じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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【インドネシアその3】成田での前泊

 今回のツアーは成田空港の集合が8時半だったため、東横インに前泊した。このホテルはコロナ前にも何度か利用したことがあったが、当時は本館と新館のうち一方で洋食、もう一方で和食が提供され宿泊者は好きなほうの朝食会場を選ぶことができた。
 今回はそのような区別はなく、代わりに軽食会場(5:30〜7:00)と朝食会場(6:30〜9:00)に分かれていた。また朝食メニューは以前より【東横インのサービス朝食としては】かなり充実していた。
 写真下は私のチョイス。炊き込みご飯、味噌汁、サラダいっぱい、ヨーグルト2杯、コーヒー。なお肉類や魚類なども各種提供されていたが、私は普段から朝食時には肉類は食べていないので少々貧弱になっているが、ヨーグルト食べ放題は有難かった。

2025年06月23日(月)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「なぜエレベーター待ちはイライラする?」(その1)「検証実験」の問題点

 6月22日に続いて、6月13日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
  1. 驚くことを「目が点になる」と言うようになったのはなぜ?
  2. なぜエレベーター待ちはイライラする?
  3. なぜ将棋の駒はあの漢字?
という3つの話題のうち2.について考察する。放送では「エレベータ待ちがイライラするのは倉庫の入口がガバガバになって体感時間がたまりすぎるから」が正解であると説明された。

 放送ではまず、「電車待ち」や「信号待ち」に比べて「エレベーター待ち」のほうが待ち時間が長く感じられること、その結果としてイライラする、ということについて検証実験が行われた。方法は以下の通り。
  • 実験参加者は6人の男女。実験目的は知らされていない。
  • 脈拍からイライラの度合いを測る装置を装着
  • エレベーター、電車、信号、という3つの条件で、1分間の経過時間をどのくらいの体感時間として感じたのか、数値で回答してもらう【質問は「どのくらい待ったと感じましたか? 時間を記入してください。例:○○秒、○分○秒】
  • 1分後のイライラ度を計測。
その結果、条件別の体感時間については以下の通りとなった。
  1. エレベーター待ちでは6人中3人が、物理時間の1分より長く感じた。実際の回答は、参加者の並び順に、2分、1分30秒、1分30秒、50秒、1分、40秒。
  2. 電車待ちでは6人中3人が、1分より長く感じた。実際の回答は、1分、1分10秒、2分、30秒、1分15秒、30秒。
  3. 信号待ちでは6人中1人が、1分より長く感じた。実際の回答は、45秒、50秒、1分30秒、45秒、1分、1分。
  4. 平均すると、エレベーター待ちは1分15秒、電車待ちは1分4秒、信号待ちは58秒、となり、エレベーター待ちが最も長く感じられていた。

 また1分後の条件別のイライラ度は、
  1. エレベーター待ちでは、参加者の並び順に0.22、9.37、4.71、3.81、1.37、2.29。
  2. 電車待ちでは、0.72、12.5、0.87、0.82、2.51、0.25。
  3. 信号待ちでは、1.78、1.76、0.58、0.53、0.78、2.52。
  4. 高いイライラ度を示す2.0超えは、エレベーター待ちが4人、電車待ちが2人、信号待ちが1人であり、エレベーター待ちが最も多かった。
  5. 平均すると、エレベーター待ちは3.63、電車待ちは2.95、信号待ちは1.33、となり、エレベーター待ちのイライラ度が最も高かった。
以上から放送では、エレベーター待ちの体感時間が最も長く、またイライラしていたことが分かったと説明された。

 ここまでのところでいったん私の感想・考察を述べるが、デモンストレーション実験とはいえ、上記の実験結果を「エレベーター待ちの体感時間が最も長く、またイライラしていた」と証拠づけるのは少々問題があるように思う。

 まず、体感時間やイライラ度の数値はかなりの個体差があり、平均値で比較すると極端に数値が大きかった人の影響を受けやすくなってしまう。
 もしエレベーター待ちの体感時間が最も長く感じられるという法則性があったとすれば、それぞれの参加個人の比較(個体内比較)において、
●エレベーター待ち体感時間>電車待ち体感時間、エレベーター待ち体感時間>信号待ち体感時間
という大小関係が示されるはずだが、実際にそのような結果になったのは、6人中3人のみであった。ノンパラメトリックの検定ではこの程度の傾向は有意差無しと判定されるだろう。
 イライラ度の比較も同様であり、平均値での比較は極端に大きな数値が反映しやすくなってしまう。じっさい、各参加者ごとの個体内比較で
●エレベーター待ちイライラ度>電車待ちイライラ度、エレベーター待ちイライラ度>信号待ちイライラ度
という大小関係を示した参加者は、6人中2人に過ぎず、ノンパラメトリックの検定で有意差が出るほどの違いではなかった。

 上掲の実験は、以上のほか、以下のような問題を含んでいる。
  • このWeb日記でも何度か指摘しているが、「1分間という物理時間をどのくらいの時間として体感したのか?」というような実験を行う前提としては、参加者が日頃から「これは1分間だ」という「物差し(=体内ストップウォッチ)」を持っている必要がある。しかし、分刻みの調整を余儀なくされている電車運転士、1分間の測定に慣れている検査技師とか、1分以内に次の手を指さなければならない将棋棋士、...などを除けば、実験参加者にとっての「1分間」は未体験の抽象概念に過ぎず、体感時間との比較の基準にはなっていない可能性がある。これは例えば、「この棒の長さは1フィートより長いと思いますか、短いと思いますか?」という質問と同様。1フィートに慣れていない人には答えようがない。
  • 上掲の実験の「エレベーター待ち」、「電車待ち」、「信号待ち」というのは、待っている途中での経過時間の一部を切り取った物理時間を体感時間と比較したものであった。しかし、一般に待ち時間を長いと感じるかどうかというのは、待ち始めてからエレベーターや電車が到着するまでの時間、あるいは信号が青に変わるまでの時間に対しての主観的評価である。この場合、3者の待ち時間は絶対的な長さが異なっており、単純に「エレベーター」、「電車」、「信号」という抽象概念では比較できない可能性がある。
    • エレベーターは、ホテルや私の住んでいるマンションでは通常は1〜2分程度の待ち時間で済む【例外的に、駅のホームと改札階、あるいは地上の歩道と歩道橋上部を昇降するエレベーターは、利用者を増やさないためなのかやたらと待たされる場合があるが】。
    • 電車の待ち時間は運行状況により変わる。東京の地下鉄銀座線などは最頻時は2分間隔で運転されており、そもそも待つという感覚が生じない。いっぽう私がたまに利用する津山線は1時間に1〜2本となっており、しかも新幹線からの乗り継ぎが全く配慮されていないためしばしば長時間待たされることになる。このような「電車待ち(津山線は非電化だが)」を「エレベーター待ち」と比較することは殆ど意味が無い。
    • 交差点や横断歩道での信号待ち時間は、一般に(銀座線などを除けば)電車待ちよりも短いがエレベーター待ちよりは長い。道路の混雑状況によりかなりの差があり、一概に体感時間が長いとか短いとは言いがたい。
     以上に挙げたほか、体感時間の長さは、待っている人がどれだけ急いでいるのかにも依存する。デモ実験の参加者は別段急いでいるわけではない。ストレスを感じたとしても、それが待っていることによるストレスなのか、それとも実験に参加していて行動が制約されていることへのストレスなのかは区別がつきにくい。

     ちなみに私の場合、定年退職前は授業や会議の開始時刻ギリギリになることがあり、岡大西門交差点などでは信号待ちの体感時間がより長く感じることがあった。いっぽう、定年退職後、海外旅行中に乗り継ぎ待ちをしている時などは数時間以上であってもそれほど長いとは感じない。これは特に急いでいるわけではないためと考えられる。
     なお、飛行機の搭乗中に感じる時間の長さの違いとして、
    • 昼間のフライトでは、通路側や中間席のほうが窓際席よりも時間を長く感じる。
    • 夜間のフライト中は、フライトマップ(航路図)を見ている時のほうが時間を短く感じる。但し眠っている時は別。
    があるように思う。その理由は、今回の放送の解説内容に一致している。


 次回に続く。