じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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岡山大学構内のお花見(3)
 文学部中庭のソメイヨシノ。写真上は4月7日、写真下は4月6日撮影。晴天時のソメイヨシノは白っぽくてあまり目立たない。写真上のように、雨の日のほうが、映えて見える。

 なお、今年の2月中旬に、この中庭では大規模な剪定作業が行われた(2月19日の日記参照)。枝を切り取られた樹木にとっては気の毒であったが、そのおかげで、中庭の桜全体を見渡せるようになった。


4月7日(月)

【思ったこと】
_80407(月)[心理]「しなければならないことをする」と「したいことをする」(14)とりあえずのまとめ(1)

 新年度が始まり多忙になってきたので、そろそろ、この連載についてまとめをしておきたいと思う。

 さて、このことを考えるにあたっては、心理学(あるいは行動分析学)の中で解決できる課題と、他の領域との連携なしには解決できない課題があることを、わきまえておく必要があるように思う。

 例えば、地球環境を守るためにどういう「しなければならないことをする」べきかというのは 、後者に属する問題である。また、この連載でたびたび言及させていただいているマロットは、かねてより、「目的指向システムデザイン(goal-directed systems design)」(杉山他, 1998, 334頁)という考え方を提唱している。
はじめにシステムの究極の目的を設定し、次に、究極の目的を達成するのに必要な目前の目的をいろいろのレベルで設定し、最後に、目前の目的を達成するのに必要な最初の目的を設定する
ひとたびこのデザインが設計されれば、そのもとで「しなければならない」行動が規定され、その行動を強化するための随伴性が用意される。そしてその一部は、嫌悪的統制により補完される。また、その目的が達成されているかどうかは、適時評価され、改訂されていくことになるであろうが、その出発点となる「究極の目的」なるものを、他の領域との連携なしに設定することは困難である。

 いずれにせよ、「しなければならない」行動というのは大部分、何かの目的を達成するための「手段として行動」であり、どういう目的が妥当であるのかという議論は心理学領域の内部だけで決定できない。心理学、とりわけ行動分析学が得意とするのは、いったん「しなければならない」行動が具体的に決定されたのちに、それをいかに確実に遂行させられるか、つまりいかに効果的な随伴性を設定できるのかというテクニカルな問題である。




 3月26日の日記でも論じたように、行動分析学は必ずしも

●「こういう生き方がよりよい生き方だ」と示し、そこに向けて行動分析学的な研究をし、発表する。

という方向を目ざしているわけではない。いちばんの目的は、当人の行動リパートリーを拡大し、当人がより多様な能動的行動を身につけ、それをもって外部環境との豊富な関わりを実現するということにあるのではないかと私は考える。その場合、「受験勉強」、「自動車教習」、「外国語習得」などは、当人の将来の行動リパートリーを拡大するための手段としての行動であり、それ自体は「しなければならない」行動であるものの、獲得されたのちには、より豊富な「したいからする」行動が実現できるという「入れ子構造」を有しているとも言える。

 次回に続く。