【連載】チコちゃんに叱られる! 「トロフィーの由来」/トロフィーとカップ/大相撲の賜杯
7月25日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
- 「君」ってなに?
- なんで映像に音楽が加わるとより感動するの?
- 「トロフィー」ってなに?
- なんでややこしいのに同じ地名がたくさんあるの?
という4つの話題のうち3.について考察する。なお、放送では「古代ギリシャ」というように表記されていたが、以下では「古代ギリシア」と記す【現在の国名、地名を表す時は「ギリシャ」とする】。
放送では、「トロフィーは敵から奪いとった武器をくくりつけたタワー」が正解であると説明された。古代ギリシアの研究をしている周藤芳幸さん(名古屋大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
- トロフィーの原形は古代ローマのレリーフにも描かれている。レリーフには敵から奪い取った鎧や盾をくくりつけた木の柱が描かれてる(=『トロパイオン』。
- 古代ギリシアでは、戦争に勝利すると敵の退却した地点に木の柱を立てて敵の鎧や盾などの戦利品をくくりつけてタワーのような紀念碑を建てる習慣があった。
- 古代ギリシアでは戦争の時、武器、特に盾を捨てて逃げるのはとても不名誉なことだと考えられていた。そんなことから敵が退却した場所をマークする紀念碑として敵の武器を利用した。つまりトロパイオンを建てることで敵に勝利をアピールする紀念碑だった。
- 古代ローマの時代になると、戦利品を持ち帰って自分の国の目立つところに展示することもあった。その紀念碑として神殿や塔などの建造物が建てられるようになった。
- こうしてローマ時代にはヨーロッパ各地に紀念碑の建造物(『トロパエウム』)が建てられた。
しかし、やがて時代がたつとともに、トロパエウムの文化は次第に失われていった。ところが、15世紀をピークとして起こった古代文明の復興『ルネサンス』をきっかけに、勝利の紀念碑(トロパイオン)や建造物(トロパエウム)が再び知られるようになった。その過程で『トロパイオン Tropaion』や『トロパエウム Tropaeum』の「Tro」を語源として『トロフィー Trophy』という現代語が生まれ、スポーツの勝者に与えられる記念品も『トロフィー』と呼ばれるようになった。またトロパエウムが勝利の象徴にふさわしいということでトロフィーの形にも反映された。円柱やてっぺんに人が乗っているトロフィーのデザインも建造物に原形がある。
ここからは私の感想・考察を述べる。
まず、『優勝トロフィー』という言葉ですぐに連想されるのが『優勝カップ』である。両者がどのように使い分けられているかChatGPTに尋ねたところ以下のような回答をいただいた。
「トロフィー」と「カップ」はどちらも勝者への栄誉を称える記念品ですが、その形状や使われ方には違いがあり、以下のように使い分けられる傾向があります:
- ### ?? **カップ(Cup)**
- * **形状**:取っ手のついた大きなカップ型の器(ワインカップのような形)
- * **由来**:中世ヨーロッパで、勝者に「祝杯をあげる」習慣から派生。実際に飲み物を注げる形だった。
- * **主な使用例**:
* **歴史あるスポーツ大会**に多い(例:サッカーの「ワールドカップ」「FAカップ」など)
* **チーム競技**や**団体戦**の優勝記念として用いられることが多い
* 長年続くトーナメント形式の大会に多い
- ### ?? **トロフィー(Trophy)**
- * **形状**:人型、塔型、彫刻風、盾型など、様々なデザイン
- * **由来**:「戦利品」を意味するギリシャ語 *tropaion* から。戦いや競技の「成果・栄光」を象徴する。
- * **主な使用例**:
* **個人競技**(例:テニス、ゴルフなど)や**芸術・文化のコンテスト**などに多い
* 一度きりのイベントやコンペティションで多用される
* カップより自由なデザインが可能なため、ジャンルに応じて多様な形が使われる
- ### ?? **使い分けの実際**
* **伝統や格式**のある大会ほど「カップ」を選ぶ傾向があります。
* **現代的で多様なイベント**では「トロフィー」が一般的。
* ただし厳密なルールはなく、**主催者の意図やブランドイメージ**で決まる場合が多いです。
- ### ? 補足
- * 一部では「トロフィー・カップ」と両方の言葉を使うこともあります(例:ゴルフの「クラレット・ジャグ」は見た目はカップ、名前はトロフィー)。
- * 日本語ではどちらも「優勝カップ」と呼ばれることがありますが、英語では明確に区別されることが多いです。
次に、
●『トロフィー』は古代ギリシアや古代ローマの『トロパイオン Tropaion』や『トロパエウム Tropaeum』に由来していると聞きましたが、勝者を称える『カップ』はいつどこから始まったものでしょうか?
と尋ねたところ以下のような回答をいただいた。
とても良いご質問です。
「**トロフィー**」が古代ギリシア・ローマの戦利品である「**トロパイオン(Tropaion)**」や「**トロパエウム(Tropaeum)**」に由来するのに対し、「**カップ(Cup)**」が勝者を称える記念品として登場するのは、もっと後の**中世ヨーロッパ**に入ってからです。
- ## ??「カップ」の起源と歴史
- ### ● 起源:中世ヨーロッパ(12〜15世紀頃)
* **騎士の武術競技(トーナメント)**や**祝祭**において、勝者に**実用的な銀製のカップ**が贈られたのが始まりとされています。
* このカップは実際に**飲み物(酒)を注いで使うことができた**ため、単なる記念品ではなく、**祝杯をあげる道具**でもありました。
* 特に**貴族社会**においては、**豪華な銀製や金製のカップ**を贈ることが栄誉とされていました。
- ### ● 発展:近世〜近代(16〜19世紀)
* 勝者に贈られる「**ゴブレット型の記念杯**」が次第に儀礼化し、競技のたびに授与される「**カップ型トロフィー**」へと発展していきました。
* 英国では特に\*\*乗馬競技(競馬)**や**クリケット、フットボール(サッカー)\*\*などで「Cup」の形で賞品が贈られることが定着しました。
- ### ● 有名な初期の例
* ?? **アスコット・ゴールドカップ(Ascot Gold Cup)**:イギリス競馬の伝統的トロフィー(創設1807年)
* ? **FAカップ(1871年)**:世界最古のサッカー大会の名称そのものに「Cup」が使われています
- ## ?? なぜ「カップ」だったのか?
* **酒を酌み交わす=勝利を祝う行為**が重視されていたため
→ カップは「祝福」「栄誉」「団結」の象徴だった
* 教会や王侯貴族の間でも、儀式において\*\*聖杯(chalice)\*\*を使う伝統があり、これが記念用の「カップ」にも影響
- ## ? まとめ:トロフィー vs カップのルーツ比較
| 種類 | 起源 | 時代 | 本来の意味 |
| ----- | -------------------- | ------ | ----------- |
| トロフィー | 古代ギリシア・ローマ(Tropaion) | 紀元前〜 | 戦勝記念、敵を倒した証 |
| カップ | 中世ヨーロッパ | 12世紀頃〜 | 祝杯・勝利を称える飲杯 |
さらに、
●明治以前の日本でも、勝者に対して、トロフィーやカップにあたるような記念品が贈られていましたか?
と尋ねたところ以下のような回答をいただいた。
とても興味深い問いですね。
結論から言うと、**明治以前の日本には西洋式の「トロフィー」や「カップ」に相当するものは基本的に存在しませんでした**。
しかし、日本には**勝者や功績を称える独自の記念品や栄誉の授与形式**があり、それが\*\*日本的な「トロフィー文化」\*\*と言える側面を持っていました。
- ## ?? 明治以前の日本における「勝者への記念・報奨」の形
- **武芸や競技での賞品(物品の授与)**
* **相撲**や**弓術(弓比べ)**、**馬術(流鏑馬、競馬)**などの競技で、勝者には「褒美」として**金銭・衣服・刀・扇子・布類などの実用品**が与えられることがありました。
* 例:江戸時代の**神社奉納相撲**では、勝者に「勝札」や「巻物」、時には**米や酒樽**が授与された。
- **表彰の道具:感状・賞状**
* 戦功や学問、芸事などで優れた者には「**感状**」や「**賞状**」が与えられました。これは**文字による名誉の記録**であり、現代の賞状や表彰状に近い性格を持ちます。
- **記念の「器物」や「名誉称号」**
* 武士の戦功や忠勤に対しては、「刀」「鎧」「陣羽織」「馬具」「茶器」などの**高級品が下賜**されることがありました。
* 名誉称号(例:「○○守」「御用○○」など)も、名誉の象徴であり、**実質的な栄誉のトロフィー**とみなせます。
- ## ?? 代表的な例
| 種類 | 授与の場面 | 内容 |
| ------------- | -------- | ------------------ |
| 神社奉納相撲の褒美 | 勝ち抜きの力士に | 扇、米、酒、衣など |
| 戦功への報賞(戦国?江戸) | 武将に | 刀、陣羽織、感状 |
| 学問・芸事の試験 | 優秀な者に | 巻物(証書)、書物、名入りの硯箱など |
| 庶民の武芸大会(寺社主催) | 剣術、柔術など | 賞札、奉納扁額など |
- ## ?? トロフィーやカップのような「飾って見せる記念品」は?
明治以前の日本では、「**記念品を飾る**」「**持ち帰って保管する**」という習慣はあまり一般的ではなく、
* **神社仏閣に奉納(扁額や絵馬として)**
* **主君や寺に捧げる**といった「**個人の栄誉を共同体に返す文化**」が強く、**個人所有のカップ型トロフィーのような記念品**はほとんど登場しません。
- ## ?? 明治以降の変化
* 明治時代に**西洋式のスポーツ競技会や展覧会**が広まるとともに、「トロフィー」「カップ」「賞牌(メダル)」などの文化が**日本に移入されて定着**していきました。
* 初期の賞品には、**銀杯**(天皇や政府が下賜する形)が多く使われました(現在の「天皇杯」の起源にもつながります)。
- ## ? まとめ
| 観点 | 明治以前の日本 | 西洋(近代以降) |
| ------- | ------------- | ------------- |
| 勝者の顕彰方法 | 感状、物品、称号、奉納 | トロフィー、カップ、メダル |
| 形式 | 実用品・名誉品・宗教的奉納 | 飾ることを前提とした記念品 |
| 文化的背景 | 主君への忠義、神仏への奉納 | 個人・チームの栄光を称える |
最後に、ちょうど昨日、大相撲7月場所(名古屋場所)が終わったところなので、
●大相撲の賜杯はなぜあのような形なのでしょうか?
と質問したところ以下のような回答をいただいた。
大相撲の賜杯(しはい)が現在のような\*\*大きな「カップ型」\*\*になったのは、**西洋のトロフィー文化**の影響を受けて導入された形式であり、**明治末から昭和初期にかけての近代化の象徴**でもあります。
## ?? 賜杯の形が「大きなカップ」になった理由
- 西洋式スポーツ文化との融合(近代化の象徴)
- 明治以降、日本は国際化・西洋化を進める中で、スポーツや競技においても「トロフィー」や「カップ」が用いられるようになりました。
- 特に**イギリス式の「カップ型トロフィー」**(例:FAカップ)が権威の象徴として世界中で広まっていたことが影響しました。
- 大相撲でも昭和初期に\*\*天皇賜杯(天皇杯)\*\*が創設される際、**国際的な格式に見合う記念品として「カップ型トロフィー」が採用された**と考えられます。
- 儀式性・視覚的インパクトの強さ
- * 優勝力士が巨大な銀製カップを両手で掲げる姿は\*\*「力」と「栄誉」の象徴\*\*となり、大相撲のフィナーレにふさわしい演出効果があります。
- * 扇子や巻物、衣類などと違って、**会場全体から目に見えて「勝者の象徴」となる品**としてカップは非常に優れていたためです。
## ?? 歴史的経緯:大相撲とカップ型賜杯
| 年代 | 出来事 |
| ------------ | ------------------------------------------------------------ | | 明治時代 | 優勝力士には金銭や賞品(米、衣類など)を与えることが主流。まだカップは使われていなかった。 |
| 1909年(明治42年) | 「優勝制度」創設(本場所ごとの勝ち星による優勝が公式に記録される) |
| 1925年(大正14年) | **昭和天皇即位記念として「天皇賜杯(天皇杯)」創設**。このときから**大型のカップ型トロフィー**が正式な形となる。 |
| 昭和以降 | 内閣総理大臣杯や各国大使からの「○○杯」も、すべて「カップ型トロフィー」で統一されていく。 |
## ?? なぜ「杯」なのに「カップ」型?
- * 「賜杯(しはい)」という漢語表現は、「天皇から**杯を賜る**」という意味合いから来ており、伝統的には「酒を注ぐ器」ですが、
- * 実際に授与された形状は**西洋式のトロフィー型カップ**。これは**言葉は和風、形は洋風**という折衷スタイルです。
## ? まとめ:大相撲の賜杯がカップ型の理由
| 観点 | 理由 |
| ----- | ------------------------------------------ |
| 文化的背景 | 明治以降の西洋文化の影響。近代スポーツにおける「カップ=勝利の象徴」という共通認識。 |
| 儀礼的効果 | 巨大なカップを掲げる所作が視覚的に栄誉を伝える。 |
b| 歴史的転機 | 天皇賜杯の創設(1925年)によって「賜杯=カップ型」が定着。 |
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次回に続く。
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