じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡山大学構内の紅葉情報の第21回目(2007年12月1日)。岡大構内の紅葉もそろそろ終盤に近づいてきた。写真は、例年、他所に比べて最も遅い時期に紅葉する東西通りの様子。写真上は岡大西門交差点付近から西方向を眺めたところ。写真下は、薬学部北門のあたりから東方向の岡大西門交差点方面を眺めたところ。

 ここの樹種については未確認であるが、おそらく、フウ(楓)やトウカエデ(唐楓)の混成であろうと思われる。


12月2日(日)

【思ったこと】
_71202(日)[心理]徴兵制を導入すれば若者は規律正しくなるか?(3)行動を身につけるための基本形


●徴兵制を実施し、一定期間、訓練や規則正しいルールにのっとった生活を強制すれば、若者は規律正しく行動するようになり、「モラルハザード、規範意識の欠落、希薄化」を改善することができるか?

という問題を考える連載の3回目。今回は、

●行動随伴性に基づく議論

について考えてみることにしたい。




 さて、我々が家庭や学校や家庭教育機関で学ぶ内容は、知識、価値、人間関係など多岐にわたっており、その何を重視すべきかかは教育観、価値観によって多種多様である。しかし、上記の問題に絞って議論をするのであれば、とにかく、実践を伴うこと、つまり、何らかの望ましい行動を身につけさせ、望ましくない行動を起こさないようにするという教育が必要である。単なる知識の埋め込みでは必ずしも実践には結びつかない。

 実践重視を前提とした上でのそこから先の議論は、どうやって行動を身につけさせるか(あるいは、望ましくない行動を起こさないようにするのか)という、行動の原理を探究する科学的な議論と、その有効性を高めるためのテクニカルな議論に踏み込んでいかなければならない。こうした議論は、価値観からフリーであり、誰でも参加できる。また意見が対立した時の最終決定は、エビデンスに基づいて行われることになる。

 上にも述べたように、行動に関わる教育、訓練、しつけなどの基本形は、
  • 望ましい行動を増やし、起こりやすい状態を継続させること
  • 望ましくない行動を減らし、起こりにくくすること
という2つのタイプに集約できる(ちなみに、ここでは価値観フリーの議論をしているので、何が望ましいか、何が望ましくないかには立ち入らない)。

 しかし、多くの場合、ある行動が望ましいか望ましくないかということは状況や文脈に依存している。出会った人と挨拶するのは良いことだといっても、混雑した通勤電車の中で周りの人たち一人一人に「おはようございます」と挨拶したら妙な顔をされる。道ばたでの立ち小便は悪いことだが、だからといって「排尿行為=望ましくない行動」ではない。特定の場所(ここではトイレ)以外で排尿行動をすることが望ましくないとされているだけのことである。他人を傷つけることは状況文脈を問わず悪いことだと説く聖人もおられるかもしれないが、強盗がナイフを振りかざして自分を襲ってきた時には、全くの無抵抗というわけにはいかないだろう。

 ということで、行動に関わる教育、訓練、しつけというのは、「絶対的」に「良いこと」や「悪いこと」を教えるということではなく、

●Aという状況のもとで、Bという行動をする。Aという状況以外では、Bという行動をしてはならない。

というように、Aという先行状況(Antecedent)とBという行動(Behavior)の関係を教えることが基本形ということになる。




 次に問題となるのは、

★Aという状況のもとで、Bという行動をする。Aという状況以外では、Bという行動をしてはならない。

をどういう方法で実践に結びつけるかということであり。この段階になると、さまざまな教育観によって、さまざまな議論が生まれてくる。ある立場の人は、★の部分を1000回紙に書いたり、お題目のように唱えればよいと説くだろう。また別の立場のある人は、愛情を持ってそのように教えれば必ずそれに応えてくれるはずだと考える。しかし、どういうやり方が最も有効かということをエビデンスに基づいて議論していくと、最後は、行動随伴性に基づく、行動の変容と維持(継続)に行き着くことになると私は思う。

 行動随伴性に基づく議論では、

●Aという状況のもとでBという行動をする

というお題目をとなえる代わりに、

●Aという状況のもとでBという行動をすると、Cという結果(ある事象の出現、あるいは消失といった変化)が伴う

という「A→B→C」を実際に体験させることが基本形となる。但し、人間の場合は、ルール支配行動として「A→B→C」を身につけさせることもできる。

 行動の結果を重視するというと、何となく打算的で動く人間のように思われそうだが、Cという結果には「信念との一致」、「目標との整合性」といった自己点検の結果も含まれると考える。不可能に近いと思われる行動を失敗を恐れずに遂行する人は「意志の強い人」だと見られがちだが、じっさいはそういう人は、自分の遂行内容と当初の信念・目的との整合性を頻繁に点検し、不一致があると嫌悪的な結果が伴うがゆえに、そういう結果の出現を阻止するために遂行を続けていると考えることもできるのである。


 次回に続く。