じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 後楽園近くの旭川河川敷で、恒例の花火大会が開催された。過去日記を調べたところ、1998年7月25日の日記に、打ち上げ会場まで足を運んだとの記述がある。それ以降は旅行中で不在、もしくはベランダからの鑑賞にとどまっているようだ。


8月5日(金)

【ちょっと思ったこと】

元横綱大鵬は“巨人大鵬卵焼き"をどう思っていたか

 8月6日の朝日新聞生活欄に元横綱・大鵬の納谷幸喜氏(65)のインタビュー記事があった。大鵬は1961年9月に21歳で第48代横綱に昇進、以後、幕内優勝32回、6連覇2回、45連勝を果たし、1971年に引退。その後、脳梗塞で入院・リハビリを送った時期もあったが、見事に回復され、日本相撲協会理事や大鵬部屋の親方として弟子の養成にあたり今年5月に定年退職。現在は相撲博物館館長に就任されている。

 横綱昇進の1961年と言えば、私が9歳になった時のことである。その後、私の小中高の時代に最も活躍した力士だけに印象は強烈であった。

 さて、今回の新聞記事は
「巨人、大鵬、卵焼き」と、子どもが好きなものの代表とされた「昭和の横綱」大鵬の納谷幸喜さん(65)は今年5月、日本相撲協会を定年退職した。
という書き出しで始まっている。この「巨人、大鵬、卵焼き」という言葉は、当時確かに使われていた。この日記でも過去に、2000年3月6日の日記や、2003年11月26日の日記で言及したことがあった。

 もっとも、「巨人、大鵬、卵焼き」というのは必ずしも、子どもに好かれるものの代名詞というわけではなかったように思う。中学時代を思い返してみるに、私などは、巨人や大鵬を応援するクラスメートを愚弄する目的で攻撃的に使っていた。要するに、巨人や大鵬を応援する子どもというのは、野球や相撲の本当のファンではない。単に強いから、そしてみんながワーワー応援するからそれに同調しているだけというのが、当時の私が反発していた理由であった。
中学時代には「巨人、大鵬、卵焼き」をからかって「柏戸、南海、ハムエッグが好きだ」と自称するクラスメートも居たが、「柏戸、南海、ハムエッグ」という言葉が本当に存在していたのか、そのクラスメートの造語であったのかは定かではあない。ちなみに、このクラスメートの実名をネットで検索したら、局長クラスの役人に出世しており、数日前にも国会の特別委員会で政府参考人として出席していることが分かった。
 そんなこともあって、私にとって「巨人、大鵬、卵焼き」というのは主体性の無い子どもの代名詞というイメージが強かったのだが、ご当人の大鵬がこの言葉をどう感じておられたのかについては今まで一度も知る機会がなかった。

 今回のインタビュー記事の中で納谷幸喜氏は、
〜「巨人、大鵬、卵焼き」という言葉について。〜
 そう言われるのは光栄だけど、巨人と一緒にされるなんて冗談じゃない。巨人は高校、大学からいい選手ばかり集めてるんだから強いのは当たり前。私は裸一貫で相撲界に飛び込んで稽古を重ねた。野球と違って、相撲では強くなるまで(十両になるまで)給料ももらえない。
として、巨人と一緒にされることに不快感を示しておられることを初めて知った。確かに、当時の巨人は、金と人気に物を言わせて、優秀な選手をかき集めているという印象が強かった。巨人のほうが年俸が高い、人気が出るのでCM出演も多い、ということも、他球団の有力選手が巨人に移籍する主要な動機になっていたと思う。

 いっぽう、横綱大鵬は、文字通り裸一貫で身を立てた人である。いや、当時の巨人の選手だって、個人レベルでは同じくらいに努力を重ねた人たちばかりなんだが、力士個人の強さということと、勝ち組だけを集めて構成されたチームの強さということではやはり意味が違う。

 同じ記事の中で納谷氏は
自分の人気が先行し、それに追いつくように頑張るのが大変だった。「大鵬は強すぎるから嫌い」とよく言われたが、「何言ってんだ、おれは人の5倍稽古しているんだ」と反発していた。
とも語っておられる。

 確かに大鵬は「強さの秘密は稽古(努力)か素質か?」という点で損をしていたように思われる。同じ時代に活躍した横綱の中でも、佐田の山(182cm 129kg)や玉の海(177cm 134kg)などは、小さい体というハンディを努力でカバーしたという印象が強い。千代の富士の人気も、軽量のハンディを筋力と技でカバーしているという印象を与えたことに一因があったように思われる。ちなみに、強すぎたためにあまり人気が無かった横綱としては現理事長の北の湖がおられるが、現役時代の北の湖の身長は179cm、いっぽう千代の富士は183cmであって、千代の富士のほうが「大型力士」ということになる。北の湖のほうが大きく見えたのは体重の差(北の湖169kg、千代の富士126kg)にあったようだ。なお、大鵬の身長と体重は、こちらの情報では、187cm、153kgであったと紹介されている。

 クリティカルシンキングという点から力士の強さの原因を考えてみるに、軽量力士に比べて大型力士は、「稽古で強くなったんだ」という原因帰属がなされにくいという点で不利になっているようだ。じっさい、私が大鵬について知っているのは土俵上での強さだけである。その陰でどれだけ稽古を積んでおられたかということは、伝えられない限りはなかなか分からないものだ。

 いま角界頂点に立っている朝青龍は、最新の情報 では、身長184.0cm、体重145.0kgとされているが、素人目からみて、強さの原因は体格、素質、稽古量のどこに帰属される傾向にあるのだろうか。