じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]
11月26日は雨模様であったが、柔らかい光の中で時計台前のモミジとアメリカフウの紅葉が映えていた。



11月27日(月)

【思ったこと】
_61127(月)[教育]大学教育改革プログラム合同フォーラム(14)学納金返還訴訟判決に思う

 この連載からは少々脱線するが、昨日の各種報道によれば、私立大学に合格した受験生が、入学を辞退したときに事前に払った授業料や入学金を返してもらえるかどうかが争われた裁判で、最高裁判所は27日、2002年度以降の入試で3月中に辞退を申し出た受験生には、授業料を全額返すよう大学側に命じたという。但し入学金については「入学できる資格の対価として支払われたものなので、返す必要はない」という判断になった。この種の訴訟や判決は、2001年4月の消費者契約法施行を反映したものであり、これにより「年度の始まる前に入学辞退を表明した場合、大学側は授業料などを返還しなければならない」との統一判断が確定したと言ってよいだろう。

 もっともこの種の判決は、あくまで契約法の解釈に基づくもの。大学教育改革のあり方を方向づけるものではない。私の意見は11月16日の日記に述べた通りであり、
  • 学費の問題:国公立大と私立大の学費を同額にする。経済的負担を補うために、大学生全員に対して、学費相当額以上の奨学金(無利子・貸与型が原則)を支給する。
  • 国公立大の前後期試験を撤廃。1年前に抽選を行い、1月下旬から2月末までの期間に、各大学の入試日程が均等に設定されるようにする。これによって受験生は、日にちが重ならない限り、何校でも受験できるようになる。
  • 入試の検定料は1校あたり1万円以下とする。すべての合格発表は3月10日までに行い、そのあと、3月11日から15日までに全大学一斉に入学手続を完了させる。
  • 現状のもとでは、入学を辞退した場合、大学側は、入学金を含むすべての納入金を受験生に返還することを法律で義務づける。
というのが私の提案である。




 入学辞退者に対して入学金を返還しなくてよいことは、法的解釈としては妥当かもしれないが、現実にはこれによって著しい格差が生じている。つまり、入学金として何百万も払い捨てができるようなお金持ちの家では、いろいろな大学を受験させ、その中でいちばん適した大学に子弟を入学させることができるが、経済的に苦しい家の場合は、合格した1校に入学金を支払うか、その権利を放棄し、不合格のリスクを背負って別の大学にチャレンジするかという決断を迫られているのである。これぞまさに格差社会ではないだろうか。

 とにかく、併願者から多額の入学金をせしめるなどというのは、大学経営の本筋から外れている。大学はあくまで、大学に実際に入ってきた学生からの授業料を主体に経営されるべきだ。自分の大学が素晴らしいところだと宣伝するならば、辞退者には入学金全額を返還するというくらいの肝っ玉の太さを見せてもいいのではないか。




 もっとも、現状ではもう1つ、看過できない格差がある。それは国公立大と私立大の学費の格差である。そしてまた、国公立大では、前後期制などという「談合」「棲み分け」によって受験生確保を狙っている。そういうことに安穏としているから、危機感をもって教育改革に取り組むことができないのだ。

 一部には、経営優先では基礎的な学問領域を守ることができないとの声があるが、それはそれで、非営利の研究所をしっかり守ればよいこと。とにかく、教育を行う大学にあっては、入学者が確保できてこそ存立の意義がある。定員割れの危機に晒されれば、自己の研究領域の保身などにこだわっているわけにはいくまい。


 次回に続く。