【桃子さん】そのまま高金利が続くと信じていたのですか?
  • いやそれでは経済が成り立たない。いずれ低金利時代が来ると予想していたので、とにかく高金利時代のうちにできるだけたくさんお金を払い込みました。最初の頃は毎月10万円、非課税枠が埋まりそうになったら毎月1000円といった具合。こうすれば払込額の累計は長方形に近くなります。毎月1万円ずつの場合は直角三角形型になるのでその約2倍の利子がつくことになりますね。もちろん毎月10万円も払い込んでいたのでは生活ができないので、そのぶんは貯金を取り崩していました。
  • 【桃子さん】で、じっさいはどうなったんですか?
  • 結局、払込額と利子差益分で合計600万円台になりました。高金利が続いていたら1500万〜2200万円になるはずだったのでそれに比べれば期待外れでした。これが半分失敗という意味です。
  • 【桃子さん】先ほど、財形年金保険は「終身、逓増型」で受け取っておられると言われましたが、これはどういうことですか?
  • 60歳以上70歳以下の契約応当日になると支払いが開始されるのですが、これには、「確定年金」と「終身年金」のどちらかを選べます。終身年金はさらに「定額型」、「逓増型」、「前厚型」から選べます。「逓増型」というのは最初の年は他の型より低額ですが、毎年1.05倍ずつ増えていきます。
  • 【桃子さん】それは凄いですね。最後は何百万円にも増えるんですね。
  • いや、人間には寿命がありますから。だいたい平均寿命まで生きていたら定額型と合計受け取り額はほぼ同じになる計算だったと思います。早く死ねば損をします。逓増型を選んだのは、損得計算というより気持ちの問題ですね。「長生きすればするほどたくさん受け取れる」逓増型のほうが、「10年経ったら終了」というような有期の確定年金よりは夢があるじゃないですか。
    但し「終身年金」で注意しなければならないのは本人が死んだらそれで打ち切りということです。私が生きている限りは安心ですが、私が妻より先に死んだあとは一銭ももらえなくなります。公的年金のような遺族年金の制度はありませんので。だから、自分が生きている時だけの人生設計ではなく、私が先に死んだ後の妻の人生設計もちゃんと考えておかなければなりませんね。

その他の個人年金について/変額保険は大失敗

  • 【桃子さん】いまお話しいただいた財形年金保険のほか、団体積立終身保険(個人年金保険料控除適用型)と10年確定年金を受け取られていると聞きましたが、これは契約してよかったと思われていますか?
  • これらはいずれも、節税対策として契約したものです。保険料控除を枠いっぱい活用する範囲で契約しました。
  • 【桃子さん】財形年金保険と比べるとどういうメリット、デメリットがありましたか?
  • 財形年金保険は完全非課税であり、確定申告は不要。いっぽう、これら2つは確定申告上は雑所得(その他)となるので、たくさん受け取れば住民税、国民健康保険料、介護保険料が上がる可能性があります。なのでそういう資金があったら自分で資産運用をしたほうがいいというのはもっともなご意見かと思います。といっても現職時代には自分で資産運用できるような知識も時間も無かったので、結果的には保険会社に頼らざるを得ませんでした。
  • 【桃子さん】じっさいの運用実績はどうでしたか?
  • 団体積立終身保険(個人年金保険料控除適用型)については、最終的な払込金額総額を100とすると、利息を含めた積立原資は121となっていました。つまり21%が利息分となります。10年確定年金のほうは、年金受取額÷必要経費で計算すると208となるのですが、こんなに運用成績がいいはずはないので、どこかで勘違いしているのかもしれません。ちなみに「団体積立終身保険」の受取方法はいろいろ選択できたのですが、財形年金保険と同じ理由で終身型としました。但し逓増型という選択肢は無かったので、毎年同じ額だけ受け取っています。
  • 【桃子さん】ずっと保険の話を伺いましたが、以上とは別に生命保険は入られていますか?
  • 若い頃には、掛け捨ての保険に入っていました。これは、私が万が一事故で死亡した時に妻や子どもたちが生活できるようにという配慮です。保険というのは本来、「確率は小さいがそれが起こると困る」という事象に対してかけるものです。なので高齢になった今は子どもたちも経済的に独立しており私が死んでも困ることにはならないので保険に入るのは無意味。医療保険特約なども不要。医療費は基本的に国民健康保険のおかげでまかなえるし、万が一入院しても高額医療費の限度枠や補助で何とかなります。月々割高な保険料を払うぐらいならそのぶん資産運用に回したほうがよろしい。
  • 【桃子さん】では死亡保険なゼロですか?
  • いや、そうありたいところなんですが、解約払戻をすると損をするという理由で塩漬けになっている「一時払い変額保険」があります。1990年頃に契約したもので、もちろん当時は家族を支えている立場にあったので、死亡保険としての意味はありました。しかし当時は高金利の時代だったので、運用実績が9%とか4.5%になることはあり得る話だと思っていました。そうなれば解約払い戻しをしてもお得になるはず。
  • 【桃子さん】財形年金保険と同じように期待外れになりましたね。
  • いま考えると年利9%が何十年も続いたとしたら大インフレになるのは必至で、そんなことは中高生でも分かるはず。当時はみんなどうかしていたんですね。でもって、けっきょく自分が生きているうちの解約払戻は断念。もともと変額保険というのは、インフレに強い、つまり物価が上がっても株価も連動して保険の受取額も増える宣伝されていたはずなのに、どうしてこうなったのか? 保険会社が全く信用できなくなりました。生命保険会社からはいまでも「人生設計」とかパートナーとかサポートといった宣伝が送られてきますが、しょせんは営利目的の企業。外交員も自分の営業成績を上げることばかり考えているように思いますね。いや、それが悪いといっているのではありません。保険会社が慈善団体なわけありませんし。


次回に続く。