じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 岡大・文法経三学部の合格発表風景。掲示板前ではアメフト部員が合格者を胴上げしていた。
最近ではインターネットでも発表が行われるほか、電子郵便で結果を知らせてくれる大学もある。別の手段ですでに合格を知っていて、念のため自分の目で確かめようとやってくる人たちも多いようだ。掲示板周辺ではすでにカルト宗教の偽装団体と見られる若者が勧誘をしていた。合格の喜びに気がゆるんで、うっかり誘いに乗らぬよう十分に気をつけてもらいたい。岡大のサークルに関心をもつ人は、入学式後に行われる校友会主催の正式行事に参加すること。得体の知れない偽装イベントには絶対に参加しないこと。


3月9日(火)

【ちょっと思ったこと】

顧客情報の流出を防ぐには

 通販大手の「ジャパネットたかた」の顧客名簿の一部が外部に流出していることが9日分かったという。10日の朝日新聞記事では、その数は30万人分、また10日朝のNHKニュースでは66万人分にも及ぶ可能性があるというから大変なものだ。先日のヤフーBBの件といい、個人情報は第三者に悪用される恐れが常にあることを、知っておかなければならない。

 ではどうすれば流出・悪用を防ぐことができるだろうか。

 まずは、個人情報リストの管理を厳しく義務づけ、顧客から承諾を得た目的以外に利用したり第三者に販売した時には刑罰を科す必要がある。故意の持ち出しはもちろん、個人情報リストを売った側も買い取った側に重罰に科せばよい。これらを法律で決めても何ら支障はないはずだ。

 では、ある場所に保管されていたはずの個人情報リストが流出したという事実はどうやって確認すればよいだろうか。これを見破るトリックとしては、例えば、リストの一部に、架空の顧客をランダムに忍ばせておくという手がある。架空といっても、その摘発に協力する人たちの実在する住所とする。たとえば、私の住む住所で「長谷川純一郎」という架空の氏名を入れておく。この「長谷川純一郎」は、そのリスト以外では一切使われない文字列である。こうした「架空の顧客」を複数忍ばせておけば、もしその氏名宛に別の企業等から郵便が届いたような場合は、直ちに流出・悪用があったとして摘発することができるだろう。

 余談だが、最近はオンラインでユーザー登録できる機器・ソフトが増えているが、登録の際にユーザーの生年月日や職業などの入力を強いるのは不当であると思う。ユーザー登録というのは、製品に何らかの欠陥があった時にメーカーがサポートをするために行うものである。ユーザーが何歳であるとかどういう仕事をしているというのは全く必要無い情報であるからだ。

【思ったこと】
_40309(火)[心理]サッカーくじはなぜ売れないか

 3月10日の朝日新聞記事によれば、4年目を迎えたサッカーくじ(スポーツ振興くじ、愛称トト)が低迷している。2001年、「年間2千億円の売り上げも」との前評判で始まったものの、最初のシーズンは604億円、翌シーズンは408億円、昨季は202億円まで落ちこみ、収益に基づいて行われるスポーツ団体への助成は2004年度にはゼロになる恐れが出てきたという。

 この低迷は、Jリーグ自体の人気とは別問題のようだ。記事に示された図表によれば、J1の1試合平均観客数は1万人〜2万人程度であり、2001年以降は1万6000〜1万7000人をキープしている。サッカーくじの導入に観客を増やす効果は無かった模様だが、少なくとも、Jリーグの人気自体が下がったとは言い難いようだ。

 では、何が低迷の原因となっているのだろう。心理学あるいは行動分析の視点からギャンブルをとらえると、熱中するギャンブルの条件としては
  1. 適度な金銭コスト(あまり出費が多くては継続できない)
  2. 適度な確率で当たること(但し、宝くじのように、低コストで莫大な賞金の可能性がある時は購入を続ける場合もある)
  3. 当選はランダムに起こるが、個人の能動的行動によってある程度確率を上げることができる(例えば、パチンコの腕前、競馬の推理など)
 では、トトの場合はどうか。記事にもあったように、導入1年目は単純な「勝ち」「負け」「引き分け」の予想であるために当選本数は多かったものの、払戻額が低額で人気が出なかった。そこで、2年目は予想を難しくした。3年目は今度は13試合を予想する従来のくじに加え、5試合の得点結果を予想するだけの「トトゴール」を新設した。基本戦略をもたず、行き当たりばったりに小手先だけを変えている点に苦悩が伺える。なお文部科学省の省令により、1等当選の場合の選択肢は100万通り以上なけれはならない。従来のトトの1等当選は160万通り、トトゴールでも105万通りだという。

 私個人は、サッカーくじのような趣旨のギャンブルは不要であると考えているが、何らかの目的でそれを活性化しようとするならば、やはり上に挙げたようなギャンブルの一般法則を考慮すべきであろう。

 この点、同じ記事にあった猪瀬直樹氏の指摘はまことに的を射ている。抜き書きすると
  1. 文部科学省の天下り先になる法人が運営することに、問題があった。誰も責任をとらない組織にまかせていたから、こうなった。
  2. どうして今まで競技場で売らなかったのか。極端に言えば、サッカー場に来るような人しかくじを買わない。
  3. 競馬は、馬券を買う人の研究という努力が、当たりはずれの成果に結びつくことが多い。努力のしようがない宝くじは、当たるか当たらないかは偶然に頼るしかない。サッカーくじは13試合も予想させ、用紙に書き込む労力もかけさせるが、宝くじのように当たる確率が低い。
  4. サッカーくじは競馬型で考えるべきだろう。三つか四つの試合に限定してやればいい。購入者への還元率も、現在の原則50%から競馬並みの75%ほどにして、ギャンブル性の高いものにする。宝くじのように1億円もらわなくていい。競馬で10万円もうかったら、かなりのものだ。
 猪瀬氏は心理学者でも行動分析学者でもないが、さすが、道路公団民営化で論陣を張ったお方だけある。ご指摘のように、現状のように当選確率が低いトトでは、能力や努力に応じて確率を上げることができない(上げられたとしても、100万分の1が90万分の1になるような微少な変化にすぎなないので実感できない)。当選金をいくらつり上げてもこれでは熱中できない。何も考えずに宝くじ1枚をかっておいたほうが気楽でよい。また、宝くじなみの確率では、サッカー場で声援を送る意味がない。宝くじ購入者が抽選会場に足を運ばないのと同様である。

 競馬ファンが多いのは、馬についての研究の成果がある程度反映するからである。また、どのレースでも必ずどれかの馬が目の前で優勝する。勝っても負けても、結果は直後に、かつリアルに随伴する。

 いろいろ述べたが、この種のギャンブルは小手先をどう変えてみたところで、期待値は出資金額以上には原理的になりえない。率直に言って、低迷に対する名案はたぶん存在しないと思う。