じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 今年のクリスマス料理。子どもたちも手伝うようになったので、年々豪華になりつつあるが、問題は一日で食べきれるかどうかということ。これから何日も残り物ばかり食べるのはつらいところだ。 [今日の写真]



12月24日(日)

【思ったこと】
_01224(日)[心理]「行動随伴性に基づく人間理解」その後(19) 誉める人材育成法/誉めることの3つの意味

 12/25朝のNHK情報BOXで、先月11/7に放送された「コーチング理論」の再放送をやっていた。小出監督が誉めることを主体にして高橋尚子選手を養成したことから、その後に出版された「成功談本」を通じて注目されるようになったというが、「誉める人材育成法」自体は企業経営の分野ですでに活用されており40年の歴史があるという。番組で紹介された5つのステップは
  1. 相手をよく知る
  2. 期待を伝える
  3. 話し合いで(合意のもとで)目標を立てる
  4. 援助する
  5. ほめる、改善点を指摘する
というもので、番組では化粧品会社のE.トーマス.コーパル氏、コンサルタント会社・副社長の桜井一紀氏の談話が伝えられていた。

 誉めるということと、自発的・能動的(=オペラント的)に目標を立てるというプロセスが行動分析の理論に酷似していたので、先月この番組を見たあとで行動分析のMLに質問を出してみたのだが、残念ながら何も情報は寄せられなかった。

 その後、書籍検索から『勝ち組になるためのセルフ・コーチング理論』(ビジネス社, 1999年)を見つけ、つい先日入手したばかり。ざっと眺めたところでは、確かに行動分析の手法によく似たところがあるが、「精神、肉体、感情のエネルギーを使う」というような発想は全く別物であることが分かった。

 「誉める」ことは教育場面でも有用であろうと思うが、忘れてならないのは、その効用を具体的に考えていくこと。それは大ざっぱに言って次の3つに分けられるかと思う。
  1. 単にムードを明るくし、人間関係を潤滑にする。
    集団内で他者が嫌悪的な存在にならないためには、大したことができていなくても、けなすよりは誉めておいたほうがよい。
  2. 好子(=正の強化子)としての効果
    言語的な習得性好子として「よくできたね」「すごっーい!」「さすが○○さんだ」などを発し、相手の望ましい行動の自発頻度を増やす。但し、これは、誉め言葉が本当に好子となるような状況に限られる。家族内ならともかく、義理や職務上のつながりしか無い相手から形式的に「よくできました」と言われても好子にはなるまい。
  3. 弁別の手がかりとしてのフィードバック
    ことばは、望ましい行動と望ましくない行動を弁別するための有用な手がかりとなる。望ましい行動のカテゴライズや、その中の要素部分を精緻化するための手段として「誉める」ことも有用。
    例えば、バッティングフォームを改造する場合、コーチが「よくできた」と発することがその都度そのフォームの自発頻度を増やす好子になっているとは考えにくい。それは、望ましいフォームが生じる直前の筋肉の状態等をカテゴライズする手がかりとして機能しているのである。「望ましいフォーム」という行動自体は、ヒットをたくさん打ち、選手として活躍する中で別途、行動内在的に強化されるものである。
    この事例では、コーチの「よくできた」発言は、特定の訓練の文脈の中でしか有効性を発揮しないはずだ。その技能と無関係の行動、例えば、日常生活場面でその打者が室内の清掃をしたときに「よくできた」とコーチから「誉められ」ても行動は増えないはずである。
『勝ち組になるためのセルフ・コーチング理論』自体については、読了したあとで再度リビューしてみたいと思う。

 番組でインタビューされていた桜井一紀氏のお名前をGoogleで検索したところ、こちらに該当するコンサルタント会社(←「コンサルティング」とは違いと書かれてあったので、正確には「コーチング会社」と呼ぶべきか)のHPがあることが分かった。こちらにコーチングの歴史が記されていたが、ざっと拝見したところでは、行動分析とは直接接点が無いように見える。