【思ったこと】 _50210(水)[教育]我が国の高等教育の将来像(4)教授と准教授はどこが違う?
2月6日に東京八王子・大学セミナーハウスで行われた、
●「我が国の高等教育の将来像」
というセミナーの感想の続き。
中教審答申の内容はこちらにWeb公開(pdf形式)されているので、併せて御覧いただきたいと思う。
さて、今回の答申の中で比較的話題性がありマスコミからも注目されていた内容の1つに、
●助教授の代わりに「准教授」、助手の一部を「助教」に
という提案があった。答申本文の28頁以降を引用すると
- 現行制度では,大学教員の基本的な職として,教育・研究を主たる職務とする職である教授及び助教授とともに,主たる職務が教育・研究か教育・研究の補助かが必ずしも明瞭でない助手の職が定められている。今後はこれを見直し,教育・研究を主たる職務とする職としては,教授,准教授のほかに新しい職として「助教」を設けて3種類とするとともに,助手は,教育・研究の補助を主たる職務とする職として定めることが適当である。【枠内】
- このうち,現行の助教授の職は,職名や職務内容が実態にそぐわない等の指摘や国際的通用性の観点を踏まえて廃止し,「学生を教授し,その研究を指導し,又は研究に従事する」ことを主たる職務とする「准教授」を設けることが適当である。【28頁】
- 現行の助手については,教員組織における位置付けが曖昧で,実際に担っている職務も多様であることから,将来の大学教員等を志す者にとってキャリア・パスの第1段階となる職が明らかになるよう,自ら教育・研究を行うことを主たる職務とする新しい職を設けるとともに,助手は,教育・研究の補助を主たる職務とする職として定めることが適当である。【28頁】
- 今後の大学教員の基本的な職としては,教育・研究を主たる職務とする職として教授,准教授及び助教の3種類を,教育・研究の補助を主たる職務とする職として助手を定めることとすることが適当である。【29頁】
- 准教授,助教及び助手は,基本的には,大学に置かなければならない職としつつ,各大学の方針や各分野の実情等によっては,置かないことができることとすることが適当である。【29頁】
- また,准教授や助教を新設する場合も,大学には,大学院学生等への教育,教育課程の編成,入学者選抜,診療等,大学が組織として決定した方針等に従い,各教員の役割分担及び連携の下,組織的に行わなければならない職務が存在する。こうした職務の遂行について支障が生じないよう,大学設置基準等に各教員の役割分担及び連携の組織的な体制が確保され,かつ,責任の所在が明確であるよう教員組織を編制するものとする旨を規定すべきである。【29頁】
- 各大学が,教育・研究の実施の責任を自ら明らかにしつつ,具体的な教員組織の編制をより自由に設計することができるよう,講座制又は学科目制を基本原則とする現在の大学設置基準の規定を削除し,教員組織の基本となる一般的な在り方として,教育・研究上の目的を達成するために必要な教員を置き,主たる授業科目は原則として専任の教授または准教授が担当することや,各教員の役割分担及び連携の組織的な体制の確保等に関する規定を定めるべきである。【29頁】
以上の提案の中で私がよく分からなかったのは、教授と准教授との違いである。かつては助教授は「教授の職務を助ける」と規定されていたが、准教授の場合は「学生を教授し,その研究を指導し,又は研究に従事する」という役割において、教授と何一つ変わることがない。
ということもあったので、質疑の時間に
教授と准教授はどこが違うのか? 教育・研究上の役割において差がないのであれば、最初から教授として採用すればよい。若手の教授候補を准教授として採用するというのは年功序列的な発想ではないか。
むしろ、最初から任期つきの教授として採用し、管理運営への参加や大学院主査選任などは、組織内部で実績に応じて決めていけばよいのではないか。
給与上も、教授か准教授かで格差をつけるのではなく、例えば、20万円くらいの固定給を定めた上で、授業担当コマ数、研究上の業績、管理運営などの能率給として支給していけばよい。
というような質問をさせていただいた。
これに対しては、1つは、強固な講座制をしいている学部(医学部)が依然として存在し、そこでは、教授と准教授の区別がどうしても必要であること、また、今回の答申の文面だけからは教授と准教授の違いはどこにも明記されていないが、関連法令の中には、教授だけに与えられた管理運営上の職務・権限が記載されており、「法改正はなるべくシンプルに」という原則上、やはり、区別をつけておく必要があるという回答をいただいた。
いずれにせよ、法人化後の国立大学では、教授と准教授の比率が各大学で独自に決められるようになった。従って、教授ポストを増やすことの一番のネックは、人件費総量抑制との兼ね合いである。給与体系の抜本的見直しと一体化して議論しなければ何も変えることはできない。議論が遅れることになれば、結果的に、優秀な若手助教授(准教授)の昇進を遅らせることになりかねないように思う。
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