じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 農場の梅が見頃になってきた。



2月7日(水)

【思ったこと】
_70207(水)[心理]サステイナビリティ学連携研究機構公開シンポ(5)川口順子氏の講演(3)市場メカニズムか規制的手段か

 講演の中で川口氏は、地球環境問題の解決が困難である一般的な理由として、
  1. 科学的不確実性
  2. 原因と被害の乖離
  3. 国際協調の困難さ
という3点を挙げられた。このうちの3.は、国ごとに利害がしばしば対立するため国際合意することが困難な状況にあるという意味である。利害対立のほか、「他国が対策をとればその恩恵を受けられる」という「ただ乗り」もあるという。

 川口氏によれば、京都議定書の実施に向けた交渉では、対立の基本的なポイントとして以下の4点があった。
  1. 認識:環境問題の深刻さの認識
  2. 対策の哲学:市場メカニズムを重視するか、規制的手段を重視するか
  3. 経済的状況:南北問題
  4. 自然条件・不確実性:吸収源
 例えば、同じ途上国にあっても、産油国は石油が売れなくなるような対策には反対する。いっぽう、太平洋の珊瑚礁からなる島嶼国の場合は、国土全体が水没の危機に直面しているわけだから、緊急な対応を求める。京都議定書批准をめぐって、米国ばかりでなく豪州が未批准にあり、ロシアやカナダが批准国にあることなども、その背景に利害や思惑が絡んでいるとみてよいだろう。結局のところ、国のあいだの交渉というのは、同意をしない限りは義務を負うことはなく、環境問題に関しては、特に、国際競争力に絡む国益が合意を難しくしているとのことであった。このあたり、環境大臣、外務大臣として数々の交渉を指揮してこられた川口氏ならではの重みのあるご発言であった。

 また2.の点に関しては、小泉政権以降の日本でも顕著になってきているが、「規制的手段」よりも「市場メカニズム」を重視する立場が優勢になってきているように私は思う。行動分析でいえば、これはまさに、「正の強化(「好子出現の行動随伴性」)」による調整といってよいだろう。ちなみに、ヨーロッパでは、市場原理活用より規制的手段のほうを主張する傾向があるそうだが、そのヨーロッパにあっても、「排出権取引」のような市場原理を持ち出す動きがあるという(←「排出」については、インドなどからそもそも「排出」は「権利」なのか?という批判が出ており、「排出取引」と呼び方を変えることもあるらしい)。

 では、国際的な合意が困難な状況にあって、地球環境問題解決のために何が必要なのだろうか? 川口氏はこれに関して、
  1. 問題の共通の認識:重大性・緊急性
  2. 解決のための意志
  3. 解決のための技術の開発・普及
  4. 皆の努力を引き出し、活かす知恵・仕組み
という4点を挙げられていたが、うーむ、どうかなあ、これだけでは抽象的すぎて、実効が期待できないように思われる。しかしそのあたりは、さすが川口氏である。世界の国々が地球温暖化対策に前向きに取り組むためのプランをちゃんと考えておられた。

 次回に続く。