【連載】チコちゃんに叱られる! 「『君』ってなに?」/「君」と「さん」と「ちゃん」
7月25日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この日は、「祝!放送300回!72分拡大版スペシャル!」と題して、綾瀬はるか、笑福亭鶴瓶、本木雅弘という豪華メンバーが招かれていた。私は芸能界には関心が無くしかも失顔症の傾向があるため、毎回のゲスト回答者の方々のお名前は殆ど存じ上げていないのだが、さすがに今回のお三方のお名前はよく存じている。但し本木雅弘さんだけは、失礼ながらお顔を見ただけでは誰なのか分からなかった。おそらく、かつて出演されていた大河ドラマ『徳川慶喜』や『西遊記』ではそれぞれの役柄に変装されていて、ナマの本木さんのお顔と結びつかなかったためかと思う。綾瀬はるかさんはいま出演中の『ひとりでしにたい』の主人公を演じておられる。このドラマは妻が好んで観ているが、「一人で死にたい」というのは「夫に看取られずに死ぬ」つまり「夫のほうが先に死ぬ」ことを想定しているような気もする。いずれにせよ私自身は一人では死にたくない。
放送内容に戻るが、この日は、
- 「君」ってなに?
- なんで映像に音楽が加わるとより感動するの?
- 「トロフィー」ってなに?
- なんでややこしいのに同じ地名がたくさんあるの?
という4つの話題が取り上げられた。本日はこのうちの1.について考察する。
放送では人を呼ぶときにつける「君」は「吉田松陰が立場を超えてコミュニケーションをとれるようにしたことば」が正解であると説明された。数々の大河ドラマの時代考証を手がける歴史作家の山村竜也さん&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
- 松下村塾が多くの人材を輩出した理由は吉田松陰の教育方法にあった。
- 月謝(塾代)をとらなかった。これによりさまざまな家柄や立場の若者が通えた。例えば高杉晋作は武家、久坂玄瑞は医者、伊藤博文は下級武士の養子で元は農家出身だった。
- 生徒同士の討論を大切にした。立場の差、年齢の差、進み具合の差を超えて討論し、生徒たちの個性を伸ばした。
- 生徒同士の討論では、相手を呼ぶ時に、目上の人には「様」、目下の人には「殿」をつけるというように家柄・立場の違いが反映してしまい意見を言いにくい事情があった。
- そこで吉田松陰は、松下村塾で対等な立場と相手への尊敬の気持ちを込めた「君」づけで呼び合うことを決めた。
- その後明治時代には全国に学校がつくられた。夏目漱石の『坊ちゃん』では友だちのことが「君」づけで表記されている。この頃から書生たちが「対等で親密な仲間意識を表す新しい時代のことば」として「○○君」を使い始め、1903年の尋常小学読本に「○○君。おはやう。」という言葉が載ったことで全国の子どもに広まった。
- 「君」づけが初めに定着したのが国会だった。現在の国会でも議員を呼ぶときには「君」をつけている。『参議院先例録』の第二十章 四五〇には、
●議員は、議場又は委員会議室においては互いに敬称を用いる。
という記述があり、さらにやや小さい文字で、
●議員は、議場又は委員会議室においては互いに敬称として「君」を用いる。
と定められている。
- 1890年第1回帝国議会が開かれた時から、議長は発言者を君づけで呼んでいる。その最初の議長は松下村塾出身の伊藤博文だった。
- それ以降135年、国会では「君」づけで議員を呼んでいる。
- 【補足説明】吉田松陰は「君(きみ)」から「くん」という呼び名を考えついた。
- 【補足説明】自分を僕、相手を君と呼ぶことも吉田松陰が松下村塾で定着させた言葉だという。
- 【補足説明】昔は学校で男子は「君」、女子は「さん」づけで呼んでいたが、現在では全員「さん」づけで呼ぶことのほうが多いという。
ここからは私の感想・考察を述べる。
まず、国会議員が「君」づけで呼ばれることに関しては、1993年8月6日、社会党元委員長の土井たか子氏が衆院議長に就任し、「細川護熙さんを内閣総理大臣に指名することに決しました」と、「君」ではなく「さん」づけで呼んでいたことが印象に残っている。上掲の解説からみるとこれは『参議院先例録』には反していることになるが、土井たか子議長の発言は衆議院なので直ちには違反とは言えない。なおネットで検索したところ、こちらに衆議院と参議院の違いが紹介されており、
- 衆議院:衆議院先例集、衆議院委員会先例集
- 参議院:参議院先例録、参議院委員会先例録
というように呼称が異なるほか、衆議院先例集のほうはWeb公開されていないとのことであった。
次に、
●昔は学校で男子は「君」、女子は「さん」づけで呼んでいたが、現在では全員「さん」づけで呼ぶことのほうが多い。
という点であるが、私などはまさにその「昔」の典型であり、
- 同級生・下級生の男子は「君」づけ。
- 先輩の男子は「さん」づけ。
- 女子は先輩、同級生、下級生に関係無く「さん」づけ。
で一貫していた。この習慣は大学で学生を指導する時にも続いており、男子学生は「くん」づけ、女子学生は「さん」づけで呼んでいた。小さい子を呼ぶ時には「ちゃん」をつける。その名残で、自分の子どもや甥や姪を呼ぶときには30〜40歳代になっても未だに「ちゃん」をつけて呼んでいる。このことについてChatGPTに
●日本では、小さい子どもは「ちゃん」、ある程度成長すると「くん」や「さん」をつけて呼ぶ習慣がありますが、「ちゃん」づけで呼ばれるのは何歳くらいまでの子どもでしょうか?
と尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。
「ちゃん」づけで呼ばれる年齢に明確な決まりはありませんが、日本の一般的な習慣としては、以下のような傾向があります:
- ### ■ 一般的な目安:
* \*\*0歳?小学校低学年(?7?8歳)\*\*くらいまでは、自然に「○○ちゃん」と呼ばれることが多いです。
* 特に女の子はこの呼び方が長く続く傾向があります。
* 男の子は、小学校に入る頃から「○○くん」に変わることが多いです。
- ### ■ 小学校中学年以降(8歳以降):
**家庭や親しい友人関係では**、「ちゃん」づけが続くこともあります(特に女の子)。
**学校や公的な場では**、徐々に「○○くん」「○○さん」など、より形式的・年齢相応の敬称に変わっていきます。
- ### ■ 中学生以上:
* 学校や社会の中では、基本的に「○○さん」「○○くん」が一般的になります。
* ただし、**家庭内や幼なじみ、仲のよい人の間**では、大人になっても「ちゃん」づけで呼ばれる場合があります(例:「あっちゃん」「まいちゃん」など)。
- ### ■ 補足:性別による違い
* **女の子は「ちゃん」づけが長く続く傾向**があり、20代やそれ以上でも親しい関係であれば使われることがあります。
* **男の子は小学校に上がる頃から「くん」へ移行**するのが一般的です。
- ### ■ 結論:
一般的には、「ちゃん」づけは**小学校低学年(7?8歳)頃まで**が一区切りですが、性別や親密度、地域差などによって前後します。
次に、
●昔は学校で男子は「くん」、女子は「さん」づけで呼んでいたが、現在では全員「さん」づけで呼ぶことのほうが多いそうです。なぜそのように変わったのですか?
と質問したところ以下のような回答をいただいた。
ご指摘のとおり、かつて日本の学校では、**男子は「くん」**、**女子は「さん」**と呼び分けるのが一般的でしたが、現在では**性別に関係なく「さん」づけで統一して呼ぶ学校が増えてきています**。この変化の背景には、以下のような社会的・教育的な理由があります。
- ### ■ 1. **ジェンダー平等の推進**
* 「くん」と「さん」の呼び分けは、性別によって敬称が異なるため、**無意識のうちに性別による差別・役割分担意識を助長する**という批判が出てきました。
* 「男子=くん」はくだけた印象、「女子=さん」は丁寧・敬意、といったイメージの違いがあるため、**男女で違った扱いを受けているように感じる子どももいる**と言われています。
- ### ■ 2. **文部科学省の方針や指導**
* 文部科学省は明確な「呼称の指導」はしていないものの、学校現場での**ジェンダー平等教育**を推進しており、その中で**敬称の統一(全員「さん」)を実践する学校が増加**。
* 学校現場での「無意識のジェンダーバイアス」への配慮が進み、教師の呼び方にも反映されるようになりました。
- ### ■ 3. **いじめや差別の防止**
* 呼称が原因で**からかいや偏見の種になる**ことがあり、それを避けるために「さん」づけを採用するケースも。
* また、**LGBTQ+への配慮**としても、「性別に基づかない呼び方」の必要性が認識されてきています。
- ### ■ 4. **社会全体の変化**
* 職場などでも男女関係なく「さん」づけが一般化しているため、**学校でもそれに倣う流れ**があります。
* また、子ども自身も多様性や平等に敏感になっており、「男女で違うのはおかしい」と感じる子も増えてきています。
- ### ■ まとめ:
学校での敬称が「男子=くん、女子=さん」から、**性別に関係なく「さん」づけに統一**されつつあるのは、
- **ジェンダー平等**の意識の高まり、
- **教育現場での差別防止の配慮**、
- **多様性への理解の広がり**
が大きな理由です。
あと自分を「僕」と呼ぶことについては、私はたぶん中学・高校のことから「私」へ切り替えているが、いつ頃何をきっかけにそうしたのかは覚えていない。子どもの頃に書いた絵日記ではたいがい「ぼくは」からの書き出しになっている【こちらに6歳の頃の絵日記あり】。高齢者男性の中には日常会話の中で「ボク」とか「オレ」、「オイラ」などを使う人がおられるが、私は一貫して「ワタシ」を使っている。
次回に続く。
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