じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
ライブ中継で眺めた皆既日食(オーストラリア・セドュナ海岸、写真左)と、1988年3月18日に小笠原沖で直接眺めた皆既日食(右)。本文参照。 |
【ちょっと思ったこと】
ライブ中継で眺める皆既日食と、全身で受け止める皆既日食 夕刻、他の方のWeb日記にオーストラリア等で見られる皆既日食のライブ中継のことが書かれてあった。すでに外は真っ暗になっており、オーストラリアは日本と経度が同じだからもう終わってしまっているに違いないと思ったが、念のためリンクをたどってみると、日本時間で18時10分台であることに気づく。おかしいなあと思ったが、よく考えれば現地はいま夏至に近い。まだ日没には間があったのである。 さっそく、ライブ中継サイトに繋いで日食の様子を眺めた。直前に何度か雲で隠されヒヤヒヤしたが、皆既食が始まる直前からは雲も切れ、皆既食終了までのすべてを眺めることができた。中継担当者は知らなかったのだろうか。セッティングの会話が聞こえ、逆に臨場感をもたらしていた。今回は皆既食継続時間が32秒と比較的短かったが、そのぶん、すれすれに隠された太陽の縁から全方位に向かってプロミネンスが見えたらしい。いままでで一番美しいとの声も聞こえてきた。 これまでライブ中継などというと、ネットが混雑していてどうせアクセスできないだろうとか、途中で切断されてしまうだろう、などとの思いこみがあり、滅多に利用したことがなかったが、こんなに身近に利用できるとは思わなかった。コロナを眺めるだけだったら、何十万もの旅費を投じて現地に行かなくても済みそうだ。 もっとも、こういった画面いっぱいのコロナを見ても、今ひとつ物足りないところがある。98年8月23日の日記や99年1月14日の日記に書いたように、皆既日食見物の醍醐味は、真っ昼間の景色が急速に暗くなっていく変化にある。皆既日食の瞬間を望遠鏡で眺めるだけだったらテレビやインターネットの画像でも大して変わりはない。写真なども他の人の撮影したものを見せてもらえば済む。しかし、大空全体を肉眼で見渡すことは、現地に行かないとなかなか体験できない。 上掲の右の写真は、小笠原沖の皆既日食の時に20mm広角レンズで撮影した写真である。太陽が真上にあったため2枚を合成してみたが、日食の最中のだいたいの雰囲気はこれで伝わると思う。天頂付近は、コロナを輝かせる太陽と金星や水星などの内惑星、水平線はどの方角も夕焼けのように赤く染まる。私が見たいのは、こういう空いっぱいの景色であって、拡大されたコロナの写真ではない。天文現象を全身で受け止めるには、対象となる天体だけに目を向けていてはダメだ。空全体や地上(海上)全体の中で感じ取る必要がある。できればこういう、現地の景色全体のライブ中継を実現してもらいたいところだが、どんなもんだろうか。 ヘールボップ彗星が近づいた時も、私は、彗星の拡大写真よりは、見慣れた風景と彗星との組み合わせに関心があった。チベットで花の写真を撮る時も、接写よりは、周囲や遠くの雪山を背景に入れたほうが面白いと思う。これは人間の行動についても言えることだろう。1つの行動だけに目を向けるのではなく全人的にとらえるということ、分析ばかりでなく全体や関係性を重視する必要があるということを強く感じるこのごろである。 |