じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
成田〜福岡便(1/6搭乗)の機上からの景色の続き。今回は神戸北部。六甲やポートアイランド、遠くには関空を眺めることができた。 |
【ちょっと思ったこと】
ニート彗星はneatだ! 2002年11月6日にNASAのジェット推進研究所(JPL)にあるNEAT(NEAR-EARTH ASTEROID TRACKING)のチームが発見したNEAT彗星(2002 V1)が、いま太陽に大接近している。ちなみに、このチームが発見した彗星はいろいろあり、発見者の名前をとって次々と「Neat彗星」と名づけられてしまうためしばしば混同してしまう。そこで、今回の彗星に固有である「2002 V1」という仮符号つきで呼ばれることが多いという。 怪鳥さんのWebサイトによれば、この彗星は最接近(近日点通過)の2月18日には0.099AUまで太陽に近づくという。彗星上から見れば10倍の直径の太陽の光が降り注ぐわけだから、どんどんとガスやイオンが飛び出して、とても明るく輝くことになる。 残念ながら、皆既日食でも起こらない限り、こんなに太陽に接近した彗星を肉眼で眺めることはできない。ところが最近では、太陽観測衛星SOHOのおかげで、毎日、皆既日食時よりもさらに鮮明な映像をネット上で眺めることができる。上記の怪鳥さんのサイトから2/18の映像がリンクされていたが、こりゃあスゴイ。めったにお目にかかれない輝きだ。←太陽のほうから吹き出している奇妙な渦は何なんだろう? この彗星、あまりにも太陽に近づきすぎたため、このまま消滅という予測もあるらしい。もし消滅しなかったら、2/21頃からは明け方の空に見えてくるはずなんだが、どんな感じに見えるんだろうか。楽しみだ。 川村俊蔵先生を悼む/末子優位の法則 川村俊蔵(かわむら・しゅんぞう)・京都大名誉教授が17日14時15分、肺炎のため京都市左京区の病院で亡くなったという。78歳。川村先生は、今西錦司門下であり、河合雅雄先生や伊谷純一郎先生らと共に、宮崎県幸島や大分県高崎山のニホンザルの研究に取り組まれ、霊長類研究所の初代教授をつとめられた。野生ニホンザルの群れの中で新しい行動や食べ物が伝播する過程や「末子優位の法則」を見出した。 ニホンザルの群の中で姉よりも妹が優位になるということは私自身もいくつかの群を観察して実感したことがある。これは別段、サルたちが道徳や法律を作っているわけではない。母親は常に後から生まれた子供のほうを庇護するため、姉と妹が喧嘩をすれば姉のほうが母親から罰を受けることになる。結果的に、妹が姉を攻撃したり姉の餌を横取りするような行動は強化されやすくなり、逆に姉が妹を攻撃する行動は弱化されやすくなる。また、群の中では相手を傷つけるような無用な衝突は避けられるため、いったん優位・劣位の関係が確立すると、喧嘩によって逆転することはまずあり得ない。なお、オスの子供の場合は一定年齢になると群から追い出されるため、必ずしもこの関係は保持されない。.......というのが私が聞きかじった範囲での説明。 私の知る限りでは、川村先生は今西門下の中では比較的地味な存在であり、管理運営上の要職や各種学会の会長・理事長に就かれることはあまり無かったのではないかと思われる。私が結婚した当初、同じアパートに住んでおられることが分かりビックリしたことがあった。軽トラックで通勤しておられたのが印象に残っている。 |
【思ったこと】 _30219(水)[心理]日本健康支援学会(5)学生のQOL 昨日の続き。1日目午後に行われた「QOLと健康支援〜QOLの測定尺度」というタイトルのシンポジウム:
福盛氏のご発表で驚いたのは、いきなり、文部省(当時)高等教育局の「大学における学生生活の充実に関する調査研究協力者会議」が2000年6月に報告した ●大学における学生生活の充実方策について(報告)〜学生の立場に立った大学づくりを目指して〜 という答申内容が紹介されたことである。この答申については2001年7月11日の日記などで私も引用したことがあるが、まさか、QOLをテーマにした学術集会でFDがらみの話が取り上げられるとは思ってもみなかった。 福盛氏は、この答申で指摘された「大学生の生活の質・コミュニケーションスタイルの変化への対応」について、それが生活力の低下によるものか、コミュニケーションスタイル力の低下によるものか、を問いかけ、具体的な方法論の研究はまだこれからであることを強調した。 大学生活の質は、QOLの「L」を「Student Life」に特定して、「QOSL」として表される。その実態を包括的に把握するための質問票として「学生生活チェックカタログ」が開発された。具体的な結果は著作権等への配慮からここでは差し控えるが、九大のような超一流の大学であっても、いまの大学生活が充実しているかという問いに否定的な学生の比率が結構多いのには驚いた。 また、大学生のコミュニケーションスタイルの傾向としては、他者に敏感で、傷つきを恐れ、深いつき合いを避け、同調的である傾向が多いこと、大学生のQOL支援にあたっては対人コミュニケーションへの介入が不可欠であること、学生の潜在的ニーズを積極的に感知し、一方で働きかけはマイルドな方法(非侵略的積極的態度)で行っていく必要があることなどが、結果に基づいて指摘された。 この「非侵略的積極的態度」というのは、学生が能動的に取り組めるような機会を「きっかけ」「入門」段階から含めて多彩に用意し、好子出現の随伴性、つまり「しなくてもよいが、○○するといいですよ」という形で達成感を与えていくことになるのではないかと思った。岡大で学生課と生協が連携しながら行っている(あるいは今後計画されている)公務員講座、教職講座、英語外部試験対策講座なども、ある意味では今の学生のスタイルに合っているようにも思える。和田秀樹氏がよく言う「シゾフレ人間」のタイプにも近そうだ。 もっとも、学生の積極性がさらに低下していった時には、ある程度の強制を伴わないと何もしなくなる恐れもある。出席や予復習の強制、成績不良者への積極的関与ということも、全入や定員割れの大学では必要になってくるだろう。 以上は最近の学生についての平均的な傾向であったが、今回の発表では、画一的な見方ができないことも合わせて指摘された。つまり、生活力全般が墜ちている学生もいるし、コミュニケーションスキルが不足している学生もいる。事務室の窓ガラスを開けて「書類を提出に来ました」と言うことができず窓口の前で数時間もウロウロする学生や、クリーニングを出せない学生までいるというエピソードには驚いてしまった。学生の変化が多様である以上、大学側の対応も多様にならざるをえない。 最後に福盛氏は、これからの大学教育の向かう方向として、従来の「知」と「人格成長」という直行軸を斜めに貫く「学び方のワークショップ」「心理健康学」などの新しい流れを取り入れ、成長の面積を右上がりに広げる工夫があることを強調された。また保健管理施設の新しい役割として、癒し(つつむ)、交流(つなぐ)、体験(つむぐ)機能を挙げられた。 岡大におけるFD、勉学環境改善、大学生活改善の方策に以上の点をぜひ活かしていきたいと思う。 |