じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 京大名物?の折田先生像。偉大なる折田先生の歴史はこちらに詳しい。
この像を「自由の学風」の象徴と受け止めるべきか否かについては賛否両論があると思うが、少なくともこの頃よりは丁重に扱われているように見える。ハリボテとホンモノの違いはあるけれど...。


3月23日(水)

【ちょっと思ったこと】

全国の地震動予測地図

 昨日の日記で、地震の起こる確率について触れたが、ちょうど同じ日、政府の地震調査研究推進本部は、全国各地がどれほどの確率で地震に見舞われる恐れがあるのかを示す「地震動予測地図」をまとめたという。

 3/24付けの朝日新聞には、

●30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率

なるものが主要都市別に掲載されていた。その表から受ける印象を個人的にランク付けすれば
  • ほぼ確実?(50%以上):静岡市86.1%、甲府市81.6%など
  • たぶん起こりそう(10%以上):高知市48.2%、徳島市41.8%、横浜市32.4%、大阪市21.5%など
  • 気をつけよう(5〜10%):広島市8.9%、岡山市8.0%、京都市6.1%など
  • たぶん大丈夫:(1%未満):盛岡市0.15%、福島市0.15%、鳥取市0.79%、松江市0.79%、福岡市0.98%など
といった感じになる。三陸沖は地震が多いはずだと思っていたが、盛岡市や福島市の確率が非常に低いのは意外であった。また、私の住んでいる岡山市は結構高い。

 では、どうすればよいのだろう。確率が高かろうと低かろうと、起こってしまった時の被害の大きさは変わらないわけだから、まずは、緊急時の心構えをしっかり身につけておくことが必要だろう。

 その上で、具体的な対応策ということになるが、震度6弱の確率が30%以上というような場合は、家を新築する時には十分な耐震策をとり、また中古の家やアパートを購入する際には念入りなチェックが必要だろう。

 いっぽう、確率が1%未満ともなれば、たぶん、地震で家が壊れることはない。震度5レベル以下の地震に備えることを前提とした上で、地震以外の対策(例えば台風、大雪など)にお金を使ったほうが現実的と言えるかもしれない。

 一般に、危険の確率が高いほど保険に入るべきだと勧められるが、私はむしろ逆の考えを持っている。危険が迫っていることが確実であるならば、保険支払いに回すお金があったらすべて防災対策につぎ込むべきだ。危険の確率が非常に低い場合にこそ保険に入るほうが得策。そもそも「万が一の時に」備えて保険に入るべしと言うではないか。万が一とは0.01%の確率のことを言うのである。

 なお、以上はすべて私の主観的な印象であって、何かの根拠に基づく公式の見解ではない。念のため。





らんたんラーメンと京大生協中央食堂

 FD関係のフォーラム(↓の記述参照)参加のため京都へ。3/22の昼食は、時計台東側の生協中央食堂でとった。この食堂は私が学部生の頃に時計台地下から移転新設されたものであり、開業三十数年となっている。学部・大学院・オーバードクターの頃は、もっぱらここで夕食をとっていた。

 学会や各種フォーラムで京大を訪れる機会は年に数回あるが、たいがいは休日開催のため、この食堂は閉店されている。今回は平日に開催されたので、この食堂を利用することができた。たぶん20年ぶりになるかと思う。店内の配置はあまり変わっていなかった。岡大生協と違うのは、入口横にタバコの自販機があったこと。岡大では、全館禁煙措置の頃に撤去されたはずだ。なお自販機には健康に有害であるというような表示は無かった。最近、複数の知人が肺癌で亡くなっているだけに、少々気になるところではある。

 夕刻は懇親会をパスして、東大路沿い(大学病院東側)のらんたんラーメンへ。この店を訪れるのはたぶん25年ぶりになる。店主にそのことを告げたところ、開業は31年前だという。下宿先を吉田中大路町に引っ越した後は、何度か食べたことがある。さっぱりした味が特徴。この味には好き嫌いがあるらしくネット上で悪口を言う人もいるようだが、とにかくラーメン専門店一筋で31年も続けてこられたというのはそれなりの固定ファンがあればこそだ。店主は今年68歳になると言っておられたが、これからもずっとお店を続けてほしいと思う。

【思ったこと】
_50323(水)[教育]京大・第11回大学教育研究フォーラム(2)試行的評価と認証評価

 昨日の日記の続き。

 22日の午後は、大会企画フォーラム

●大学評価−評価する側の論理−

というテーマの大会企画フォーラムが開催された。

 尾池和夫・京大総長、大塚雄作・京大高等教育研究開発推進センター教授による趣旨説明に続いて、木村孟・大学評価・学位授与機構長が1時間にわたって基調講演をされた。休憩を挟んだあとは、
  • 前田早苗氏(大学基準協会大学評価・研究部部長心得)
  • 吉田文氏(メディア教育開発センター教授、GP実施委員会委員)
  • 奈良哲氏(文部科学省高等教育局国立大学法人評価委員会室室長)
  • 松下佳代氏(京大高等教育研究開発推進センター教授)
という4氏の話題提供があった。松下氏を除く3氏はいずれも評価する側の立場にあるか、過去にそのような経験をお持ちの方ばかりであり、興味深いお話を伺うことができた。




 木村氏の基調講演ではまず、「学位授与機構」という「平和な」機構が、「大学評価・学位授与機構」に改組された経緯についてご説明があった。なるほどそういうご事情があったのかと、興味深く拝聴したが、誤解されると迷惑をおかけする恐れがあるのでここではカットさせていただく(←別段、オフレコというわけでもない、念のため)。

 さて、木村氏によれば、現在の大学改革に先進的役割を果たしたのは、中曽根内閣のもとで発足した臨教審であった。臨教審は種々の審議会の中でも出色モノと言えるほど先進的な数々の提言を行ったが、55年体制のもとであることと、まだ受け入れの土壌が無かったために、【大学教育改革に関する】提言は殆ど実現しなかったという。

 その後平成3年2月の大学設置基準大綱化の中で「自己点検・評価」が盛り込まれるようになった。委員の間からは当時すでに「第三者評価」も口にされていたが、時期尚早であると扱われたようだ。そして平成10年(1998年)10月26日に、

21世紀の大学像と今後の改革方策について(答申)−競争的環境の中で個性が輝く大学−

というタイトルの答申が出された。余談だが、「競争的環境の中で個性が輝く」という副題は、猪口邦子氏のアイデアをヒントにしたものだという。

 そして、第三者評価は共同利用期間に行わせるという前提のもと、学位授与機構は「大学評価・学位授与機構」に改組されることとなった。

 木村氏の講演の後半は、施行評価の目的、方法についての具体的説明であった。その中で特に重視されたのは
  1. 大学等の有する「目的」及び「目標」に即して行うこと→従って、相対評価ではない。
  2. 意見の申し立てを認める。但し、申し立てに伴うやりとりは公開する。
  3. 根拠データを大事にする。
といった点であった。これも「裏話」のたぐいかもしれないが、大学等の目的や目標といっても、実際は、抽象的な美辞麗句しか「有して」いない可能性もあったのだが、これから作るというのも変なので「有する」という表現になったらしい。また、「意見の申し立て」は当初は「異議の申し立て」と表現されていたが、法律用語であるとの反対から「意見」という表記になったとか。こういう裏話を聴くのはまことに面白い。

 とにもかくにも、「全学テーマ別評価」、「分野別教育評価」、「分野別研究評価」というように区分された上で「優れている」、「相応である」、「問題がある」という3つの判定が行われた次第。このことについては当初、「意図的低位設定により上位の評価結果が狙える」(=低位設定:意図的に目的や目標を低く抑えておく)という批判もあったそうだが2年目から殆ど姿を消した。また、上にも述べた通り、この評価は大学等の有する「目的」及び「目標」に即して行うものであるからして、ランキングなどの相対評価には転用できるはずがない。当初マスコミなどがランキングに利用したことについては猛反発があったようだ。このほか、評価報告書のダイジェスト版を求める声もあったというが、ダイジェスト版ではどうしも歪みが生じる、分厚い報告書となるのは避けられないようだ。

 基調講演の最後では、認証評価の話題が取り上げられた。ここでは教育活動を中心に11の基準で構成される。メモ代わりに11の基準を記しておくと
  1. 大学の目的
  2. 教育研究組織(実施体制)
  3. 教員及び教育支援者
  4. 学生の受入
  5. 教育内容及び方法
  6. 教育の成果
  7. 学生支援等
  8. 施設・設備
  9. 教育の質の向上及び改善のためのシステム←この部分がFDと密接に関連する
  10. 財務
  11. 管理運営
詳しくはこちらを参照されたい。

 ちなみに認証評価では「観点」の分析状況を総合して「基準」を満たしているかどうかが判断される、「観点」は「満たす・満たさない」ではない、「観点」の全てを「満たす」ということではないそうだ。

 次回に続く。