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昨日の日記

6月29日(月)

【思ったこと】
980629(月)[教育]PTA講演会「子どもへの暴力防止」(その1)
「小・中学校で学ぶべきこと・教えるべきこと」の連載について複数の方から建設的な御意見をいただきました。次回以降に御紹介させていただきたいと存じます。どうもありがとうございました。「人間界の左と右」についても、お世話になっております。

 娘が学校からPTA講演会の案内をもらってきた。日時は15時〜17時という私の勤務時間帯ではあったが、「子どもが自分で自分を守る」という心理学に関係の深いテーマであったので研修目的で拝聴してきた。

 この講演では講師の先生のお話とともに、いじめ、誘拐、性的虐待に関するロールプレイが組み入れられていた。実演は、「CAP岡山連絡会」のメンバーの方であるという。「CAP」というのは「Child Assault Prevention(子どもへの暴力防止)」の頭文字をとった教育プログラムであり、従来の「〜してはいけません」式の危険防止教育とは根本的に異なるものであると、案内チラシに書かれてあった。【←CAPに「R」を挿入した「CARP」は、今回のテーマとは全く関係のない原理研=統一教会系の団体であるので御注意願いたい。】

 講演会場に言ってみたところ、会場はほぼ満員、但し、そこの学校の先生とPTA会長を除いて男性は2〜3名。他はみな、お母様方ばかりでちょっと緊張した。入り口で、名札シールを渡される。じぶんの名前を平仮名で書いてくださいということだったので「よしのり」と大きく書く。これは、小学生になりきって雰囲気をもりあげるという目論見によるもののようだ。

 講演全体を通じてまず関心したのは、最初に「切手のない贈り物」の合唱をしたり、途中で、参加者が二人一組になって自分の考えを述べるなど、聴衆を引き込むような工夫が各所になされていたこと。大学教授なんぞが一方的にしゃべりまくる講演会よりは、はるかに説得効果が大きいように思った。

 さて、講演会の内容であるが、まず、CAPの歴史について簡単な説明があった。今から20年前に、アメリカで小2がレイプされたのがきっかけ。その後、森田ゆりという方が日本に広め、現在60余のグループが国内に組織されているということだった。
 次に、権利とは何かについて説明があった。基本的な定義は「それがなくては生きてゆけないもの、つまりいのちそのものに限りなく近い」ということだが、CAPではこれに加えて3つの権利を強調している。それは
  • 安心する権利(Safe)
  • 自信を持つ権利(Strong)
  • 自由に行動する権利(Free)
ということ。これらは、子供ばかりでなく、夫婦間でも成り立つ権利であるとのこと(←妻が聞きに来てたら、あとで一言ありそうな話題)。

 次に、これらが侵害される具体例として、いじめ(上級生の少女から下級生の少年へ)、誘拐(知らないおじさんから少女へ)、性的虐待(親戚のお兄さんから少年へ)という3場面が演じられた。これらに対する対策としては、「いや!(No)」、にげる(Go)」、「そうだんする(Tell)」の3点が提案されている。興味深かったのは、誘拐魔に襲われた時に出す叫び声で、ふつうは「キャーッ」と叫ぶところ、お腹の底から「ウオーッ」という低い叫び声をあげることを救難信号にしようというもの。それぞれの場面で、この対策を取り入れたロールプレイが被害場面と対にして演じられていた。

 いじめの根本防止策についての話題がとりあげられるのかと思っていたが、今回の講演ではそこまでは触れられず、もっぱら被害を受けそうになった子どもが「自分で自分を守る」ために何をしたらよいかということが、具体的に、子どもにも分かるように提案されていた。

 講演会の最後に質問の機会があったので、目立つのを承知で2つばかり質問:
  1. 誘拐場面のロールプレイでは「お母さんが事故に遭った」とか「車に犬の赤ちゃんがいっぱい居るので見においで」というような誘い文句が使われていたが、「道を教えてくれないか」とか「あそこに倒れている人がいるので、背負うのを手伝ってくれないか」というように人助けを口実に誘いかけてきた場合にはどうすればよいと指導するのか。
  2. 「キャーッ」の代わりに「ウオーッ」と叫ぶことの理由は? 大学構内では応援団が同じ様な声を張り上げているので、それと間違われることは無いだろうか?
このうち1.については、あまり明解な回答はいただけなかったように思う。決して講演者を困らせる意図はなかったのだが、援助行動の指導と誘拐の危険にからむ葛藤は一口では答えにくいところがあるのだろう。但し、道の案内などはわざわざ子どもに求めなくてもよいはずだ、そういう場面で案内を断ったからといってその大人が困ることはあんまり無いのでは、というようなお答えはいただいた。
 叫び声の出し方については、応援団と間違われる危険があることは認めておられた。もっともこういう声は、単によく聞こえるように出すというためではなく、自分に自信を与えながら拒絶するという別の意義があるのだという。「キャーッ」は戯れの場面でも発せられるし、場合によっては誘惑と勘違いされることもあるので、救難信号としての効果はあまり無い。「ウオーッ」という低いうなり声のほうが加虐性の興奮を誘引する恐れは少ないと言えるかもしれない。
 このほか、「あんしん」「じしん」「じゆう」については、昨日の「ヤマギシ学園」の問題とあわせて多少考えるところがあったが、時間が無いので明日以降に続く。
【思ったこと(2)】
980629(月)[一般]カップ麺容器からの環境ホルモン検出
  • 6/30朝5時台のNHKニュースによれば、国立の機関がカップ麺容器から微量(10億分の62)のスチレントリマーを検出したという。5月19日の日記で、社)日本即席食品工業協会の全面広告についてコメントしたことがあるが、その時の広告では、“「スチレントリマー」が溶けだした実証例は無い。”と主張されており、今回の結果はこれを覆すものと言えよう。もともと「実証例は無い」というのは、理論的にあり得ないということではなく、単に資料が収集されていないという意味にもとれる。そういう意味では協会は虚偽の主張をしたわけではないと言えるが、これでは消費者は安心できないだろう。
    同じNHKニュースでは、協会側の反論として、「メスのネズミにスチレントリマーを摂取させたが、摂取させなかったネズミと子宮の大きさに有意な差は認められなかった」という外国の実験例を紹介していた。しかし、これは、スチレントリマーが検出されたことへの直接的反論ではない。このネズミの実験結果一例だけで、消費者を安心させる有力な証拠になりうるかどうかはなはだ疑わしいと思う。
    有意差検定は心理学の実験では基本中の基本であるけれど、そもそも、「有意差無し」というのは、ある物質が無害であることの積極的根拠にはなりえない。有害であっても同時に関与するノイズが大きければ有意差は出てこないし、摂取量が少なかったり摂取期間が短ければ有意差が出てこないのは当然というケースもある。まして、紹介された実験例は、「メスのネズミの子宮の大きさ」を対象としたものであって、人間で他の生理的指標に基づいて測定すればいくらでも有意差が出る危険性が残されている。

    私自身は決して、カップ麺の有害性を強調する者ではない。5月19日の日記に書いたように、こういう議論があること自体、日本即席食品工業協会の全面広告を見て初めて知った(←つまり、協会はヤブヘビ、つまり藪から口やかましい「はせぴぃヘビ」をつつきだしたようなもの)ようなものである。「私たちは、環境ホルモンに関して持ちうるすべての情報を開示する準備があります。」という、協会の誠実な態度は評価できるとしても、もう少し論理的に整合のとれた、万人を納得させられるような主張を展開してもらいたいものである。
  • 【ちょっと思ったこと】
    • ミャンマーの軍事政権は29日、NLDの国会開会要求運動を違法行為だとする長文の記事を国営新聞に掲載し、「いかなる組織も勝手に国会開催を求めたり独自に憲法草案を作ったりすることは法律で禁止されている」と強調、違反者は最高20年の禁固刑に処せられるなどと警告したという[6/30朝日]。1990年の総選挙の結果を無視し未だに政権の座に居座って弾圧を続ける軍事政権には呆れるばかりだが、どんな政権であれ、それが長続きするからには、誰かがそれを支え、それで得をしているはずである。そういう勢力と日本の経済援助との関係はどうなっているのだろうか。あるいは民間レベルで、軍事政権の存続に力を貸している企業や団体は居ないのだろうか。
    • 6/28の日記にちょっと書いた、北海タイムスの休刊騒動だが、6/30朝日では社長が休刊を一時見合わせるとの「社告」を関係者に送ったという[6/30朝日]。ちょっと調べれば分かることなのだろうが、記事の文面だけを追っているかぎりでは、シャチョウの一連の行動は常軌を逸してており奇怪きわまりない。
    【新しく知ったこと】
    • 6月27日の日記で、6KHZから10KHZの超音波によって蚊の寄ってくるのを防ぐという「ライト付蚊が来ない」という商品のことを書いたが、音波の権威であるShiroさん(Island Life)から、、6KHZから10KHZは超音波ではないとの鋭いツッコミをいただいた。ご指摘のように、この装置の電源を入れると、キーンという音がかすかに聞こえてくる。このあたり、公正取引委員会はどのように考えておられるのだろうか。
    【リンク情報】
    【生活記録】
    【家族の出来事】
    【スクラップブック(翌日朝まで、“ ”部分は原文そのまま。他は長谷川による要約。【 】部分は簡単なコメント。)】
    • 市川猿之助さんの公演や宿泊先に執拗につきまとう大阪府内の女性に対して大阪地裁は29日、市川さんの訴えをほぼ認めたうえで、劇場のほか市川さんの周囲半径200メートル以内への立ち入り禁止と慰謝料50万円の支払いを認めた。[6/30朝日]
    • 倉敷チボリ公園を運営するチボリ・ジャパンが29日に株主総会。累積赤字は試算していた28億4300万円を大幅に下回る約10億6800万円に。年間300万人とみていた入場者数は6/26の時点(開園318日目)で380万人に達した。開園2年目の入場者減が課題。