じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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【インドネシアその2】岡山空港での見送りと富士山

 今回のツアーは成田発限定だったため、岡山からは特典航空券を使用して羽田に向かった。岡山空港ではJALの見送りを受けた【写真上】。
 梅雨空のため機上からの景色は雲ばかりであったが、駿河湾上空のあたりでは歌詞ピッタリに「頭を雲の上に出し」ている富士山を眺めることができた。
 ちなみに今回のジオウォークでは、ムラビ山、ブロモ山、イジェン山、パトゥール山という4つの火山を訪れたほか、富士山そっくりの形の山を含めて10座以上の活火山を眺めることができた。

2025年06月22日(日)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「『所さんの目がテン!』と「『目が点』の由来」/さだまさしの血液型ステレオタイプ喧伝歌

 旅行のため執筆が遅れてしまったが、6月13日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この日は、
  1. 驚くことを「目が点になる」と言うようになったのはなぜ?
  2. なぜエレベーター待ちはイライラする?
  3. なぜ将棋の駒はあの漢字?
という3つの話題が取り上げられた。本日はこのうちの1.について考察する。

 さて、「目が点」の疑問については1999年に取り上げたことがあった。
 当時の疑問の発端は『所さんの目がテン!』であり、1989年10月1日から放送開始、2019年には放送回数1500回を記録。今でも毎週日曜日朝7時から放送されているという【岡山地方でもRNCで放送されているが6月22日朝は『スギちゃんの気まぐれ一人旅』という別番組になっていた。但し6月29日の同時間帯は『目がテン!』が放送される見込み。

 上掲の日付の日記では、目がテンに関するいくつかの解釈が披露された。
  • 【私の当初の解釈】「テン」とは「10」の字。つまり、眉毛が「1」の字で「0」が目玉。目玉を大きく開けてビックリしているので「10」の字に見える。
  • 娘が言うには「テン」とは「点」のこと。逆に目玉を点のように小さくして驚いている様子だという。このほか、いささか漫画チックになるが、目玉が漢数字の「十」のようになるという解釈もあった。
  • 赤尾@わかば日記さん:(・.・) (''? (・o・)など、顔文字辞書にもあるとおり、びっくりする、あせるなどの状態を「目が点になる」と呼ぶのだと思います。コミックで主人公などがふだんは目がパッチリしているのに、驚いたときに目を点のように描画する表現技法に由来している……
  • めぐみ@せっけん王国さんからの情報:「左翼闘争が活発だった頃、”ゲマインシャフトとゲゼルシャフト”で高名な”テンニーズ”の理論を引用されて、”共産主義”が到達する”共同社会”は”人が性善”でないかぎりありえないと論破されて、目が廻る程のショックを受け、自分の目は”面積”を持たない”点”であったとの反省と併せて”目がテン”という驚愕事の表記を転向した活動家の多くが使用するようになった」という掲示板の書き込みあり。
ということで、目がテンとは何かという疑問は、少なくとも1989年10月1日放送開始の『所さんの目がテン!』当時から繰り返し考察されてきたようである。

 今回の放送では、まず『広辞苑 第五版』にも、

め【目・眼】が点になる:驚きあきれる。呆然とする

という説明が記載されていることが引用された。ちなみに第五版は1998年11月11日に発行されており、この時点で「目がテン」は「目が点になる」であって「目が10になる」や「目が十になる」ではないこと、「驚く」、「あきれる」、「呆然とする」という意味の日本語として定着していることが示唆される。

 続いて「福田幾太郎が使い始めてさだまさしが広めたから」が正解であると説明された。眼科学を研究している大野京子さん(東京科学大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
  1. 人は驚くと本当に目が点になる。
  2. ふだん目の玉は茶色の虹彩の割合が大きく、中心の黒い部分である瞳孔の割合が小さいため、目は茶色に見えている。
  3. しかし人は驚くと交感神経が興奮し、瞳孔が大きくなって黒色の部分が大きくなる。さらに交感神経によってミューラー筋がまぶたを引き上げ、白目の見える部分の量が増えるので目の黒い玉の部分が減って目が点のように見える。
 しかし以上はそのような現象があるというだけのことで、言葉の由来ではない。続いて放送では「目が点になる」の語源について20年以上研究している画家の岡田武さん&ナレーションにより以下のような解説が行われた【要約・改変あり】。
  1. 原点は谷岡ヤスジにより1970年に連載が開始された『ヤスジのメッタメタガキ道講座』という漫画が語源だという。ちなみに谷岡ヤスジは「鼻血ブー」の生みの親でもある【3月17日の日記参照】。
  2. 但し谷岡ヤスジの「点表現」は、驚いた表現として描いたものではなく、「怒って大暴れする直前の表現として描かれていた。
    • 最初に登場した「目が点」は、主人公のガキ夫が楽しみにしていたスルメを女の子に食べられてしまったシーンで描かれており、その直後ガキ夫は「なにをやっちょんじゃワリャ ひとのスルメを―」と怒りを爆発させる。
    • 病院で医者と女性患者がチヤホヤしている別の描写でも、まずガキ夫の目が点になり、次のコマでは「それでもイシャか ワリァ!!」と怒りを爆発させている。
  3. ジャズピアニストの山下洋輔は『風雲ジャズ帖』(1975年)で、谷岡ヤスジの描写を「点目」と表現した。
    谷岡ヤスジの漫画でいえば、ぼく達は全員かなりの“点目(てんめ)”状態なわけで、“点目”の奴が怒った時ほどおそろしいことは無い。
    但し「目が点になる」という表現は使ったことはない。
  4. 「目が点になる」を初めて使ったのはギタリストの福田幾太郎が『嗚呼!!花の応援団』(1975年連載開始)」という漫画を読んで使い始めたと言われている。『花の応援団』の主人公の青田赤道が井戸の前に立った時突然幽霊が表れ青田赤道の目が点になったという描写があった。
  5. 1975年連載開始の『花の応援団』の「目が点」は1970年連載開始の谷岡ヤスジの「点表現」の影響を受けていると思われるが、谷岡ヤスジが「怒る直前」を描いたのに対して『花の応援団』では「驚きの表情」が「目が点」として描かれていた。
  6. 歌手のさだまさしは以下のように証言している。
    さだまさしさんがソロになったのは1976年頃、その時のバンドのリーダーだったギタリストの福田幾太郎さんが、「漫画で驚いて声が出なくなった時に点々と描かれるのが面白い」と言うので、僕らが驚いて声が出なくなった時に、バンドの楽屋で「目が点になってる」と言い出した。それが日常語になり、ファンに広まったり、ラジオで「目が点になった話」という表現が使われ出したりした。
  7. さだまさしさんが31歳の時の『恋愛症候群―その発病及び傾向と対策に関する一考察 -』では、

    ●開き直らねば何もできず ただ暗く爪をかみ 目が点になってため息ばかりの A型

    という歌詞がある。
  8. さだまさしさんの楽屋に訪ねてきた笑福亭鶴瓶さんを通じて「目が点」表現は芸人仲間にも広まった。
  9. 1998年に発行された広辞苑第五版には「目が点になる」という言葉が始めて掲載された。さだまさしさんは、「ことばが生まれる瞬間に立ち会ってた」と感動したという。

 ということで、「目が点」の由来はよく分かった。

 谷岡ヤスジさんの作品は私の好みではあるが家には一冊もない。これを機会に古本市場などで購入したみようかと思う。
 さだまさしさんについては、お名前は存じ上げているものの、もともと歌には興味が無いためどのような作品を発表されているのかについては殆ど知らなかった。『恋愛症候群―その発病及び傾向と対策に関する一考察 -』のような血液型性格判断の喧伝歌があるということは今回初めて知った。この歌詞の影響で血液型ステレオタイプが広まり、差別や偏見で悩まれた人たちも少なくないと思う。さだまさしさんにはぜひとも、血液型ステレオタイプを広めたことへの自己批判の歌を作ってもらいたいものだ・

 次回に続く。