じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 時計台前の広場には2本の鬱金桜があったが、このうち1本が枯れてしまった。冬のうちは周りの木々と区別つかなかったが、5月の新緑の中でその哀れな姿が露わとなった。私自身もいずれこのようにして朽ちていくのだろう。


5月2日(金)

【ちょっと思ったこと】

白い布を張ること自体は決して異様ではない

 4月30日の日記で、「謎の白装束集団」のことを書いた。私自身はこの騒ぎのことは5月1日付けの新聞記事で初めて知ったのであるが、妻にそのことを話したら「あなた、遅いわね。テレビではとっくの昔に話題になっているわよ。○○さん(←近所の奥さん)が津黒高原で見たって。」などとバカにされてしまった。そういえば、5月2日のテレビ欄を見ると
  • 不可解!!白装束集団緊急立ち入り捜索(瀬戸内海テレビ)
  • 現場騒然 捜査員300人が白装束集団取り調べ&謎の女性代表の素顔(山陽テレビ)
  • 白装束集団が大移動(西日本テレビ)
というように朝のワードショー番組の格好のネタにされていた。私も朝8時頃、そのうちの1つを初めて視ることができた。

 また、こちらのニュースによれば、ここ数日、集団を上回る取材陣のほか、近隣からのやじ馬が集まり、中には集団の会見にカメラ付き携帯電話を持って参加し、メンバーと記念撮影を試みる者もいるほどだという。

 私個人はカルト宗教は大嫌いであり、授業でも、大学構内でアンケートや公開講座などと称して執拗に勧誘を続けている偽装サークルに騙されないよう、しょっちゅう呼びかけているところである。また、血液型性格判断やマイナスイオンなどの似非科学についても日頃からこのWeb日記で批判を続けている。

 しかし、もしこの団体が何ら反社会的行為を行わず、正体を隠した勧誘や霊感商法、インチキ募金などを行わず、隠遁生活に徹するというのであれば、特に強制的に排除する理由は無い。 マイノリティをいじめてはならない。勝手にやらせておけばよいのではないか、と思ってみたりする。




 この白装束集団に対しては、これまでのところ、2つの点から批判が浴びせられているように思われる。

 1つは、電磁波についての非科学的な思い込みである。常識ある人間ならば、あんな妙な仮説が成り立つとは到底思えない。バカな奴らだという優越感があればこそ、野次馬になったりテレビにかじりついたして楽しむことができるのかもしれぬ。

 もう1つは、「白」をめぐる異様さであろう。昨日朝のテレビでは、装束ばかりでなく、ガードレールや車の周りにも白い布を張りめぐらせていた。いくら主張が奇異であったとしても、普通の格好で放浪生活を送っていたならば、これほど騒がれることはなかっただろう。




 しかし、彼らを擁護することになってしまうかもしれないことを承知で敢えて言うが、宗教というのは、元来、似非科学を受け入れなければ決して存立し得ない宿命を背負っている。キリストの奇跡も社寺の霊験も、純粋に科学的に見れば何も実証されていない。お守りや御祓いは、あくまで自信をつけさせたり不安を取り除くための暗示効果としてのみ意味がある。

 であるならば、彼らが仮設的な電磁波を信仰対象として宗教活動を行ったとしても、それゆえに嘲笑されるいわれはどこにもないのである。嘲笑されるのはマイノリティであるからにすぎない。



 白装束をまとい白い布を張り巡らすことも、結局のところは彼らがマイノリティであるが故の異様さであることに気付くべきであろう。
[写真] [写真]  昨年夏、チベット東部(カム・アムド・黄河源流域)を旅行した時に撮影した写真を4枚ほど挙げてみよう。山腹やマニ石、道路を横断するような形で、白い布がはためいている。

 もし同じことを岐阜県の山中でやろうとしたら、たちまち、山道占拠や往来妨害で逮捕されるに違いない。チベットでそれが当たり前のように見えるのは、それがマジョリティになっているからにすぎない。
[写真] [写真]
 以上述べたことは、あくまで
もしこの団体が何ら反社会的行為を行わず、正体を隠した勧誘や霊感商法、インチキ募金などを行わず、隠遁生活に徹するというのであれば...
という前提に基づいた上での議論である。1つでも前提が崩れてしまえば、成り立たないということを重ねてお断りしておく。

写真説明
  • (左上)康定〜炉霍の途中にあった塔公寺(ハルゴン・ゴンパ、サキャ派、標高3700m)の裏山。
  • (右上)玉樹近くの新しい観光名所ジャナ・マニ(世界一大きなマニ塚)。
  • (左下)玉樹。文成公主廟手前のタルチョはためく風景。
  • (右下)玉樹〜瑪多の途中にあった竹節寺(ドゥジェ・ゴンパ。力ギュ派)近くの山腹。標高は4000m前後。