じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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[今日の写真]
岡大の七不思議の1つ、「落ちないイチョウ」。日照の加減だろうか、イチョウは南北方向に並んでいるほうが東西方向に並んでいるよりも早く落葉する。写真にあるイチョウは、南北方向に並ぶイチョウの中で唯一、たくさんの葉をつけ、よく見ると一部はまだ緑が残っている。昨年の様子は2005年12月2日の日記にあり。


12月8日(金)

【思ったこと】
_61208(金)[心理]日本心理学会第70回大会(14)その安全対策は有効ですか?(6)医療現場の事故防止策

 シンポの3番目は、M氏による

●医療現場の事故防止策

という話題提供であった。

 このお話を拝聴して改めて気づいたことだが、話題提供1番目の作業現場、2番目の鉄道と比べて、医療現場には著しく異なった側面があるようだ。それは、「医療は,すべてがイレギュラー」という点である。すなわち、作業現場や動力車の運転の場合には、安全確保の手順が比較的定まっていて、それに従って規則的に振る舞っている限りはまず事故は起こらない。ところが医療現場の場合は
  • 患者個々人の傷病の治療が目的
  • 患者の容態の不規則的な変化
  • 個人によって治療方法が異なる
  • 薬や医療機器の多様である
  • 医療技術は常に進歩している
という特徴があり(当日のスライドから引用)、臨機応変の対処が求められる。他分野で有効性が確認されている安全行動維持訓練がそのまま適用できるという保証はないわけだ。ではどうやって事故を防ぐかということになるが、これには、
  • エラーレジスタント
    • 機会最少→エラーの発生可能作業遭遇数を低減
    • 最小確率→当該作業でのエラー確率を低減
  • エラートレラント
    • 多重検出→エラーが起こっても検出の機会を多重にすることで、どこかで事前に見つけ出す
    • 被害局限→エラー発生への備え
という4通りの戦術的エラー対策があるという。

 もっともいま引用した戦術自体は、作業現場でも鉄道でも同じように適用できるものと思う。入学試験などでも、問題作成段階、実施段階、受験生自身の解答行動のいずれにおいても、ミスをなくす上ではこれらの戦術は有用であろう。




 話題提供の後半では「人間はエラーを起こしている時点では、それがエラーであることに気づいていない」ということが指摘された。それゆえ、エラーの発生を外から気づかせる仕組みを作る必要があるというわけだ。医療現場では、例えば医薬品の表示デザインの工夫(「表示」)、輸液器具の口径を変えて接続ミスを防ぐ工夫(「対象」)、患者自身もチェックに加わる(「人」)、電子的なドキュメントの利用(「ドキュメント」)などの外的手がかりの工夫について紹介があった。

 なお、今回のシンポでは、もうお一方、K氏からも「医療における安全管理」という指定討論(→実質的には、話題提供)があった。これについては次回以降に改めて感想を述べさせていただく。

次回に続く。