じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] ミモザアカシアに豆がなった。実生苗を育ててみたいと思う。このミモザの枝ではたくさんのミノムシ(オオミノガ)が生息していたが、大部分は蛾になった飛び去った模様。写真右のミノはその抜け殻だろうか。図鑑には、「ミノガのメスはウジ虫状で一生をミノに入った状態で過ごす」と書かれてあったが、いつ一生を終えるのかは分からなかった。試しに、1つだけミノを開けてみたところ、ミイラ化した芋虫が入っていた。これがメスだったのか、病気で死んだのかは不明。ミノムシは立派な害虫であるが、なぜか憎めないところがある。 [今日の写真]





5月15日(水)

【思ったこと】
_20515(水)[一般]会社の中で働く「個人事業主」

 一日前の話題になるが、14日の夕食時にNHKクローズアップ現代「会社の中で独立します〜広がる個人事業主〜」を視た[5/16追記:番組紹介サイトはこちら]。

 リストラ、裁量労働制[99年1月4日の日記参照]、成果主義[2001年3月18日の日記参照]、多品種少量生産・多能工化[2001年5月23日の日記参照]など、企業の生き残りをかけた改革が模索されているが、今回伝えられた「会社内個人事業主」制度は、さらにすさまじいものであった。

 番組では、家電製品などの試作品を製造会社の取り組みが紹介された。この会社では、いったん雇用された社員は、研修をへて一定レベルのスキルを身につけたあとは、退職し個人事業主として独立する。そして、そのつど、会社側と納期などを定めた契約を結び、工場内の工作機器をリースし、自分の好きな時間に働いて完成させる。会社で働く450人のうちの8割が個人事業主(←聞き取りのため数値は不確か)だ。

 個人事業主になるメリットとしては、勤務時間に拘束されないほか、腕をあげればかなりの収入を得られることが挙げられる。番組で紹介された事例でも、300万から1300万(←聞き取りのため数値は不確か)というように、同じ年齢でも収入に相当の差が生じていた。

 いっぽうデメリットしては、従業員であった場合に保障されるような健康保険(←各自が独自に負担することになる)、労災適用、失業保険、退職金等が一切ない。会社から一方的に「発注」を打ちきられても文句が言えず、日々、その不安を抱え込む人もいる。勤務時間に拘束されないといっても早く仕上げないと次の仕事がまわってこないので、結果的に、夜遅くまで、あるいは連休中にも仕事をせざるをえない状況が生まれる。時間労働に比べると相当のストレスを受けるのではないかと拝察された。

 番組の中で経済評論家の内橋克人氏も指摘していたように、いまの社会制度は、資本主義社会の中で弱い立場にある労働者を保護するように作られている。個人事業主は強い立場にあると考えられてきたので、行き届いた保障を受けるような仕組みにはなっていない。従業員を個人事業主化するには、彼らが複数の企業と交渉できる力をもつ必要がある。つまり、上記の試作品製造を例にとるなら、複数の企業が複数の個人事業主と多様な契約を結べることが必要ということになるのだろう。もし、そういう状況がなしに、従業員を形だけ個人事業主化してしまうと、労働環境は著しく悪化する。99年1月4日の日記に引用したように、スキナーはすでに1953年刊行の『科学と人間行動』(第6章102〜103頁)の中で「出来高払い」による労働がもたらす弊害を指摘している。また内藤氏が「社会全体のコスト」として強調しておられたように、いくら製造企業の収益が増えても、労働者の多くが疲労困憊して医療負担が増え、余暇を楽しむ時間が奪われるようでは、健康な社会とは言えまい。




 番組の終わりのほうで、非常勤講師を勤めていた個人事業主の労災認定の話題も取り上げられていた。形式上「通勤」途中で交通事故に遭っても労災の認定は受けられないはずであるが、実際には、個人事業主たる非常勤講師であっても
  • 指揮命令を受けているか(カリキュラム、授業内容など)
  • 勤務時間指定があるか(時間割)
  • 仕事内容を断れるか
などの基準により「実態から労働者」と認められれば労災認定は受けられるようだ。




 余談だが、この番組を一緒に視ていた妻に、我が家でも夫婦の個人事業主化をはかったらどうだろうと提案してみた。妻は個人事業主として、炊事洗濯業務について夫と契約を結ぶというものである。それに対する妻の答えは、

そんなこと言うなら、まず、あなたがオーバードクターだった時の借金を返してちょうだい!

オーバードクターの時代も非常勤講師としてそれなりの収入を得ていた私であるが、そう言えば、一年だけ、実験研究の都合で妻の扶養家族になっていた年があった。この負い目は一生続くことになりそうだ。