【連載】最近視聴したYouTube動画(28)年金トークの梅子さんに何を話すか(3)お金とは何か/資産形成は砂上の楼閣/外国人に頼ってはダメ
昨日に続いて年金インタビューの話。もし、
●梅子の年金トーク!
からインタビューを受けたらどんなふうに答えるか。突然マイクを向けられてもうろたえないように、あらかじめ考えをまとめておく。但し、「梅子さん」は「桃子さん」に置き換えさせていただいた。
お金とは何か?から考え直す
- 【桃子さん】年金制度について思うことだったり、国に言いたいことがあれば教えてください。
- 国家レベルでの年金政策は、「お金とは何か」という根本に立ち返って考えるべきだと考えています。個人レベルだったら、年金の額が足りているかとか、何歳からもらっているのか、というように今のお金が安定した価値を持っていて、その人の一生においては価値はそれほど変わらないという前提でトークが行われていますが、国全体について、また50年、100年後まで見据えた政策を検討するということになれば、まずはお金とは何か?という根本から考え直すべきです。
- 【桃子さん】それは少子化対策とか、財源問題ということですか?
- いや、もっと根本的な問題です。例えば、国民全員に1人あたり1億円を配ったら、貧困の格差も高齢者の生活もすべて解決すると思いますか?
- 【桃子さん】いえ、それではとてつもないインフレになるでしょう。
- そうなんですよ。お金の問題というのは、どうやったらお金がお金として機能するのか、から考える必要があります。
ここでたとえ話として、世界大戦で人類滅亡の危機に陥ったなか、100人の男女が乗った船が絶海の孤島に漂着したとします。船には100億円の現金が積まれていました。またあり得ない話かもしれませんが、その孤島は自然に恵まれていて、衣食住を満たす豊富な資源があったとします。但し、世界大戦が起こってしまったため、この先何十年経っても他の世界と連絡をとることはできません。さて、この時、船に積んでいた100億円を皆に1億円ずつ配ったとします。これで100人の男女の生活は安泰になったと言えるでしょうか?
- 【桃子さん】いえ、そうはなりません。100億円はもはやタダの紙切れで、何の価値も無いからです。
- その通り。問題は、なぜその100億円が価値を持たなくなったのかということです。その孤島が日本の領土でないからとかそういう理由ではありません。もともとお金は、他の人からサービスを受けたり、衣食住に必要な物品を貰った時に、その代価として支払うものです。しかし孤島では、お金を必要としない生活もあり得ます。どんな生活が思い浮かべられますか?
- 【桃子さん】自給自足なら必要ないですね。あと、独裁者が現れたとか...。
- そうですね。100人の島民がいくつかの集団に分かれてそれぞれ自給自足で生活した場合はお金は要らない。また、独裁者が暴力的手段で島民を働かせるような体制になればお金は機能しません。ということで、お金がお金として機能するためには、
- 他者から何らかのサービスを受ける。その対価としてお金を支払う。
- 他者に何らかのサービスを提供することで、その対価としてお金を受け取る。
という2つの行動がうまく循環する必要があります。なおここでいう「サービスの提供」というのは、『労働』と同じ意味です。他者の手助けばかりでなく、他者が必要とするモノを生産し供給する行動を含みます。要するに、お金というのは、
●他者に働いてもらうためのツール
もう少し乱暴に言えば、
●他者を働かせるツール
ということになります。但し、賃金労働ではなく、「助け合い」として行われる場合があります。家族や小規模の集団などがそうですね。お小遣いはあるとして、いちいちお金のやりとりはしません。
- 【桃子さん】他者のためになるサービスとためにならないサービスはどこが違うのですか?
- 他者が必要としているかどうかですべてが決まります。水を必要としている砂漠では水を売るビジネスが成立します。至る所から湧き水が出ている村では成立しません。空気を売るビジネスは成立しません。但し空気の薄い標高5000mの高地に行けば酸素ボンベを売るビジネスが成立します。
- 【桃子さん】お話は大体分かりましたが、これまでの内容と年金はどう関係してくるのですか?
『100人の島』の例を使ってもう少し話を続けたいと思います。島に漂着した100人がみな若くて健康であるうちは、全員が労働に参加しお金を回していくことができるでしょう。しかしそのうち年老いて、他者にサービスを提供できなくなったという人が出てきます。その際にはどんな対策が考えられるでしょうか。
- 【桃子さん】家族や若者たちがお世話をするとか...。
- それが理想かもしれませんが、すべての人に家族が居るとは限りません。それともっと残酷なケースもあり得ます。以下、代表的な対策を挙げてみると、
- 姥捨山対策:一定の年齢に達した島民は姥捨山に捨てられる。
- 徴税対策:若者から税金を取りたてて高齢者の生活のサポートにあてる。これは結果的に、徴兵制を施行し、一定時間・期間を高齢者のために尽くすことを義務づけるようなもの。
- 蓄財対策:島民たちは若くて元気なうちに、できるだけ多くの農地、住宅、漁船などを占有し、老後はそれらを他者に貸し出して賃貸料を受け取ることで他者からサービスをしてもらう。
- 【桃子さん】姥捨山はいやですね。
- 棄老にまつわる伝説は世界各地にありますが、どこまで広がっていたのかは分かりません。高齢者を捨ててしまえば確かにその村の生産性は高まるでしょう。しかしいずれは自分自身が高齢化して捨てられる対象になってしまいます。ま、年金制度に関して世代間対立を煽る動きもありますが、若者からお金を取り過ぎていると主張している人もいつかは高齢者の側に立つことになります。
- 【桃子さん】いま挙げられた「徴税対策」は高齢者への給付金や政府による年金加算、「蓄財対策」のほうは個人年金とか、個々人が一般に行っている老後の備えた資産形成のようなものでしょうか。
- そうですね。呼称はいろいろ変わるかもしれませんが、結局は「徴税対策」か「蓄財対策」のどちらかに行き着くことになるかと思います。
何が間違っているか?
- 【桃子さん】「お金とは何か?」を考え直すことで、どのように見方が変わってくるのでしょうか?
- 『100人の島』の例にも挙げたように、100人それぞれに1億円を配ったからといって生活が安泰になるわけではありません。少し前、『老後2000万円問題』というのが話題になりましたが、これだって本質は変わりません。いまの若い世代が全員2000万円以上を貯めたら老後は安泰になると思いますか?
- 【桃子さん】介護士さんや医療関係者や関連施設が確保できなければ2000万円では足りなくなるでしょうね。
- その通りです。本質は、20年後、30年後に、どういうサポート体制が構築されているか、それを担う人員がちゃんと確保できているのかということです。2000万円あれば大丈夫だとか、いや5000万円でも足りないといった金額に関する議論はどうでもよい。強いて言えば、他のお年寄りも相対的に資産が多ければそのぶん手厚い介護が受けられるというだけです。2000万円という金額自体は本質ではなくて、その額が金融資産保有額の上位10%以内であるか、それとも平均並みであるかといった相対的な評価が重要になります。
- 【桃子さん】新NISAによる資産運用も同じでしょうか。
- 新NISAというのは、「家計の安定的な資産形成」をさらに推し進めていくことを目的にした新制度だそうです。しかし、そもそも「資産形成」とはなんでしょうか。外国の株式を買い集めた『オルカン』と呼ばれるインデックスファンドが人気だそうですが、日本国民がみんなそれを購入して1人あたり1800万の資産を形成したら遊んで暮らせるようになりますかね? 日本で暮らす以上は、日本のどこかで食料が生産される必要があるし、移動するためには交通機関が必要、病気になれば病院にかかる必要があります。つまり誰かに働いて貰わなければ安定した生活は成り立ちません。そういう労働力を外国人に頼るというのはもってのほかです。またいずれ自国の労働条件が有利になれば、日本までやってきて働いてくれる外国人はいなくなってしまうでしょう。そもそも、海外の株式で構成されるファンドというのは、それぞれの国の人たちが働いてくれるからこそ成立しているわけです。極言すれば、海外の人たちを働かせることで値上がり益や分配金を得ているというようなものです。そんなことに頼っていたら、いずれ日本は労働生産性がゼロになって崩壊するでしょう。
- 【桃子さん】ではどうすればいいのでしょうか?
- 老若男女を問わず日本国民がちゃんと働いて、外国人労働者に頼らなくても自力で生産活動を行い、またお互いにサービスを提供しあえるような体制を作ることでしょう。もちろん当座の困難を乗り切るために給付金とか年金を増やす対策が必要になることはあるでしょうが、本質的な対策にはなりません。お金を配るのではなく、働ける人、といっても嫌々働くのではなくて働く意欲があるという人のことですが、そういう人たちが生きがいを持って働けるような雇用機会を100%保証することが第一ではないでしょうか。もちろん要介護のレベルが上がった時には一方的にサービスを受けるだけにはなりますが。しかし要介護となった人たちだって若い時には1つ上の世代を支えていたのだから、時間差で考えればそれもまた互助互酬になっているはずです。
- 【桃子さん】長い時間ありがとうございます。お礼にクオカードかおせんべいか洗剤を差し上げたいのですが。
- 前から疑問に思っていたんですが、この3品って、どうやって選んだんでしょうかね。ま、いただく側があれこれ要望するものでも無いんですが。いちおう、嵩張らないものということでクオカードをいただいておきます。
次回に続く。
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