じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]
大学祭開始直前の大学構内(11月3日朝8時すぎに撮影)。この時間帯にこれだけ多くの学生が集まってくるのは大学祭の時くらいのものか。


11月3日(金)

【思ったこと】
_61103(金)[心理]日本心理学会第70回大会(1)人類700万年を心理学する(1)

 福岡国際会議場で日本心理学会70回大会が始まった。福岡市を訪れるたのは2003年2月に

●日本健康支援学会:QOLに根ざした健康支援の構築を目指して

に参加して以来、3年ぶりであった。国際会議場は規模としては岡山コンベンションセンター(ママカリフォーラム)を凌ぐ規模であるようにも見えたが、駅前にある岡山と比べると交通の便はちょっと悪かった。

 最初に参加したのは、

●人類700万年を心理学する〜考古学と心理学のインタラクション〜

という公開シンポジウムであった。ちなみに、一般には、ヒトと類人猿は約600万年前に決定的に袂を分かったと言われている。しかし最近700万年という説を裏付ける化石が発見されたことにちなんで「700万年」というタイトルになった模様だ。

 話題提供の1番目は、レディング(Reading)大学人間環境学教授のスティーブン・J・マイズン(Mithen)氏。マイズン氏は認知考古学界の第一人者として知られており、邦訳には『歌うネアンデルタール』などがある。邦訳では一部「ミズン」と紹介されていることがあるが「マイズン」が正しいという。

 マイズン氏によれば、人類600万年(←マイズン氏のスライドでは一貫して「600万年」とされていた)の進化には
  1. 心の理論→他者の「思い」を感じ取る力、想像力
  2. 子ども時代→文化的環境の中で脳が成熟を果たし、知的な能力を発達させてゆくために欠かせない時期
  3. 領域固有的な知→人づきあいの知、ものづくりなど分野別の知
  4. 言語と音楽→フムムムムム(ハミング音)が音楽と言語に分化
  5. 認知的流動性→喩え、なぞらえる力、超自然的な存在へ思いをはせる
  6. 脳外に拡張する心→脳だけに頼らず、モノに知識や思いを詰め込む(絵画、文字の発明)
  7. 定住生活と農耕→物質文化を介した「知の拡張」
という7つのカギがあるという。この7つが600万年という時代の流れの中でそれぞれ重要な役割を果たしていたということはある程度理解できたが、これらが積み重ね型に発展していくものなのか、相互に関連しあって高められていったのかは、今回の講演を拝聴しただけではよく分からなかった。

 また、ここで使われている「心」、「思いを感じ取る」、「思いをはせる」などは、どちらかと言えば一般向けの素朴な概念にすぎない。「認知」ではなく、行動理論に翻訳できるような部分もかなり含まれている。例えば、スキナーの言語行動理論の基本概念である、「マンド」、「タクト」、「イントラバーバル」、「オートクリティック」などが、どういう時期に、どういうニーズのもとで出現したのかということは、岩絵などからもある程度推測できるはず。認知的流動性と言われる部分も、言語行動の一環としてより体系的に分析できるだろう。また「道具製作にまつわる思考の流れ」というのは、道具製作行動におけるオペラント学習(分化強化、分化弱化、般化、行動連鎖、弁別学習、..)として説明できるようにも思う。

 人類700万年の歴史は、遺され発見された「モノ」を通じてしか分析できないが、それを認知モデルを通して分析するほうがいいのか、それとも、その「モノ」がどのような行動の一環として利用されていたのかというように、背後にある行動を同定することによって解明していったほうがよいのか、このあたりが今後の研究の発展のカギになるように感じた。

 次回に続く。