じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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カタールからトビリシへの航路はどうなる?

 各種報道によれば、アメリカがイランの核施設に攻撃を行ったことへの報復だとして、イランは日本時間の6月24日午前1時半すぎ、中東カタールのアメリカ軍の空軍基地に対してミサイル攻撃を行ったという。
 カタールと言えば、2019年、コーカサス山麓フラワーハイキング(ジョージア・アルメニア)の際にドーハで乗り継ぎ。ドーハからトビリシに向かう途中、イラン上空を通過したことがあった。

 ロイターによれば、現状は以下の通り【抜粋】。
  1. シンガポール航空は状況が「流動的」だとし、ドバイ便については24日まで運休すると発表した。
  2. IAG(ICAG.L)傘下のイベリア航空の広報担当者は、22日と23日のドーハ便を運休したと明らかにした。それ以降の便について未定だという。
  3. エールフランスKLM(AIRF.PA)は22日と23日のドバイとリヤド発着便を運休した。
  4. フィンエアー(FIA1S.HE)は少なくとも24日までドーハ発の便を運休した。
  5. カザフスタンのエア・アスタナ(AIRA.KZ)は23日のドバイ便を運休した。
  6. 航路追跡サイト「フライトレーダー24」によると、IAG傘下のブリティッシュ・エアウェイズは22日のドバイとドーハ発着便をキャンセルしたが、23日に運航を再開する予定。
  7. ロシアとウクライナの空域も戦争によりほとんどの航空会社に閉鎖されているため、中東は欧州とアジアを結ぶフライトにとって重要なルートとなっていた。航空会社は過去10日間、カスピ海経由の北回りルートや、エジプト、サウジアラビア経由の南回りルートで迂回している。
  8. こうした長距離の迂回や欠航による燃料費や乗務員の人件費増加に加え、米国の攻撃による原油価格上昇を受け、航空会社はジェット燃料価格の高騰に直面する可能性がある。
  9. 紛争地域の付近を飛ぶ民間航空機は偶発的または意図的に攻撃される恐れがあり、航空会社にとって運航上の負担が大きくなっている。
  10. フライトレーダー24によると、ペルシャ湾上空でここ数日、全地球測位システム(GPS)の信号の受信妨害や偽のGPS信号を送るスプーフィングが「劇的に」増加しているという。GPS障害情報を提供するスイスのSkAIは22日、ペルシャ湾上空で24時間以内に150機以上の航空機がスプーフィングを受けたと発表した。
 そう言えば、先日のカナリア諸島ツアーの際、次回はジョージアに行くという方がおられたが、ちょうど本日=6月24日にトビリシからドーハ経由で帰国される日程となっている。無事に帰国されるようお祈りしたい。

追記]直近の迂回ルートを左下に追加した。

2025年06月24日(火)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「なぜエレベーター待ちはイライラする?」(その2)

 昨日に続いて、6月13日(金)に初された表記の番組についての感想・考察。本日は、
  1. 驚くことを「目が点になる」と言うようになったのはなぜ?
  2. なぜエレベーター待ちはイライラする?
  3. なぜ将棋の駒はあの漢字?
という3つの話題のうち、2.の感想・考察の続きを述べる。

 放送では、

「電車待ち」や「信号待ち」に比べて「エレベーター待ち」のほうが待ち時間が長く感じられ、その結果としてイライラする。

ということをデモ実験で示した上でその理由を解説していたが、昨日指摘したように、
  • 平均値の比較では飛び抜けて大きな値の影響を受けやすくなる。
  • 「電車待ち」、「信号待ち」、「エレベーター待ち」は、そもそも待ち時間の絶対的な長さに違いがあり、また、
    • 「電車待ち」と言っても、2分に1回運転されている東京地下鉄・銀座線と、1時間に1〜2本だけの岡山・津山線では待ち時間が大きく異なる。
    • 「信号待ち」と言っても、渋谷のスクランブル交差点と、交通量の激しい国道に設置されたボタン押し横断歩道の信号【←ボタンを押してもなかなか青に変わらない】では待ち時間が異なる。
    • 「エレベーター待ち」と言っても、ホテルのエレベーター【←何台も稼動しており比較的待たずに乗れる】と、駅のホームと改札階を昇降するエレベーター【なかなか動いてくれない】では待ち時間が異なる。
といった特徴がある。以上からみて、「エレベーター待ち」の体感時間やイライラ度を「電車待ち」や「信号待ち」と比較すること自体に無理があり、さらに「エレベーター待ち」を一括りにすることにも限界があるように思われた。ではどのように問題をたてれば良いのかということになるが、私の考えは、

あるエレベーターにおいて、待ち時間が長い、もしくは短いと感じさせる要因は何か?

というように置き換えることである。その際、「電車待ち」や「信号待ち」との比較は必ずしも必要ではないが、待ち時間が長い、もしくは短いと感じさせる要因に共通性があった場合は、3者をひっくるめて法則を一般化することができる。今回の放送でも、結局はこの方向に解説が進んでいるように思われた。




 前置きが非常に長くなってしまったが、心理学の観点から時間の感じ方について研究している一川誠さん(千葉大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
  1. 電車や信号待ちでも待ち時間は発生するが、それに比べるとエレベーター待ちは特にイライラする。それは体感時間が長いから。
  2. 体感時間には『注意ゲート』が大きく関係している。
  3. 人間は活動している間、脳内でパルスと言う神経信号が一定のペースで発信されている。
    • この信号は注意ゲートを通って体感時間を測るための倉庫のような所にたまっていく。
    • 注意ゲートは時間を意識しているかどうかによって開いたり閉じたりする。
    • 倉庫に溜まった信号の量に応じて時間を判断している。
    • 時間を気にすると注意ゲートが開きっぱなしになり、信号がどんどんたまっていく。物理時間は1分間でも、注意ゲートが開いていると1分間ぶんより多くの信号がたまり、体感時間は長く感じされる。
    • つまらない会議に出席している時は「早く終わらないかなあ」と思うことで注意ゲートが開きっぱなしになりそのぶん長く感じる。
  4. エレベーター待ちでイライラするのは悪条件が2つ揃っているため。
    • 予測ができず期待を裏切られる。電車は発車時刻が表示されており、信号は待ち時間のメーター表示ながあったり、車道側の信号が青から黄、赤というように変化するため待ち時間がイメージしやすい。一方でエレベーター待ちの場合、残り時間の表示がなく待ち時間が予測が不能。 さらに、1つ上の階に止まっているのでもうすぐ降りてくるかと思ったところで乗り降りが発生して停止し期待を裏切られることがある。この場合も時間に注意が向きやすく体感時間を長く感じイライラしてしまう。
    • 更に電車や信号は、目の前に電車が走っていたり、周りの人や車が動いているので、景色の視覚情報が多い。対して一方、エレベーターは扉しかないため時間に注意が向きやすい。

 ではどうすればエレベーター待ちのイライラを解消できるのか? 以下の方法が例示された【要約・改変あり】。
  1. 視覚情報を増やすことで時間経過に注意を向きづらくすること。例えばエレベーターホールに鏡を設置することで身だしなみチェックなどに気を配り時間に注意が向かない。
  2. エレベーター待ちの際に会話をかわすこと。会話は脳の集中力が必要であるため、注意ゲートが開きづらくなる。
  3. エレベーター以外の工夫例としてサービスエリアにある挽きたてコーヒーの自販機がある。自販機の窓が透明になっていて内部の製造工程が見えることで時間経過に注意が向きづらい。
  4. 病院などでBGMやラジオが流れているのも同じ理由。
 このほか「楽しく過ごしている」時や「テストに集中している」時に時間があっという間にたつと感じるのは、時間に注意が向かず注意ゲートが開かないので時間を短く感じる、と補足説明された。




 ここからは私の感想・考察を述べる。
 まず、『注意ゲート』とは何かということだが、ネットでザッと調べた限りでは、

Prospective and retrospective duration judgments: A meta-analytic review.

また一川さんの日本心理学会2018年大会の発表要旨としては、

空間的注意が持続時間知覚に及ぼす影響の検討

が見つかった。専門的なことはよく分からないが、『注意ゲート』というのは脳に実在する部位ではなく、仮設的なモデルであるように思われた。『注意ゲート』の開閉に影響を与えるとされる「注意」の量をコントロールすることで体感時間の違いが予測できればこのモデルは有用ということになる。但し、単に「時間経過にどれだけ注意を向けているのかによって体感時間が変化する」と主張するだけであれば、『注意ゲート』は冗長な概念になってしまう。このあたりは元の論文をちゃんと読んでいないので分からない。

 放送では、「視覚情報を増やすことで時間経過に注意を向きづらくすること」が待ちの体感時間を少な目する上で有用であると解説されていたが、この場合の「視覚情報を増やす」というのは、時間経過から注意をそらすような別の視覚刺激を提示するという意味のようだ。しかし、交通信号の待ち時間のメーター表示や内部の製造工程を見せるコーヒー自販機などは、むしろ時間経過を視覚化したものであり、時間経過のほうに注意を向けさせているように思う。ネットの接続が悪かったりWindowsの更新作業中に表示される砂時計ロゴ(もしくは回転ロゴ)なども、時間経過から注意をそらすのではなく、「作業が進行しています。フリーズしたわけではありません」という意味で表示されているのではないかと思われる。

 時間を気にしていると時間経過がとても長く感じることは、私自身も体験している。最も顕著なのは入学試験の監督をしている時で、受験生に「残り10分です」と伝えてからの10分間はとても長い。
 いっぽう時間以外の何かに注意を向けると体感時間が短くなるということもしばしば体験している。但し、例えば、映画館で1時間半の映画を観た後で館外に出た時には、映画館に居た時間がもっと長かったように感じる場合がある。同じ1時間半でも、映画の中でいろいろな刺激が次々と与えられているような場合は、何もせずにボーッと過ごしている1時間半よりも長く感じられるはずだ。
 さらに、ウォーキングやWeb日記執筆、買物など日々同じように過ごす一週間と、海外旅行に出かけた時の一週間では、旅行中の時間のほうが遙かに長く感じられる。これもまた、新たな体験が多ければ多いほどその期間が長く感じられるということを示しているように思われる。

 時間の過小評価・過大評価については、4月23日4月25日の日記でも、

●Time―a Journey Through Thousands of Years

という番組の感想・考察として取り上げたことがあった。

このほか、

ヒューマニエンス「“時間” 命を刻む神秘のリズム」

などでも取り上げているが、なかなか奧が深い。今回は全く言及されなかったが、室内照明の色も体感時間に影響を与えるようだ。


 次回に続く。