じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真]  9月14日の帰宅時に見た月齢10.5の月。前景は旧・岡大事務局棟。今月は9月12日に月の赤緯が最南となったばかりで、南の空の比較的低いところに輝いていた。

 この日は昼頃に寒冷前線が通過してほんのちょっぴり雨が降ったが、その後はよく晴れ上がり、秋の空になった。夕食後の散歩時、真東から真っ赤な火星が昇ってきた。やけに明るいなあと思って天文年鑑を見たら、今年は準大接近にあたるとのこと。2003年の超大接近(視直径25”11)には及ばないものの、20”16まで大きくなるという。すでにマイナス1.3等級の明るさがあり、11月上旬にはマイナス2.3等級まで増光する。ちなみに、2003年大接近時の明るさはマイナス2.9等級。なお星の明るさは、1等級の差で約2.5倍の違いがある。


9月14日(水)

【思ったこと】
_50914(火)[心理]日本心理学会第69回大会(5)血液型性格判断三昧の一日(5)心理学界きっての論客、いよいよ登場

 日本心理学会第69回大会の参加感想の5回目。昨日に引き続き9月10日夕刻のワークショップ:

【9月10日 夕刻】ワークショップ 血液型と性格の科学性(話題提供:上村晃弘氏、安藤寿康氏、渡邊芳之氏/指定討論:大村政男氏)

について感想を述べさせていただく。

 ワークショップの話題提供の3番目は渡邊芳之氏の登場であった。

 渡邊氏は、かつての東京都立大心理学が輩出した2大超人の1人。もう1人の超人のサトウタツヤ氏が企画力に長け今回の日本心理学会でもいろいろなワークショップにちょこちょこと顔を出しておられたのに対して(→この「血液型」ワークショップの時にも、同時間帯に開催された別のワークショップで指定討論者をつとめておられた)、渡邊氏のほうは北海道・帯広の大地にどっかりと腰をおろし、哲学にも造詣が深く、また、心理学界きっての論客として恐れられている(←すべて長谷川の主観的評価、念のため)。

 渡邊氏の今回の話題提供の概要は以下の通りであった。
  1. 科学は宗教論争に勝利できない
  2. 信じている人を論破するより最初から信じない人を作ることの方が大切
  3. 心理学知識,科学的思考の教育の材料として血液型の問題はとても有効
  4. 心理学が血液型より魅力的な世界観を提示して行くことが重要
 このうち1.および2.は、「科学は霊魂を否定できない」、「血液型論争は、ルールを共有しない異種格闘技のようなもの」という内容。確かに、科学は占いモドキの「血液型性格判断」を、実証的な方法で否定することはできない。また、「血液型性格判断」喧伝者の中には、「科学」を標榜しつつも科学的探究の地道な努力には無頓着で、ご都合主義的な解釈や(批判者への)揚げ足取りに終始している人たちもいる。そういう人たちの相手をしていても何ら生産的な結論は出てこない。全くの時間の無駄だ。渡邊氏の場合は、某「血液型」喧伝者と徹底的な論争を繰り広げられた結果として(こちらの資料参照)、このような結論にたどり着かれただけに、その御主張は十分に説得力を持っていると思う。

 3.も仰せの通り。というか、私の紀要論文(pdf形式、近々、現行の画像ベースからテクストベースのpdfに変更の予定)も、渡邊氏と事前にやりとりがあったわけではないが、結果的に同じ意図で執筆されてたものと言える。

 もっとも、近年、心理学の世界には、社会構成主義の影響がじわりじわりと及びつつある。4.を具体的にどう展開していくのかは、一筋縄ではいくまい。ということもあって、質疑の時間に私からは

●社会構成主義の影響が及ぶ中で「血液型論議」はどのように展開していくと思われるか?

という、とっておきの質問をさせていただいた。渡邊氏のお答えは「社会構成主義の影響が及ぶことで、心理学の議論はより豊かなものになる」ということであったが(←あくまで長谷川の記憶に基づく)、時間が無かったこともあり、「血液型論議」や「魅力的な世界観」との関連した具体的なお話までは伺うことはできなかった。なお、本年中には、サトウタツヤ氏との共著として『モード性格論』が刊行されるとか。大いに期待したい。

 話題提供に引き続いて行われたディスカッションでは
  • テレビ番組というのは、いかに視聴率優先で制作されているか(大村政男氏の述懐)
  • ビッグ5やCloningerのテストの質問項目の問題点(←質問が複雑。翻訳にも問題)
  • より強力なヒューリスティックは必要か(←渡邊氏はむしろ「危険だ」とのお考え)
  • 大村政男氏の今後のご研究の方向(「古川学説の原点に帰る」)のご披露
などが話題となった。9月10日は、まさに血液型性格判断三昧の有意義な一日であった。

 次回に続く。