じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
【連載】チコちゃんに叱られる! 映像に音楽が加わるとより感動する理由/デフォルトモードネットワーク 7月25日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
放送では、映像に音楽が加わるとより感動するのは「音楽が意識を「自分」に向けさせるスイッチだから」が正解であると説明された。 音楽に関する脳研究を重ねてきた田中昌司さん(上智大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
ここからは私の感想・考察を述べるが、今回の放送は時間が限られていたせいか、はなはだ不十分な説明に終わっていたように思う。というのは、私が理解した範囲では、今回の説明は以下のように組み立てられていた。
上記の「D状態」とは「デフォルトモードネットワークが活動している状態」のことであるが、今回の説明ではその活動が何をもたらすのか殆ど説明されていなかった。また「音楽を聴くとD状態になることが分かってきた」といっても、どんな音楽でもそうなるのか、嫌いな音楽や、映像と無関係の場違いの音楽でもそうなるのかは何も説明されていなかった。なので、上記では「D状態」つまり「デフォルトモードネットワーク」という専門用語が使われることで権威づけされていたが、その用語を省き以下のように書き換えても情報的価値は変わらない。
要するに、「デフォルトモードネットワーク」という専門用語を使って説明しても、そのような専門用語なしで説明しても、説明力に差が無いということになる。 さて、そもそも「デフォルトモードネットワーク」とはどういうことなのか? 過去日記をざっと検索したところ、少なくとも2回、取り上げていたことが分かった。
「発達障害と脳」の最新研究! 計画的に行動できない、目の前のことを優先しがち……「ADHD」の背後にある「脳のしくみ」とは? という記事の2〜3ページ目でも言及されている。 さらに、デフォルトモードネットワークという脳活動の状態がADHDに関係しているという指摘もあります。人間の脳は、何も考えていないとき(安静時)でも、脳の複数の領域が同期して活動していることが知られており、この脳活動の状態をデフォルトモードネットワークといます。車のエンジンで例えたら、アイドリングしている状態です。 このように、『デフォルトモードネットワーク』に関する研究は日々進歩しており、素人の私がそのこと自体にケチをつけるつもりは毛頭ないが、いくら放送時間が限られていて十分な解説が困難であったからとはいえ、「映像に音楽が加わると感動する」理由を「デフォルトモードネットワーク」だけで説明するのは短絡的過ぎるように思われた。 そもそも、どんな音楽でも「音楽が意識を「自分」に向けさせるスイッチだから」というのであれば、例えば冬ソナのラストのシーンで日本の演歌、例えば『津軽海峡冬景色』を流したらより感動的になるはずだ【←実際は冬ソナの主題歌が流れている】。しかし実際は場違いだとして失笑を買うだろう。 そう言えば、いま観ている朝ドラ『あんぱん』の主題歌『賜物』はドラマの中身に合わないのではないかという声があったが、回を重ねるごとにドラマのイメージの一部になってきたような気がする。なお直近の7月25日放送の第85話ではついに嵩がのぶへの愛を告白し、2人が抱き合うシーンで終了となったが、その時の音楽は『賜物』のアレンジではなくもう少しシンプルなメロディとなっていた。最終回のラストシーンでは間違いなく『賜物』が流れるはずで、その時には賜物とドラマ内容との違和感を感じる人は殆どいなくなっているものと予想される。 次回に続く。 |